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ベル・ブック~学校図書館航海日誌~さん ブログから
この本は、私に「読みなさい」と語りかけてきた。
読まなければいけないと思った。
アウシュビッツ収容所に送られた少女、ディタ。
彼女の仕事は図書係。
ナチスは、こどもたちに勉強を禁じた。
もちろん、本を持つことも。
ディタは、秘密の学校の先生に本を貸出し、
一日の終わりに回収して秘密の場所に隠す。
もし、日中、ナチが見回りにきたら、服の内側に作った
隠しポケットに隠す。
人類の歴史において、独裁者や暴君はみな共通点がある。
誰もが本を徹底して迫害するのだ。
なぜなら、本はとても危険だから。ものを考えることを促すからだ。
彼女はなぜ、危険を冒してまで
たった8冊の本を守るのか。
彼女にとって、本を開けることは「汽車に乗ってバケーションにでかけるようなもの。」
本を読むと、柵など飛び越え、世界中に行ける。
「本は大切にしなければならない。
本がなければ、何世紀にもわたる人類の知恵が失われてします。
本はとても貴重なものだ。
私たちに世界がどんなものかを教えてくれる地理学。
読む者の人生を何十倍にも広げてくれる文学。
数学にみる科学の進歩。
私たちがどこから来たのか、そしてどこに向かっていくべきなのかを
教えてくれる歴史学。
人間同士のコミュニケーションの糸をときほぐしてくれる文法・・・」
「なぜ本が、図書館が必要なのか」
という問いに、ディタはすべて答えてくれている。
歴史を学び、私たちはどこに向かっていくのか・・・
本を読もう。
本を読んで平和な世界を作ろう。
改めてその思いを強くした。
<追加コメント >
本を通してのことばかり書いてしまいましたが、収容所内の家族愛、恋愛、隣人愛、師弟愛・・・ひとりひとりに未来があったのにと、胸にせまるお話でした。
長くて読むのに時間がかかりましたが、読んでよかったです。
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ミス レインさんのレビュー (女性) 読書メーターから
実話をもとにした小説。命を養うためにはパンを、人間性を養うには本と教育を、が根幹にあり、命がけの秘密の図書館と教育があった頃は、収容所の生活や残虐行為は挟み込まれるものの淡々とした印象で、それらが無くなってから飢えや糞尿と伝染病にまみれた地獄の生活の苦しみと恐怖中心の描写が具体的に記されていくように思う(単に時局が変化したこともあるが)。いずれ死の宣告を与えられるだろう子供達に施す教育は、大人にとって戦争の終わりと収容所からの解放を含む希望であったのだろう。物語の転換地点的、大人数のガス室送り。
ついさっきまで励まし合っていた人々が連れて行かれ、ガス室、焼却炉を経て降り注ぐ黒い灰に「戻ってきた」との言葉にじんときました。ストーリーテラーを「生きている本」と呼ぶ、その言葉にもユーモアだけではなく、秘密裏に営み続けなければいけない文化的事柄に対する様々な思いが込められているように思えます。
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本のこまど (児童サービス支援サイト)から
人権剥奪の象徴のようなアウシュヴィッツ・ユダヤ人強制収容所の中に子どもたちを集め
た学校があり、またその中に図書館があったなんて驚きです。
戦 後、生きて収容所を出ることができた図書係の少女に取材して書かれた作品です。本を持っているということが見つかれば射殺されかねないという過酷な
環境の中で、8冊の「本」(どれもボロボロであったにもかかわらず)と、6冊の「生きた本」(先生たちが口述して伝える物語など)が、そこで生きる人々の希望の光となったというのです。
「ディタは黙ったまま、今までに何本のマッチに火を点けてきただろうと思いめぐらした。(中略)ときには真っ暗 闇のひどく辛い状況の中でも、本を開き、その世界に入り込むと灯りが灯った。
彼女のちいさな図書館はマッチ箱だ。」(p312) 主人公の少女ディタは、 14歳。
子ども時代に「本」の世界の持つ豊かさに出会っていたので、図書係という任務をやりとげることができたのです。
ページを開くとびっしりと書かれた文字にひるみ、また強制収容所の酷い状況に読んでいて戦慄を覚えるのですが、ひたむきなディタの姿に希望を見出し、一気に読む進めることが出来ました。
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鳩羽さんの感想 (女性) 2レビューあり ①読書メーターから
●アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所に収容された十四歳のディタは、家族収容所にナチスの目を盗んで営まれている学校に、たった八冊だけある本の図書係となった。危ない橋を渡りながらも、こっそり
服に縫い付けたポケットに本を入れて運搬するのがディタの日課となった。しかし先に移送されてきたグループがまたどこかへ送られる運命の期限が迫ってきており、それが本当に移送なのか、人々は疑ってい
た。実話を元にした話で、いろんな立場の人々のエピソードが寄り集まったような本。読むのが辛く、希望とは何なのだろうと考えさせられる。
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②ブログ 夜思比売の栞 から
●アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所の三十一号棟では、ナチスSSの目を盗み、子供たちのための小さな学校が営まれていた。
そこで活躍していたのは、没収されずこっそり持ち込むことができた八冊の本。大人たちはその本と、自分の記憶を使い、子供たちに小さなグループでの授業を行った。また、物語を覚えている人は、自らを生
きている本として子供たちにお話を語って聞かせた。
