Part 1 (トップページ)に戻るアウシュヴィッツの図書係Topイメージ画像  ナチスによって焼かれる本、没収された本、移送に使われた貨車、そしてバラック内部
                       読者の声バナー アウシュヴィッツの図書係
読者の声など (直接のメールによる感想、、新聞記事、レビュー、コメント記事、つぶやきなどからランダムに、一部抜粋したものを まとめてみました。)
 ※できるだけハンドル名で表記するようにしました。
皆様に感謝!(*u_u*)ペコ




 アウシュヴィッツの図書係 読者の声/読者レビュー

        アウシュヴィッツの図書係 ディタさん 昔と今
Dita Kraus, in 1942                                                  


感想/レビューまりこさん         from bookmeter     (女性 東京都)

実話にもとづいたフィクション。アウシュヴィッツ=ビルケナウ絶滅収容所には秘密の図書館があった。蔵書はたった8冊の本。14歳の少女ディタは秘密図書館の図書係を任される。本を持っているところを見つかれば処刑されるにも関わらず、ディタは密かに本を貸出し、一日の終わりに隠す。本は死の恐怖を遠ざけ、人間の尊厳を思いださせてくれた。想像を絶する過酷な環境を生き延びた人たちと私が同じ時代に、ともすれば隣合わせに暮している、ということがうまく飲み込めない。〈本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ。〉
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感想/レビュークニーガさん       from bookmeter

ああ、自由に本を手に取り読むことのできる幸せ。昨年3か月のブラジル滞在後緊張感無しで毎日を送れる治安のよさにしばらくしみじみしたものだが…いまだに本ではなく銃を手に生きねばならない子供たちもいる。世界中からの観光客がのどかに歩くのを見るにつけ、日本は平和で少なくともこれを守らなければならないと感じる。(相変わらずうまく表現できないことにいらだちつつ)
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感想/レビューこたろうさん  ブクレポから   (男性 三重県)   ★★★★

アウシュビッツにあった実在の秘密の図書館の物語

実話をもとに書かれた物語だそうです。
内容紹介にあるようにぼろぼろになった八冊きりの蔵書を大切に秘密に守っている図書館がありました。その図書係、人に知られず運び、持ち帰り隠す、そんな役割を引き受けた少女ディタ。
大きな服の(アウシュビッツで丈の合った服など手に入らないのを逆手にとって)内側に本が収められる秘密のポケットを二つ作ってもらい、仕事に励むディタ。
けれどその間にも、別棟で別れて暮らす父は風邪に侵され何の手当も受けられず、朝起きてみると亡くなっていて、遺体に会うこともできず(朝一番で運び出されてしまうから)そんな悲劇が秘密裏に合理的に、効率よく運営
され、何千、何万という無辜のユダヤ人たちが「処理」されていくのでした。

その図書館にあったのは地図とH・Gウエルズの「世界史概観」幾何学の基礎、ロシア語文法、フロイトの「精神分析入門」そして「兵士シュベイクの冒険」などでした。その外には「生きた本」と称して記憶に残っている物語「ニルスの冒険」などを語ってくれる人々が六冊、だけなのでした。

腹の足しにもならない,ボロボロのわずかの本が極限におかれた人々や子供たちをいかに勇気づけて、意欲をもたらすのか、物語の優位性というか真の有効性が歴史的に証明された感があります。

ただ様々な立場で、生き残ることを、そんな遠大な目標ではなくても今食べるものを手に入れるために大切なものを捨て、裏切ってしまうそんな人間性がむごいまでに描かれていきます。
SSつまりナチスの親衛隊やその手下たち、あるいは秘密裏にナチスに協力して生き延びることを選んだ人びと、そんな姿をディタは曇りのない、残酷なまでのまなざしで見つめます。

じつはフレディ・ヒルシュという実在のドイツ生まれのスポーツ振興の組織に身を置いてその後アウシュビッツに収容され秘密の図書館を作り上げた人物は裏切り者だと思われていたそうで、薬を飲んで自殺したそうなのですが、じつは故意に薬を盛られて殺されたのではないかと史実を調べながら作者は訴えています。

