 まりこさん         from bookmeter     (女性 東京都)
まりこさん         from bookmeter     (女性 東京都)
                      
                      実話にもとづいたフィクション。アウシュヴィッツ=ビルケナウ絶滅収容所には秘密の図書館があった。蔵書はたった8冊の本。14歳の少女ディタは秘密図書館の図書係を任される。本を持っているところを見つかれば処刑されるにも関わらず、ディタは密かに本を貸出し、一日の終わりに隠す。本は死の恐怖を遠ざけ、人間の尊厳を思いださせてくれた。想像を絶する過酷な環境を生き延びた人たちと私が同じ時代に、ともすれば隣合わせに暮している、ということがうまく飲み込めない。〈本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ。〉
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                       クニーガさん       from bookmeter
クニーガさん       from bookmeter
                      
                      ああ、自由に本を手に取り読むことのできる幸せ。昨年3か月のブラジル滞在後緊張感無しで毎日を送れる治安のよさにしばらくしみじみしたものだが…いまだに本ではなく銃を手に生きねばならない子供たちもいる。世界中からの観光客がのどかに歩くのを見るにつけ、日本は平和で少なくともこれを守らなければならないと感じる。(相変わらずうまく表現できないことにいらだちつつ) 
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                       こたろうさん  ブクレポから   (男性 三重県)   ★★★★☆
こたろうさん  ブクレポから   (男性 三重県)   ★★★★☆
                      
                      アウシュビッツにあった実在の秘密の図書館の物語  
                      
                      実話をもとに書かれた物語だそうです。
                      内容紹介にあるようにぼろぼろになった八冊きりの蔵書を大切に秘密に守っている図書館がありました。その図書係、人に知られず運び、持ち帰り隠す、そんな役割を引き受けた少女ディタ。
                      大きな服の(アウシュビッツで丈の合った服など手に入らないのを逆手にとって)内側に本が収められる秘密のポケットを二つ作ってもらい、仕事に励むディタ。
                      けれどその間にも、別棟で別れて暮らす父は風邪に侵され何の手当も受けられず、朝起きてみると亡くなっていて、遺体に会うこともできず(朝一番で運び出されてしまうから)そんな悲劇が秘密裏に合理的に、効率よく運営
                      され、何千、何万という無辜のユダヤ人たちが「処理」されていくのでした。
                      
                      その図書館にあったのは地図とH・Gウエルズの「世界史概観」幾何学の基礎、ロシア語文法、フロイトの「精神分析入門」そして「兵士シュベイクの冒険」などでした。その外には「生きた本」と称して記憶に残っている物語「ニルスの冒険」などを語ってくれる人々が六冊、だけなのでした。
                      
                      腹の足しにもならない,ボロボロのわずかの本が極限におかれた人々や子供たちをいかに勇気づけて、意欲をもたらすのか、物語の優位性というか真の有効性が歴史的に証明された感があります。
                      
                      ただ様々な立場で、生き残ることを、そんな遠大な目標ではなくても今食べるものを手に入れるために大切なものを捨て、裏切ってしまうそんな人間性がむごいまでに描かれていきます。
                      SSつまりナチスの親衛隊やその手下たち、あるいは秘密裏にナチスに協力して生き延びることを選んだ人びと、そんな姿をディタは曇りのない、残酷なまでのまなざしで見つめます。
                      
                      じつはフレディ・ヒルシュという実在のドイツ生まれのスポーツ振興の組織に身を置いてその後アウシュビッツに収容され秘密の図書館を作り上げた人物は裏切り者だと思われていたそうで、薬を飲んで自殺したそうなのですが、じつは故意に薬を盛られて殺されたのではないかと史実を調べながら作者は訴えています。
                      
                      ただ、様々な語りたいこと、深い背景と人間関係を丸ごと描こうとしたせいでしょうか、けして読みやすいとは言えない一冊でした。そして人間がなせる限界とも思える残酷さがその読みにくさに一役買っています。
                      
                      ディタは戦後生き延びてイスラエルに渡り、作者とも実際にあって語ってくれたそうです。
                      ディタが図書係として生き延びていた日々のすぐそばでチフスに罹って亡くなった少女アンネ・フランクとその姉が命を終えています。
                      
                      個人的には実話を基にしたとはいえ、フィクションではなくノンフィクションで書かれたほうが、重みもインパクトも増したのではないかなと、そう感じました。
                      いろいろな意味で重い一冊でした。 
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                       nekotomasakoto      from blog    (女性)
nekotomasakoto      from blog    (女性)
                      
                      お盆休み中は、図書館で本を借りるのもお休みして、
                      自分で購入したこの本だけを読んでいました。
                      この『ディタ』は、実在の人物で、現在もイスラエルにて存命。
                      著者は、偶然のつながりから彼女と知り合い、
                      『アウシュヴィッツ強制収容所』を共に訪れる経験を得る。
                      そして、小説という形式ではあるものの、
                      彼女の経験をもとに、これを書き上げた。
                      
                      本を読むことや物語を想うことは、どんなに過酷な状況にあろうとも、
                      常に心は自由で、あらゆる世界へはばたけるのだと、
                      信じることができる一冊です。
                      
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                      余談ですが、本書の中には、『ディタ』が
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                      中に、トーマス・マンの『魔の山』が出てきます。
                      
                      これはとにかく長い小説で、わたしが読み終わった時は、
                      現代と状況が違いすぎるし、別に読まなくてもよかったかな・・・
                      とか思ったのですが(コラ)、
                      『ディタ』が、度々この本のストーリーを思い出すシーンでは、
                      
                      (国際サナトリウム『ベルクホープ』と『アウシュヴィッツ』を比較したり、
                      登場人物『ハンス・カストルプ』に思いを馳せたり)
                      内容が分かっているだけに、彼女の心情がよく理解できました。
                      
                      と、こんなところで、この読書経験が役に立つとはね・・・・・。