若きリーダーであるヒルシュに頼まれ、図書係としてその本を管理することになったディタは、危ない橋を渡りながら、隠し場所から先生たちに本を運搬するために奔走する。
収容所が人道的に運営されていると外国にアピールするための一環として作られた家族収容所だったが、収容所のメンバーの中にもヒエラルキーがあり、やがて先に到着したグループがどこかへ移送されるとい
う期日が迫ってきていた。
*
実話を元にした話で、冒頭に『図書館 愛書家の楽園』で触れていたアウシュビッツの図書係の一節が引いてある。
なので、小説として面白いとか面白くないとかいうのは適当ではないのかもしれないが、まず思うのは読みにくいということだった。
プラハからアウシュビッツに入れられたディタは十四歳で、本当なら家族収容所に入れる年齢ではないが、世話係のような立場の助手として、三十一号棟に出入りをしている。リーダーのヒルシュに憧れと尊敬
を持っているが、ヒルシュが思っているような人物と違うのではないかと悩んだり、人体実験をしているという噂のナチスの医師メンゲレに目をつけられたりと、悩みと緊張、時々の友達との楽しいやりとりが
、雑然と続いていく。
頻繁にディタ以外の人物の視点に変わり、ディタが収容所に送られてくるまでの回想もところどころに入ってくるので、一つの大きな話というより、収容所の人々の小さなエピソードが、そこにいた人達の多様
さを明らかにしていくといった感じだった。
ユダヤ人だけでなく、障害者や同性愛者、政治犯など、様々な人たちがいる。ユダヤ人同士でも、ナチスにうまく取り入っているものもいれば、仕事の内容によって健康状態がいいものもいる。共産主義者にレ
ジスタンス、国粋主義者とグループはいくつもあっても統一されておらず、抵抗する勢力とはなりえない。
またSSの中にも、ユダヤ人の娘に恋をして脱走を企てる者がいたりと、様々である。
だが、劣悪な環境と過酷な労働の日々に、合唱や読書、朗読、ときに子供を教育するということ自体が、人々に小さな希望を与えた。ほとんど生きて出られないのに勉強を教えてどうするのだという批判もあっ
たが、その行為自体が未来を信じる行為だったからだろう。
最後の選別で、ディタと母はアウシュビッツに残るのではなく、移送のグループに入る。さらにひどい地獄を経験して、ようやく戦争は終わった。
困難な中で希望を持つ大切さなどというような、そんな生易しいものではないだろう。その瞬間、瞬間を生き延びることがすべてだ。
だが、瞬間を生き延びるための意思を支えたのが、ちょっとした笑いや本の世界への旅、家族や友人だったのだろう。翻って、そういうちょっとしたことに鈍くなっていく危険も感じる本だった。
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soymedica さん ★★★★★ booklog から
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かもめ通信さん ★★★★★ (女性 北国) 本が好き! から
アウシュヴィッツに実在した秘密の図書館の物語は、誰一人心から信じることの出来ない過酷な状況においても本への愛と信頼を失わなかった一人の少女の物語でもあった。
世の中に“アウシュヴィッツ”のあれこれを伝える本は沢山あるし
そうした本のいくつかを私もこれまで読んできた。
耳をふさぎ目を覆いたくなる出来事も
後世に伝える必要があることは確かだが
特に伝える相手もいない私自身は
正直もうこういうジャンルは読まなくてもいいかなと思わなくはない。
だがこの本には、心惹かれるものがあった。
というのも、この本が
アルベルト・マングェルの 『図書館 愛書家の楽園』の中で紹介されていた
アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所に実際にあったという
秘密の図書館に関する記述に惹かれた著者が
その実話に基づいて書き上げたフィクションだと聞いたからだ。
1943年、ナチスはアウシュヴィッツ強制収容所を拡張し、
ビルナケウの森に「家族収容所」を設けた。
物語の舞台はこの収容所で、
ここには“三十一号棟”と呼ばれる離れが設けられ、
日中、大人達が労作業に従事している間、子どもだけを集めて収容している。
それは国際監視団に対し、
“ユダヤ人を東部へ送るのは殺すためではない”と
ナチスがアピールするための手段の1つだった。
事実子どもたちは6カ月の間生かされ、
そのあとで他の犠牲者達と同じ運命をたどったのだった。
やがてプロパガンダの役割を終えるとこの「家族収容所」も閉鎖されることになる。
だがそれまでの間、十三歳までの子どもたちは三十一号棟で
収容者の中から選ばれた指導員たちのもとで日々過ごすことになる。
指導員達はそこで看守達の目を盗み“学校”を開き、
子どもたちに禁じられている勉強を教えた。
その秘密の学校にはなんと図書館まであり、
ナチスの目を盗んで密かに持ち込まれた8冊の本が大切に読まれていた。
その貴重な本の保管を一手に任されていたのが
この物語の主人公十四歳の少女ディタだった。
H・G・ウェルズの『世界史概説』、トーマス・マンの『魔の山』、
ハシェクの『兵士シュヴェイクの冒険』などぼろぼろになった8冊の図書館の蔵書と
“生きた本”として貸し出された大人達が語る
『ニルスのふしぎな冒険』や『モンテ・クリスト伯』が
子どもたちだけでなく、
子どもたちの世話を焼く大人たちをも励まし力づける。
もちろんそれはディタにとっても例外ではなかった。
本を読む喜びとかつて読み親しんだ物語たちの記憶に加え、
文字通り命がけで図書係として本を護るという使命が
絶望的な毎日の中でディタを支え続ける。
むごたらしい強制収容所の実態を告発するだけでなく
物語が持つ魅力、本が持つ力を高らかに歌い上げるこの本は
ディタが触れる物語たちへのオマージュにもなっていて
またまた読みたい本のリストを伸ばさずにはいられないが
本の力を信じているに違いない
本が好きなあなたにぜひともお勧めしたい1冊だ。