ただ、様々な語りたいこと、深い背景と人間関係を丸ごと描こうとしたせいでしょうか、けして読みやすいとは言えない一冊でした。そして人間がなせる限界とも思える残酷さがその読みにくさに一役買っています。

ディタは戦後生き延びてイスラエルに渡り、作者とも実際にあって語ってくれたそうです。
ディタが図書係として生き延びていた日々のすぐそばでチフスに罹って亡くなった少女アンネ・フランクとその姉が命を終えています。

個人的には実話を基にしたとはいえ、フィクションではなくノンフィクションで書かれたほうが、重みもインパクトも増したのではないかなと、そう感じました。
いろいろな意味で重い一冊でした。
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感想/レビューnekotomasakoto      from blog    (女性)

お盆休み中は、図書館で本を借りるのもお休みして、

自分で購入したこの本だけを読んでいました。
この『ディタ』は、実在の人物で、現在もイスラエルにて存命。
著者は、偶然のつながりから彼女と知り合い、
『アウシュヴィッツ強制収容所』を共に訪れる経験を得る。
そして、小説という形式ではあるものの、
彼女の経験をもとに、これを書き上げた。

本を読むことや物語を想うことは、どんなに過酷な状況にあろうとも、
常に心は自由で、あらゆる世界へはばたけるのだと、
信じることができる一冊です。
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余談ですが、本書の中には、『ディタ』が
『アウシュヴィッツ強制収容所』へ来る前に読んだ本も出てくるのですが、
中に、トーマス・マンの『魔の山』が出てきます。
これはとにかく長い小説で、わたしが読み終わった時は、
現代と状況が違いすぎるし、別に読まなくてもよかったかな・・・
とか思ったのですが(コラ)、
『ディタ』が、度々この本のストーリーを思い出すシーンでは、
(国際サナトリウム『ベルクホープ』と『アウシュヴィッツ』を比較したり、
登場人物『ハンス・カストルプ』に思いを馳せたり)
内容が分かっているだけに、彼女の心情がよく理解できました。
と、こんなところで、この読書経験が役に立つとはね・・・・・。
なんでもとりあえず、読んでおくものですね・・・(笑)。
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感想/レビューTonaeさん     ツイッターから 感想/レビュー

『アウシュヴィッツの図書係』読破。偉そうでゴメンだが、良い意味で「巧く描かれているフィクション」だと思う。実話をベースにしたフィクションだが、視点が多様=登場人物も多様、である点がそう思えた。また「本を読むこと」という著者のテーマが強く生きている。ナチス初めての方でも読めると思う。

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感想/レビュールナティックさん      from bookmeter (女性)

実体験に基づいたフィクション。多分、初めてナチスの蛮行を読む人には向いている。それは主人公ディタをはじめ、人物の心理を底の底まで掘り下げていないからだと思う。多分掘り下げる意図もなかったのだろう(と思う)この作品は、「本を読むこと」が人にどれだけ多大なモノをもたらすのか、と何度も表現を変え繰り返し描写している。これが著者のテーマだと思っている。だからといって生温い訳ではない。戦時下、それの人間扱いされない被収容者が「本を読む=思考する」ことが、どういうことかを述べているのだから。

人間が思考を巡らすことは、多くの意味があろうが、アウシュヴィッツでは、「人間であること。明日を考える力があること」を意味すると思う。だからこそ、ナチス他多くの占領者は、本を排除しインテリ層を攻撃するのだ。この部分を主テーマとしている点が素晴らしい。また収容所内のレジスタンス活動(チェコからの移送者)が記述されている点も、私的に良かった。若者の淡い恋愛部分は・・・私は現実を見せ付ける残酷描写だと思っている。良い本です。
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感想/レビューケンタさん         from bookmeter     (女性 sasayamaさん)