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cantaloupxyzのブログ
チェコ出身のユダヤ人の少女ディタ・アドレロヴァが、ナチスにより、家族と共に、ボーランドのアウシュビッツの絶滅収容所に送られ、両親を失いながら、解放されるまで生き延びた。
彼女と、収容所のユダヤ人の少ない仲間 たちは、8冊のボロボロの本を手に入れ、ナチスに見つからないように、読書していた。
多分、自分の今年の読者の中では、一番面白い、というか、印象の強い本になるでしょう。
何故か、ナチス関連の物語は、フィクションは好きではないが、ノンフィクションは、何冊読んでもとても面白い。
45年までのもの、45年以降の、南米に逃れたアイヒマンやメンゲレのその後…面白かった。
ディタやフレディー・ヒルシュたちが中心になって図書館として機能する努力を、するくだりは、今の平和ぼけした生活からかけ離れて、正直、あまりにも地味で、途中なかだるみ気味だった。
しかし、いよいよ、ディタたちが、メンゲレたちに、命の選別をされるあたりから、一気に緊張感を帯びてくる。
その間にも、絶え間ない人の死が続く。ユダヤ人ばかりか、ソ連兵士も脱走の罪で処刑。
戦争が終わる直前は、ディタと母親は、ドイツのベルゲン・ベルゼン収容所に送られる。ここでは、オランダから送られてきて、劣悪な衛生状態からチフスにかかった姉妹が、すでに虫の息であった。
もしや、と思ったら、案の定、アンネ・フランクとその姉だった。
最終的には、ドイツが負けて、イギリスの兵士たちが乗り込んできて、ここの収容所を、解放するが、アンネは、その直前に命を落としたという。
後年、彼女がアムステルダム時代に残した日記が、世界中で読み継がれることになる。
イギリス軍兵士たちが、収容所に入ってくる場面は、この物語のハイライトになるわけだが、イギリス軍は、拍手と歓呼の声で迎えられると思っていたらしいが、死者と生存者の区別もつかないような悲惨な状況に、度肝を抜かれたという。
とらえたユダヤ人を、生かしておくつもりはないから、食事といっても、朝はお茶、昼は一切れのカブかジャガイモが入った塩辛いスープ、夜は一切れのパン…。
解放直後の、ユダヤ人男性の写真を見たことがあるが、骨に皮膚が張り付いてるだけの肉体だった。
常に、尋常じゃない状態の人の死がつきまとうので、夜、寝る前に読むと、頭が覚めてしまって寝付けなくなる。
ディタが、解放後に、体調を崩した母親を失いながらも、収容所を共に生き延びた若い男性、オータと結婚し、3人の子供に恵まれる。
終戦後は、夫婦で会社を経営していたが、冷戦時代になり、追われて、イスラエルに移住する。
彼女は、一年に一度だけ、今でもプラハに戻って来るという。
暗い、悲惨…だけでは済まされない物語。
読み始めてすぐに、この少女が、はたして生きて収容所を出られたのか、パラパラめくって先に、確認してしまった。
陰惨と、一筋の希望が同時併行で進む。
図書館の物語は、作者の想像が多いと思われるが、ジャーナリスト なので、事実の伝える部分の方が、はるかに秀逸だと思った。
ナチスの非道さを非難するのは簡単だが、日本軍も大陸では加害者だったことを思うと、振り回したこぶしをの持って行き場がない。
戦後、ニユールンベルグ裁判で、多くナチス高官が裁かれたというが、最高責任者のヒットラーはさっさと自殺、多くのナチスの人間が密かに南米に脱出、冷戦時代は、
ソ連と戦うために、元ナチスの高官たちから、戦争中の罪を不問にする代わりに、アメリカが、様々な情報を得ていたということを、別の本で読んだ。
多分、これからも、ナチス関連の書籍が発行される度に、読むだろうと思う。
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CKさん (女性)
何もかもが禁じられた強制収容所内で、命懸けでたった8冊の本を守る図書係の少女。少し読みづらかったですが、感動的です。映画化したら良さそう。
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あっちゃんさんの感想 (女性 埼玉) 読書メーターから
アウシュビッツ=ビルケナウには、国際赤十字の監視団の視察用に 期限付きの家族収容所と秘密の学校があった。リーダーのフレディ・ヒルシュに図書係を任命され、ディタは本を抱きしめ 走る 逃げる 隠れる、そして生き延びた。だから読んでます、有難う。フランシスが、後ろポケットから取り出して 貸してくれた本は兵隊文庫かな…って思いたい。
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Goroさん (男性) ブログ 行人のこころ から
本は心の命綱 「アウシュヴィッツの図書係」(A・G・イトゥルベ)を読んで
本日の産経新聞の書評に、先日読んだばかりの「アウシュヴィッツの図書係」が紹介されていました。
書評の見出しは「文学紹介者、頭木弘樹が読む『アウシュヴィッツの図書係』 絶望の中では本が心の命綱となった」です。
紹介されている アントニオ・G・イトゥルベ(著)小原京子(翻訳)の「アウシュヴィッツの図書係」 について、出版社の集英社による内容紹介は以下の通りです。
「修正者1944年、アウシュヴィッツ強制収容所に作られた秘密の図書館。本の所持が禁じられているなか、図書係をつとめる十四歳のユダヤ人少女ディタは、命がけで本を隠し持つ。実話に基づいた感涙必至の大作!」
内容紹介にあるとおり、事実に基づく物語で、モデルとなった実在の人物へのインタビューと取材をもとに描かれています。ですから、厳しく残酷な事実も描かれていますが、それでもディタの生き方を通して読書の素晴らしさを実感させられる感動作です。
頭木弘樹さんは書評で「本に救われるというのは、決して特殊な事例ではないのです。平和なときには必要がないようでも、いざとなると、本は心の命綱となります。圧倒的な絶望の中でも、心がつぶれないように、支えてくれるのです。」と書いていますが、全くその通りだと思います。
最近、第二次世界大戦時にアメリカが戦地の兵隊たちに本を送り続けた実話を描いた「戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊」(モリー・グプティル・マニング 東京創元社)も出版されており、本、読書の大切さを再認識しています。
A・G・イトゥルベ 『アウシュヴィッツの図書係』 (小原京子訳)(H28.7 集英社)
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かすり さん (東京)
実話を元にしたホロコースト小説と聞くと敬遠されがちだけど『アウシュヴィッツの図書係』はいたずらに惨さを強調するのでも淡白過ぎるのでもなく、記憶に残る書き方でとても読みやすく、絶望の中でも書物が人を生かし自由にするということを勇気ある少女ディタの目を通して教えられました。
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ミント さん (女性 東京郊外) ”ブクホリ 40代女性のための読書案内” から
希望をもつこと『アウシュヴィッツの図書係』
読む前からどんな話かは想像つく。
そして想像通りのお話。
じゃぁ つまらないかっていったらそんなことなくて
翻訳本とは思えない自然な語り口と読ませるリズムがある。
わたしの人生観を変えた一冊は
夜と霧 新版
なのだけど
どちらも、どんな過酷な状況に置かれても
希望をもつこと
の大切さが語られている。
飢え、過酷な労働、不衛生な環境、暴力、恥辱、死と隣り合わせの恐怖
きっと、アウシュヴィッツ程の過酷さは歴史上どこを探しても見つからないほど
壮絶なものだっただろう。そしてその過酷さもぬるい想像でしかなく
おそらく想像を絶するほどの苦しみと絶望はやはり体験した人でしかわからない。
にもかかわらず
一冊の本は時を超えるタイムマシーンであり
トランスポートできる移動手段になりえる。
そして、ほんの一瞬でもそこにある絶望から離れることができるのも
想像力のなせる技なのだ。
本書は、事実に基づいたストーリーで
SSによる残酷な拷問やまるでゴミのように扱われるユダヤ人の屍体と異臭など
読み続けるには辛いシーンが多い。
しかし、読み続けることができるのは
やはり読書においてさえも「希望」を持ち続ければ救われるということを
我々は確かめたいのだ。
もちろん収容所では救われなかった命の方が圧倒的に多いし
「希望」なんてきれいごとで生き延びられるはずもないのは承知だ。
稚拙な想像の中での絶望でも
きれいごとだとしても
やはり 人間は希望を持って生きるしかない。
余程 死んだ方が楽だろう。
それでも、生き続ける。
神様はどうしてあんあ過酷な現実を見ないふりでもするかのように
死ぬより辛い地獄に人間を、
しかも信仰の深いユダヤ人たちを追いやったのか。
どんな立派な神学者でさえ納得出来る説明できない。
本書の中で、気が狂っていると思われた老教師が主人公に向かって言う。
私たちが憎しみを抱けば、彼らの思うつぼです。
フランクルの著書でも出てくる。
痛めつけられ、虐殺され
苦しめば苦しむほど
ナチスの望む結果なのだと。
だけど、その中でさえ
生きる希望や愛を感じることを選択できるのが人間の自由であると。
明日もを知らないこの状況で
いまを生きるしかない。
ひたすら感情をなくし、収容者同士でさえ蹴落としあい
神様も誰も信じられない。
愛する人がバタバタと死んでいく地獄より壮絶な環境の中で
あまりにも簡単に言い過ぎて
陳腐すぎる
それでも
希望をもつ
しかないのだ。
娯楽としての読書の方が気分がいいのは当たり前だけど
やはり自分も含め、人間には想像を絶するほどの残虐性が内包されていること、
いつか加害者にも被害者にもなりえるということを認識し
それでも自分の正しさや信念を貫き通すための
自分らしさ、人間らしさを形作るための作業として、本を読むことの大切さを知る。
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yukino さん ブログ 日々の読書+α から
本作のことを、
「絶望にさす希望の光。それはわずか8冊の本―― 実話に基づく、感動の物語」
と紹介しているのを目にしましたが・・・
ん~、感動とは全く違うんですよね汗 アウシュビッツのことは、もちろんこれまでにも『アンネの日記』を始め、さまざまな書籍、テレビ、映画などから、たくさん話に聞いてきましたが、こうして久しぶりに本作でその悲劇を読み、あまりにも心を打ち砕かれてしまい、呆然としている、といった感じなのです。そして時々、私たち日本人も、こんなひどいことを隣国の人たちにしたのだろか・・・と思わずにはいられませんでした。
気をとり直して・・・
アウシュビッツ強制収容所には、秘密の図書館が”があった!? 所蔵本はわずか8冊。しかし、だからこそかけがえのないその本を命がげで看守たちから守りぬく必要があったのだ。図書係としてその大事な本を服の下に隠し持つ少女・ディタ。
彼女こそ、本作のモデルなったと実在の人物なのです。なんとも言えない読後の重苦しい気落ちの後、本作の執筆に至る著者と彼女との出会い、現在の彼女の生活ぶり、行動を、巻末のあとがきで知り、さらに複雑な思いになりました。戦争で受けた苦しみ、失った家族、80歳になった今でも彼女にとっては、戦争は終わっていないのです。そう、強く感じました。
それでも、彼女にはどんなに辛いときでも本があったこと、そして今も亡き夫の本とともに生きていること、それだけが唯一の救いであるように思います。
本好きな自分だから、少しだけディタの気持ちがわかるような気がしています。
せっかくなので、本作の中で、本について語られている部分を少し紹介したいと思います。
クローバー人類の歴史において、貴族の特権や神の戒律や軍隊規制をふりかざす独裁者、暴君、抑圧者たちは、アーリア人であれ、黒人や東洋人、(中略) どんなイデオロギーの者であれ、みな共通点がある。誰もが本を徹底して迫害するのだ。