アウシュヴィッツの強制収容所で、ひそかに集められた8冊の本を命がけで守った図書係の少女の物語。実在の人物をモデルにしているだけに、その過酷な経験がリアルに伝わってくる。もう一度、自由に本が読めるということについて、図書館の役割について、じっくり考えてみたい。
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感想/レビューno_koさん         ツイッターから 感想/レビュー     (宮崎県)

アントニオ・G・イトゥルベ著「アウシュヴィッツの図書係」読了。ここではないどこかへ連れ出してくれる本の尊さ。その本を命がけで守る勇気と強さ。死と隣りあわせで生きる人々の姿に胸を打たれ言葉が出ない。一方でアウシュヴィッツ本来の描写に分かっていても気持ちが沈む読書でもありました。
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感想/レビューすずむしさん       from bookmeter     (女性)

絶望的な状況の中で、本がどれだけ心の支えになっていたか。本が持つエネルギー、物語が持つパワーに震えました。収容所の描写は頁をめくるごとに酷くなってきて、読み進めるのが辛かったです。読み聞かせや、物語を読むことは、人として生きるうえで、大切な心の栄養になるんだな、と改めて思いました。それにしても、こんなことが本当にあったなんて、酷すぎる………。
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感想/レビューおったまげた光子さん        from bookmeter     (女性     富山県)

実在の人物をモデルにして書かれた本でズッシリと胸に響きました。アウシュビッツ強制収容所で、決して発覚してはいけない本を命がけで守り抜いた少女、一冊の本が如何に生きる力になったのか、今自由に本を読めることの幸せをかみしめたいと思います。
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感想/レビュー楢岡陶苑アレコレ             blog       (秋田県)

8月は暑さ厳しい毎日でしたが、読んだ本の中に印象深いモノが数冊あったのでご紹介します。
8月前半は原爆の日や終戦記念日のこともあり、今年はホロコースト関係の本を数冊読みました。その中でも印象深かったのが「アウシュビッツの図書係」。図書館の新着コーナーでみつけました。
実話をもとにした小説で、アウシュビッツ強制収容所の中で、命がけで隠し持たれていた8冊の本と生きている本(語れる話を持つ人間)で、ひっそり運営された図書館活動と収容されたユダヤ人の毎日を描いたもの。命を養うためにはパンを、人間性を養い保つには本と教育を、が根幹にずっとあったように思います。本と読書が平和な日常生活を象徴するものであることに東日本震災で読み継がれた本や、久しぶりの開店を決めた書店の前に並ぶ人々の姿を思い出しました。読みたい本を読める毎日に感謝せねば。
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感想/レビュー都忘れさん          from bookmeter     (女性   宮城県)

想像通りの辛い内容で読み進めるのに時間がかかった。過酷な状況が続く中で、奇跡の様に自分を失わずに生き抜いた少女の姿に頭が下がる。唯一の救いはこの少女が生き抜いてくれたこと。平和のありがたみ、自由に本を読めることにしみじみと感謝。この本の前に「戦地の図書館」を読んだばかりだったので、解放後、少女が「兵隊文庫」と思しき本と接するあたりなど内容的にリンクすることもあった。
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感想/レビューMOTOさん          from bookmeter   (女性)

せっかく煌く命を得て生まれてきたのに、強い権力を握る独裁者の一言で、罪も無い善人達の人格はゴミと化す。そんな地獄の様な環境で生きる彼らが自ら生み出す希望の光。独裁者さえも彼らにソレを与えるのを怖れていた最強の武器が<本>だった。 本は読む者に思想を与える。知恵をもたらす。思慮は絶望の暗雲を散らし、光をもたらす。アウシュビッツにあった古い8冊の本を守り、皆の目に触れさせたいと頑張った幼い図書係りさんの物語。
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感想/レビュー気分はいつも、私次第さん     ブログから    (女性)