本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ。
クローバー(ディタが『城砦』を読んだときのことを思い出して)
地球上のすべての国が、どれだけ柵を作ろうと構わない。だって、本を開けばどんな柵も飛び越えられるのだから。
クローバー父さんは正しかった。あの本(『魔の山』)は、どんな靴よりも遠くまでディタを連れていってくれた。
本を開けることは汽車に乗ってバケーションに出かけるようなもの。
辛いとき苦しいとき、絶望的なときこそ、希望を失わないということが、いかに大切なことか、必要不可欠なことか、彼女の体験を通して教えられた本作でした。
ディタと作者に深く感謝
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海洋戦略研究さん East Asia News
アントニオ・G・イトゥルベ『アウシュヴィッツの図書係』小原京子訳、集英社、2016年、2200円+税は、第2次世界大戦中、ユダヤ人としてアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に送られ、少女の実話を基に書かれた小説である。
アウシュヴィッツに後世を託す少年少女を育成する学校があり、秘密の図書館、僅か8冊の本と6人の語り手がいて、束の間でも教育し、希望をもたせていた。
その図書館の係をしていた少女が、ホロコーストを生き抜いて、イスラエルに移住していった。
「本」という切り口でアウシュヴィッツの過酷な実態を描き、絶滅収容所にあっても生き甲斐を感じる感動的な物語である。
哲学的な思考は、フランクルの『夜と霧』に穣にしても、この小説は、絶望的な状況にあっても人間は人間らしく生きていき、そのきっかけが「本」だったという。
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kenzou さん (男性 鹿児島県) 旅と映画とB級グルメとちょっと本のブログ から
「兵士シュヴェイクの冒険」主人公の男は太ったおしゃべりな人物で軍隊に入るが「あまりにも能無しでなので」除隊されられたあと。新たに徴兵に車いすで出かける。食べることが好きで、酒を飲み、何かと仕事をさぼるとするどうしょうもない男だ。
一方、誰とでも礼儀正しく話をし、その表情や優しいまなざしは善良そうだ。何か尋ねられると、いつもそれにまつわる話やエピソードを持ち出す。たいていは、本題からそれた、訊かれてもない余計なはなしだ。そして誰かに怒鳴られたり、罵られたりすると、何も言い返さず、それはごもっともと応じる。そんなわけで、彼はどうしようもない馬鹿と思われ、あきられてすきにさせてもらえた。
そんな本が恐怖にと迫りつつある。アウシュヴィッツの学校でディタによって読みき聞かせが行われると。やがて多くの子供たちが物語の世界へ引き込まれていきます。
8冊の本
H・G・ウェルズ「世界史の概観」ロシア語の教科書、解析幾何学の本、地図帳、フランスの小説、ロシア語の小説、フロイトの「精神分析入門」チェコ語の小説、
アウシュヴィッツの今を生き延びることしか未来がない時に本が果たす役割は大きいと
思えてきます。
こんな本が。スペイン語から日本語に翻訳されたことに感謝したくなりますね。
著者のあとがきで、 奇跡の物語が隠されていますので最後まで読むことをお勧めします。人が生きるために、「本」がどれほど大きな力を持っているかを見せてくれる意欲作です。
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トムタン さん 本が好き! から ★★★★
{アウシュビッツに実在した図書館で、8冊しか無い本を命がけで守った図書係の少女の物語。実話をもとにしたこの物語を、本の持つ力を信じる、本を愛する、本を守りたい全ての人に薦めたい。}
アウシュビッツ=ビルケナウの絶滅収容所 ー その中にある秘密の図書館の「図書係」として、命をかけて8冊の本を守り、修繕し、貸し出し、心から慈しんだ一人の少女…。この本は、その勇敢で、ユーモアと機智に富んだ「ディタ」と呼ばれる少女の物語だ。
ディタと両親が収容された「家族用キャンプBⅡb区画」は、移送後直ぐに選別され、労働力とガス室送りにされるアウシュビッツにおいて異色な存在だった。
6ヶ月後特別措置と記録されて収容所に送られて来る家族達は、男女は分けられるものの、親子が一緒のブロックで生活出来る。その背景にはナチスのある目的があった。しかし、ナチスの目論見とは関係無く、そこには禁じられているはずの秘密の学校と、たった8冊ではあるが、本があった。アウシュビッツで固く禁じられているもの、「本」が。
本文から引用してみたい。
「人類の歴史において、貴族の特権や神の戒律や軍隊規則を振りかざす独裁者、暴君、抑圧者たちには、アーリア人であれ、黒人や東洋人、アラブ人やスラブ人、あるいはどんな肌の色の、どんなイデオロギーの者であれ、みな共通点がある。誰もが本を徹底して迫害するのだ。本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ。」
当然アウシュビッツに本があるはずは無く、持っている所を見つかったら、処刑されるだろう。そんな環境の中で、このブロックに密かに学校を作り、本を所持しているフレディ・ヒルシュと言うドイツ系ユダヤ人の青年に見込まれたディタは「図書係」になることを引き受ける。
ヒルシュはカリスマ性のある古参のリーダーでアスリートだ。このヒルシュの力強い考え方や行動力にディタは影響を受ける。彼は言う。「最強のアスリートは最初にゴールを切る選手ではない。倒れるたびに立ち上がる選手だ。大切なのは意志の力、諦めない事」「勇敢な者は恐れないものでは無く、恐れを知っているものだ」と。ヒルシュはディタに、本の中の数ページを自分だけの世界にすっかり変えてしまう感性があることを見抜く。それはアスリートの彼には無いものだった。
ディタは本を秘密の学校の先生達に貸し出し、一日の終わりに回収し、隠す。運ぶ時の為に服の下に本を入れるポケットまで縫いつけて。収容所所長のシュヴァルツフーバーや、ヨーゼフ・メンゲレなどという、ユダヤ人を全く人間と思っておらず、処分するか、実験のために斬り刻む事を平気で行う者達の監視にさらされながら必死に図書係の使命を遂行するディタ。彼女は小さな兵士だ。
8冊の本はどれも傷みが激しい。『地図帳』、『幾何学の基礎』、H・G・ウェルズの『世界史概観』、『ロシア語文法』、フロイトの『精神分析入門』読めないフランス語の小説(実は『モンテ・クリスト伯』)、表紙の無いロシア語の小説。ボロボロのチェコ語の小説(これがとても面白い『兵士シュベイクの冒険』)その他に、ディタが修繕する必要が無い「生きた本」と言うのもある。文学作品をよく知っている先生達が『ニルスの不思議な旅』やアメリカ先住民の伝説、西部の冒険もの、ユダヤの族長物語などを「生きた本」に変身して子供達に聞かせるのだ。
アウシュビッツでディタが回想する本の思い出も、強く私の心を惹きつけた。すでに戦争の色濃く、貧しさがユダヤ人を追い詰めていたころ、12歳の誕生日にディタが「大人の本を何か読ませて欲しい」と母親にねだる。眠りかけたディタのナイトテーブルにそっと母親が置いてくれた本の著者と題名を見て、私は泣きそうになった。A・Jクローニンの『城塞』。私が中一の夏休み、母に貸してもらって貪るように読んだ本だった。ディタはこの本によって人生が何倍にも豊かになること知り、信じる道を進めば、最後に正義が勝つと教えられる。
そして、プラハからテレジーンゲットーへ移送される時、ディタの父がスーツケースに忍ばせて母に文句を言われた分厚い本。トーマス・マンの『魔の山』。ディタはこの本で「本を開けることは汽車に乗ってバケーションに出かけるようなものだ」と思う。『魔の山』の表紙を開けた瞬間を思い出すと、アウシュビッツの粗末なベッドでも笑みが浮かぶディタ。この本も、高校二年の夏休みに何日もかけて読んだ私の忘れられない本だった。
すっかりディタに感情移入して読んで行くが、正直な所アウシュビッツでの日々、それにも増して、終戦真近のベルゲン=ベルゼンの収容所の様子は読むのが辛い。しかし、アウシュビッツで先に6ヶ月が経った家族が「特別措置」に送られ、ヒルシュが死亡し、無気力になってしまった子供達や一部の大人達の心を蘇らせたのは、ディタが朗読する本だった。
そして、死人と生きた人間の区別もつかないベルゲン=ベルゼンでも、朦朧とするディタを支えたのは物語の世界だった。たとえ最後にそれが手元に無かろうと、読んだ本の記憶は一瞬でもディタを目を背けずにはいられない現実から旅に連れて行くことが出来た。
水も食べ物もろくに無い絶滅収容所で、本なんかが何の役に立つのか?子供達に教育を与えても、半年後には死ぬのに、意味があるのか?そう思う時、人が物語を読んで、(聞いて)笑い、泣き、胸躍らせる時、干からび、死んでしまったかに見える人間性を一瞬でも取り戻す事をこの本は教えてくれる。
この物語は実話に基づいたフィクションであり、アウシュビッツを生き延び、最後の収容所で生き残った勇敢な少女ディタのモデルは、現在80を過ぎても健在であり、この本を書く為に資料を集めていた著者が偶然出会った彼女の英雄的な生き方も後書きに書かれている。
是非最後の著者後書き、訳者解説まで読まれたい。そしてディタと言う少女の目を通した絶滅収容所の人間模様に、新しい発見をすることと思う。
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yuge-hokkaidoさん booklog から ★★★★★
事実をもとにしたフィクション。
命懸けの図書係の少女。
11才の誕生日、物資が乏しいなかで親が見つけてくれた簡素な中古靴。
おしゃれな靴でないことに内心ガッカリするも、喜ぶ素振りを見せて親を安心させる。その夜、もう1つのプレゼントとして親にお金がかからない願いをする。
「大人の本を読ませてほしい」
母が時間をかけて自分の本棚から娘の枕元にそっと本を置く光景。夢中で読みふける娘。
とても胸を打たれた。
本は洞窟でマッチを灯すようなものだ。洞窟を照らすことはできないが、周囲の闇の深さに気づかせてくれる。
この文書にもグッときた。
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riesu さん from Amazon ★★★★★
「アウシュヴィッツ」と「図書係」というあまりにもかけ離れた単語がならべられていることにまず皆さん驚かれるでしょう。
絶滅収容所と呼ばれた場所に「仕事の効率を上げるための子供を預ける場所」という建前のもと、造られた31号棟。もちろん学校ではないため、教科書どころか本の一冊さえ存在しているわけはない。もしドイツ兵に見つかれば、「余分なものを持っていた」罪で直ちに命が奪われる。しかし14歳のディタはユダヤ人のリーダーであるヒルシュに「本に対する感性」を認められ、たった八冊の本を文字通り命を懸けて管理する「図書係」に任命される。
食べ物や武器にもならない、死と隣り合わせの場所で、一体本が何の役に立つというのか。人間が絶望のただなかにいるときの本の存在意義とは、を容赦なく突き付けてきます。こう書くと説教じみているのかと思われかもしれませんが、そうではありません。SSとユダヤ人少女の恋愛、アマゾネス将校の非情さ、脱獄計画に実施・・・と目まぐるしく場面転換し、悲惨だという一語だけであらわせない。とにかく内容が(不謹慎な言い方だが)「おもしろい」。
実在の人物がモデルになった事にも驚き、あとがきも、訳者の言葉も一章として成り立っています。作者がジャーナリストだということがうなづける作品です。絶望の中で信じる「希望」なんてこの年になると恥ずかしくてなかなか口に出せないけれど、素直に共感できました。
中三の娘の読書感想文用の本にしました。収容所の非道さは描かれていますが、きつい描写は少ないので、小学校高学年なら十分読める内容だと思います。6年生の次女の方が先に読んで「面白いから早くママ達も読みなよ。」と言ったぐらいですから。