本書の冒頭に、2つの文章が紹介されている。その1つが、これだ。

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・・・・アウシュヴィッツ=ビルケナウ絶滅収容所 ― の三十一号棟。
そのバラックができてから閉鎖されるまでの間、
ユダヤ人の子ども五百人が、<顧問>に任命された囚人たちとそこで過ごした。
そして、誰もが予期していなかったことだが、
厳しい監視下にあったにもかかわらず、そこには秘密の図書館があった。
H・G・ウェルズの「世界史概観」、ロシア語の教科書、解析幾何学の本など、
たった八冊しかないとても小さな図書館だった。  

・・・・・一日の終わり、薬や何がしかの食糧といった貴重品と一緒に、
本は一人の年長の女の子に託された、
彼女の仕事はそれらの本を毎晩違う場所に隠すことだった。

            アルベルト・マングェル著『図書館 愛書家の楽園』

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著者イトゥルベは、このマングェルの言葉をきっかけに
アウシュヴィッツの小さな図書館を追うことになったという。

主人公は、図書係の少女ディタ。
両親と共に、チェコから移送されて来た少女だ。

そして、この本は、フィクションである。
ディタのモデルとなった女性の実体験がベースとなっている、フィクション。
この女性=ディタ・ポラホヴァー(旧姓)は
実際にビルケナウの図書係であったのだと・・・この時点で「ホェ~」な私(おっと脱線)

私は、戦争に関するものは、主にノン・フィクションを手にします。
本も映像も・・・
勿論、時々良質なフィクション作品もあり、
それは見たり読んだり、しますね。
小説では『サラの鍵』(タチアナ・ド ロネ)
『密告』(ピエール・アスリーヌ)等々である。
『密告』は、非常に重い事実を知ってしまった著者が苦悩し
「ノン・フィクションで描くことに躊躇(葛藤)があるのならば
 フィクションという姿で、描いてはどうだろう」と助言され、また考え
フィクションという形で出版されたということで・・・重い重い・・・でも見事!です。

今回読んだ『アウシュヴィッツの図書係』は、
ノン・フィクションだからこそ読み取れる現実の色合いは薄れるが
その分、視点が多様となり・・・・
ある意味、読みやすい(と言っていいのか?)本になっていると思う。

嫌な言い方をしますが(ごめんなさい)
感動させる場面は、ちゃんと読者が感動するようになっているのだが
その感動の「裏」にある現実を、しっかり加えている。

ここ、重要ポイント!ですわ(キッパリ)

私も、ホロコースト関連の生還者の方々のフィクション本は
多数読んでいますが・・・・
正直に申し上げますと、視点は、著者ひとり、になる。
当たり前ですね。著者の経験や見聞、が視点になるのですから。

だから・・・例えばAという事件があった、とすると・・・・
Aについて著者の考えは読める。
でも、それは公正とは言えない。また事実とも言えない。
そうですよね?
あぁ、私は、コレまで読んだ本の著者の方々を疑う訳ではありません。

ただ、著者の視点の文章である、ということを言いたいのです。
Aが起こった時の著者の考えや反応。
また、数年後。本を描こうとした時には、また異なる反応があるでしょうね。
Aについて、様々なことを知った数年後は、当然異なる見解がある。

それは、当然のことです。

しかし、フィクションは・・・そういう点は、著者に一任されている。
著者が、まぁ事実をどう捉えているか、が焦点なんですがね。
登場人物を多様化することで、視点も多様化できる。

私はこの『アウシュヴィッツの図書係』で、その巧さに唸ってしまった(ホント)
主人公の図書係のディタは、意欲に満ちた女の子。
そのエネルギーは、好奇心になり、様々な思いがわきあがってくる。

しかし・・・申し訳ないが、ディタの心情を深く深く・・・という記述にはなっていない。
ディタは、主人公であり、最も登場する。
様々な人と接触し、その都度思いを巡らす。
しかし・・・奥底の心情まで描いてはいないように思う。

例えば、父親、その後の母親の死に関しては・・・
正直「エッ?」と思うほど、心情描写が薄い・・・と思った。
いやいや、長々と泣き言を言えば良い訳ではない。
しかし・・・私が読んで来たものに比べると・・・アッサリすぎじゃないのか?と思った。