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soramame さん from Amazon ★★★★
複雑な気持ち
命名はよくないけど「ホロコースト物」は本でも映画でもたくさん接してきたので、ナチスの残虐さに今更驚いたりはしません。
一方で、知っているつもりだからこそ、アウシュヴィッツの家族収容所とか学校とか図書館のイメージがつかみ難く、最初は入り込みにくかったのですが、読み進むうちに主人公の少女の賢さ、勇気、行動力などがとても魅力的で引き込まれて行きました。
しかし、パレスチナの現状を考えると複雑です。男性リーダーがしばしば口にする「パレスチナに戻る」という言葉こそが現在のパレスチナの人々の悲惨の源だと思うからです。そこは何百年、何千年にわたる別の民族の暮しが平和に営まれていた土地です。ユダヤ人はそういうところに「我々の父祖の地」と乗り込み、土地を取り上げ、家を破壊し、命を奪っているのですから。
ユダヤの人々がなぜ自分が受けたと同じ仕打ちをパレスチナの人々に行えるのかという疑問に対し、「彼らは世界は多民族の受難には基本的に無関心だということを学んだからだ」と言った人がいます。一理あると思います。「ホロコースト物」に接するとき、私の気持ちはいつも複雑です。
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蜜蝋 さん
お盆休み中に読んだ、アントニオ・G・イトゥルベ著 「アウシュヴィッツの図書係」。強制収容所にあった8冊しか本のない秘密の小さな図書館。その本を命がけで守り続けた少女の物語。これには感動してしまって、今友人達に読むように薦めてます。
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しんすけ@第ゼロ稿完成
『アウシュビッツの図書係』を読んでいます。まだ80ページほどですが、既に「名作保証」(『mother』のキャッチコピーを借用)です。
本当に、いい本と出会いました。読了後、すべての本が、満ち溢れた生命力で輝いて見えるかもしれません。
『アウシュビッツの図書係』は、今日中に読み終わりそう(^ ^)
印象深かったのは、フレディ・ヒルシュの結末。どうしてっ!?という感情と疑問は、ディタと同じものを覚えた。共感や、尊敬するところが多かっただけに、理解が及ばない行動を見せられると、しばらく混乱から抜け出せなくなります。
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ののまる さん from bookmeter
夏バテでお腹が痛くて緩くて、貫徹で読了。冷たい水で顔を洗って清潔なタオルで拭けるこの何気ない幸せを噛みしめました。最近ラテン系作家によるホロコースト小説によく出会うなと思ったら、多くのユダヤ人が南米に逃れていたんですね。私も本の力を信じている1人です。
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ツキノさん from bookmeter (女性)
実話を元にしたスペインの小説。アウシュビッツで密かに読まれていた本の管理をした14歳の少女ディタ。著者との偶然の出会いが印象的。ディタのみならず、収容所にいた人々の群像劇になっている。戦争と平和、本の持つ力を考えるうえでぜひ読みたい一作。
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モンデンキントさん from bookmeter
言葉の力を、物語の力を信じている私としては、八冊の本が、人々に生きる力を与えた事実が、非常に感銘を覚える。生きるためには、まずはパンだが本の力も信じたい。
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hananorasanさん from bookmeter (女性 熊本県)
実話に基づく小説。アウシュヴィッツに秘密の学校があったこと、8冊の本があったこと、その本を10代半ばの少女が守っていたこと。その事実に驚かされた。彼女が本を愛おしげに撫で修理する姿に胸がつまった。壮絶な環境の中で子どもたちに本や語り(生きた本)によって知の世界、想像の世界に誘う大人達もまた凄い。まだ学校のあった頃は僅かでもユーモアや明るさがあったが、家族棟、学校の閉鎖の1944年7月から更に更に壮絶な状況になっていく。よくぞ生き抜いてくれたとしか言えない。あとがきで80歳になったディタに会えて嬉しかった。
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ゴロチビさん from bookmeter (女性)
アウシュビッツ物はどうしても気になるので読んだ。事実を基にした小説だが、こういうものは事実そのものの方が胸に迫る気がする。小説の中で悪の権化として描かれたメンゲレが、息子に対しては「選別することで健康なユダヤ人を救った」と自らを正当化していた。いつだって人は自分の行動を正しいと信じて"とんでもない"ことをやってしまうのだ。戦争下の出来事、と安心してはいけないんじゃないか。イスラム国のテロだって、相模原の事件さえも同じ危険が流れているように見える。どんな時も人間性を見失わないためにはどうすればいいのだろう。
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カササギさん from bookmeter (女性)
アウシュヴィッツ強制収容所に、秘密の図書館があった。蔵書はわずか8冊。〈笑ったり泣いたりすると、自分たちはまだ人間であると思いだす。タイムマシンはある。本がそれだ〉過酷な日々の中、本と想像力を武器に、あきらめず前を向き続けたディタの物語。
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信兵衛さん blog 信兵衛の読書手帖から (男性)