この父親の死の部分を読んだ時・・・
「ディタは主人公だが
 著者は、ディタ自身を最も描こうとはしてないのかも?」と思えた。

ディタは図書係だ。名誉ある仕事。
三十一号棟を作ったヒルシュが、兵士の仕事だと言ってくれた仕事だ。
本を持っている、ことが見つかったら、間違いなく殺されるだろう。
それでもディタは、必死に本を守る。
ブカブカの服の裏側に、秘密のポケットを作ってもらい
移動する時には、そこに本を入れれば・・・気をつけ!の姿勢も大丈夫だ。

ディタが命を懸けて守る本。

本を読むこと・・・これが、この作品のテーマだと思っている。

ディタは言う。
本を読んでいる時は、心が自由である、と。
間違いなく自分は地獄の中にいる。
しかし、本を読んでいる間は・・・・誰にもこの自由を邪魔されない。
世界中、何処にでも行けるのだから、と。

このディタの心は、姿かたちを変え、何度も登場します。
作品の中では、生きている本=朗読する人、の存在も描かれています。
子ども達は、何度も何度も聞いた本の朗読を
初めて聞くかのように、真剣な眼差しで朗読者を見つめる・・・

ディタ自身も、自由な時代に読んだ本を、何度も何度も思い出し、
時には懐かしみ、時には境遇を共有し、生きる力にしているように思えます。

三十一号棟に・・・・選別の嵐が。
早く移送された子ども達は、選別の対象となり、殆どの子供たちが・・・・

その後、残された職員たちは無力さを思い知らされる。
どうせ、死ぬ運命なのだ・・・
今更、子ども達に、勉強させたり、本を読ませたり、絵を描かせたり、
もう少し我慢すれば、自由になって・・・なんて話すことは、無為意味なのでは?
この現実を教え込み、生きる術を見に付けさせる方が・・・・

しかし・・・・死んでいった子ども達は・・・・ここでは楽しそうだったのでは?
ここでは、限られているが笑って、喋って・・・ここだけでは子ども、だったのでは?
どうせ、死ぬ運命なのなら・・・
ほんの少しの間でも、笑って明日を話せる場を作ってやってもいいのでは?

・・・・こういう会話は・・・フィクションならでは、という気がしました。
どう言えばいいのか・・・
私の印象では、俯瞰視点だなぁって気がしています。
ノン・フィクションでは、ちょっと難しいような?

この作品では、この俯瞰視点は、私の中では良い方向に作用しています。
だから、読み進めるのでしょうが(生意気言って、ごめんなさい)

また、本を読む、という行為が、人に与える無限の可能性についても
何度も言及しています。
主に、ディタを通してですが。
こう考えると、ディタは、主人公であるが、
著者の代弁者でもあり、と言えるかもです。
まぁ、この辺が、フィクションの醍醐味、と言えばそうなんですけどね。

また、淡い恋の描写も、巧い、と思わせた部分です。
2組のカップルが登場します。
どちらの少女も、ディタと同じような女の子。

ルディとアリス どちらもユダヤ人
ルディは、ロシア語とポーランド語を話し、ドイツ語も少し話せる。
仕事は、登録係で、収容所への新たな入所者のリストを作成している。
語学力のため、SS(親衛隊)にも重宝がられている。
その立場と人間関係のため、何か便宜を図れる立場にいる。
出会って恋をしたアリスに、何とか気に入ってもらおうと
食べ物をプレゼントする・・・が、アリスは食べない。
ルディも、SSに重宝がられているとはいえ、気が変われば一瞬で殺される。
自分を羨む敵も多い・・・
ルディでも、食べ物を調達するのは、困難を極める。
やせ細ってガリガリのアリスを何とか・・・と思って行動。
しかし、アリスは、そんなルディの苦労の品を・・・交換してしまう。
今、アリスの髪を飾るカチューシャと。
ルディは理解できない。そんな、腹の足しにならないようなモノに・・・
しかし、アリスは、ルディこそ、何も分かっていないと思う。
アリスは17歳だ。ここアウシュヴィッツでは、どうでもいことだろうが。
しかし、自分の人生で17歳の青春は、今一度限りなのだ。
ほんの少し、髪を整え綺麗に見られたい・・・そう思うと束の間だが幸せになれる。
その思いが、アリスの心の栄養となるのだ・・・