ナチスがユダヤ人を根絶やしにするため設けたアウシュヴィッツ強制収容所。
その第二強制収容所に設けられた家族収容所31号棟には、収容されたユダヤ人の子供たちのための学校、そして図書館があった。
しかし、それはあくまで極秘のこと。ナチスにそれを知られたらすぐ取り潰され、関係者は処刑されるのは必須。
ナチスに対して毅然と対応する収容者たちのリーダー=フレディ・ヒルシュによってそれらは作られたものですが、図書館にある本は僅か8冊のみ。
その本を日中貸出し、夜には回収して隠し場所にしまう“図書係”にヒルシュから任じられたのは、14歳のチェコ人少女エディタ・アドレロヴァ(ディタ)。
それからディタは、勇気を奮って本を守り続けます。
内容もバラバラで傷んでいる8冊の本について、今なら何の価値があるだろうかと思うところですが、何もない収容所においてそれはどんなに貴重なものであったことか。
現にディタは、本を守ろうとすることで勇気を持ち続けることができ、また時々それらの本を読むことによって希望を捨てずに、過酷なアウシュヴィッツ収容所での少女時代を生き抜くことができたのですから。マニング「戦地の図書館」でも感じさせられたことですが、たった一冊の本でもどんな大きな力を持っているかを思うと、その感動はとても大きい。
アウシュヴィッツ収容所等での生活がどんなものであったか、リアルかつ克明に描いたその実情は、目を逸らしてはいけないものであると思いますし、小説という形で今なお訴え続けられるべきものであると感じます。
なお本書は、小説とはいえ、実際にアウシュヴィッツ収容所で図書係を務めた実在の女性=ディタ・クラウスの経験に基づくフィクションとのこと。
強者の傲慢な残虐性、弱者の悲痛な叫び、過酷な状況を生き抜いた勇気、そして本の持つ力を余すところなく描き出した一冊。
お薦めです!
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popoさん from bookmeter (男性 大阪府)
実話にもとづいた話で、新聞にも載っていたので読みました。 アウシュビッツがこんなに残酷だったとは、文字を通して改めて知りました。 戦争が起こす悲劇を今一度確認するために読んで見てもいいかなと思われます。 作品としては少し間延び?? はしてますが、こんな事があったと言うことを知れるだけで良かったと思います。
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文さん (文庫フリーク@) from bookmeter (男性 千葉県)
赤ん坊を抱いた母親に連れられた4歳の子供は、あっかんべをしてふざける。貨車に3日間すし詰めにされて着いたアウシュビッツ。ナチス親衛隊は「消毒だ。シャワーを浴びてもらう」と散弾銃を手に言う。ハンガーに洋服をかけ、その場所の番号を覚えておくように、とまで言われ戻ってこれないと思う人間がいるだろうか。この朝、第2焼却炉だけで殆ど女性と子供が、300人以上ガス室で命を奪われた。そのアウシュビッツでユダヤ人のリーダー、ヒルシュは秘密の学校を作る。絶滅収容所で子供たちに施される教育の場は木造のバラック31号棟。
子どもを集めて面倒見ることで、特殊な【家族収容区画】の親たちの、作業効率が上がると収容所司令部を説得するヒルシュ・国際監視団が虐殺の事実を確かめに来た時の隠れ蓑に使えると考えたナチスの打算。禁じられた教育を子供たちに施す31号棟で、ヒルシュから僅か8冊の本の図書係をやってみないか、と声をかけられたのはディタ・僅か14歳の少女。本を持っている所をSSに見つかれば確実に処刑。過酷な労働・常に空腹感じる貧相な食事・チフス等の病気・効率良く殺傷するためのガス室。生き抜くことすら難しい収容所で
、地図帳や精神分析入門などジャンルもバラバラ・紙くずになりそうな傷んだ本を、いたわるように手当てするディダ。実話を基にしたフィクション。特筆すべきは何かの文学作品を殆ど暗記している先生が【生きた本】として物語を話して聞かせ、子供たちに迫り来る理不尽な死を一時でも忘れさせ、夢中にさせる本の持つ力。実在の本名ディタ・クラウスが生き延び、プラハで著者と逢った時、80歳にしてエネルギーと尊厳に溢れた女性だったという。リーダビリティに優れた本とは言い難いが、ずっと躊躇していた『夜と霧』読むこと決意させられた1冊。
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あじさん from bookmeter
死の灰が降り続くアウシュビッツ強制収容所に、両親と共に収容された少女がいた。少女は服の下に仕込んだポケットに、本を隠し持つ図書係として働く。指導者が本を焼き払う行為は、歴史の中で繰り返されてきた史実。人間としての矜持を芽生えさせることを恐れた、理不尽な迫害に過ぎない。だからナチスが禁止する本は、ユダヤの人々にとって唯一無二の親友だった(本は味方)。人肉の焼ける臭い、チフスが蔓延する墓場におても、なお教育を諦めなかった。「生きた本」の生命を強奪したナチスは、永遠に本に刻まれ口伝えで語られるだろう。
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シュガーさん from bookmeter (女性)
ナチス強制収容所アウシュビッツに送られながら、たった8冊の本を命がけで守る図書係のディタ。日本の原爆と同じで、ナチスのこのユダヤ人虐殺も…言葉にならない。何の罪も無く劣悪な環境に置かれ、腐ったような食事すら満足に与えられず、それでも本を手に取る喜び。ディタが、外国語が読めなくとも本に触れ、紙の匂いだけで幸せを感じる所が本当に切ない。後半、収容所の細かい描写に辛くなるが、現代人は知るべきだと感じた。とても長く、文字量も多いお話だけど、こういう時代があったことを知るためにも、読むべきだと思う。
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