もうひとつのカップル ヴィクトルとレネー
ヴィクトルは若いSSの監視員だ。そしてレネーは、ユダヤ人の少女。
自分をジロジロ見て、いつの間にか傍にいるヴィクトルに恐怖を抱くレネー。
SSに目を付けられたのか?身体が目的なのか?
もしそうだとしても・・・逆らえるのか?
恐怖に震えるレネーに、ヴィクトルは「友達になりたい」と。
そしてプレゼントと言って・・・小さなオルゴールを手渡す。
それを見てレネーは・・・「これ、食べれないわ」と。
その言葉を聞いて、ヴィクトルは打ちのめされてしまう。
自分の現実認識の甘さ。
そして、職務だと行なってきたことの、無惨さ非道さを。

この2組のカップルの話は、その後の続くのですが・・・
メインではなく、さり気なく挿入されています。
その別れ方も、酷いものですが(スマンです)
でも、こういうことは、本当にあったのかも、ですが
これほど、それぞれの心情を語れることはできないでしょう、ノン・フィクションでは。
これは、フィクションの素晴らしさ、と言い切っていいと思う。

短いやり取り、そして心情が
眼を背けたい程鮮やかに、アウシュヴィッツ=ビルケナウ、を描写しているから。

と言いつつ・・・これは、ちょっと・・・と思う部分もありますよ。
今思いつくのは・・・
皆の間で人望の厚い男性のスパイ行為を見てしまい
大勢の前で、その男性を「スパイだ」と糾弾するディタですが・・・
本当にあったのだろう、とは思うのですが・・・
本に描かれているように、そんな皆が、ササッと信じるかナァ~って思うよ。
少女が、人望厚い男性を糾弾する・・・
弁護士であったディタの父親の加勢もあったとはいえ、
ちょっと・・・・出来過ぎでしょ?と思いました。

もし、この糾弾が成功したのならば・・・
もっと周囲とのイザコザがあったと思うのだがネェ(ウンウン)

また、ディタの母親の言葉なのですが・・・
脱走が起こり、それについて女性達が意見交換する場面です。
どうせ捕まるのに、無駄なことを。
脱走すれば、残っている我々にとばっちりが来る・・・迷惑なことだ、と。
しかし、ディタの母親は(日頃は無口だということだが)
自分達が大人しく従っていない、という証になる。
それに、捜索する人手が必要となり、ドイツ軍の戦力分散にもなる。
また・・・自分にはその勇気は無いが
勇気ある行動を行なった人を尊敬する、と。

う~ん、これは確かに、こういう論争があっても違和感はない。
そう思います。実際、こういう論争があったのでしょう。
ただ・・・いや、ディタ母親、いきなり、なので・・・
エェ???と、ちょっとビックリ、でした。

ディタが、母親は昔どおり、しっかりしている、と思う場面なのですが
(夫(ディタの父親)は死去していることもあり)
でも、いきなり感は拭えません・・・・ですわ。

そして、この作品の見所!としてるのは・・・
三十一号棟を作った、フレディ・ヒルシュ、のことです。
う~ん、日本では馴染みあるとは思えない人物ですが・・・
作品内では、ディタと同じ位の分量で語られていますね。
実在の人物です。

大規模な選別がある、との情報が飛び交う。
様々なことを経て、ヒルシュはレジスタンス達に号令する任務が与えられる。
収容所内では、数々のレジスタンス活動があり、グループに分かれている。
それぞれの主義主張があり、一枚岩とはいかない。
しかし、今選別により、多くの同胞が間違いなく殺される。
その前に、叛乱を起こせば・・・成功はしないだろうが
その中の・・・何人か・・・何十人か・・・何百人か・・・は脱走できるかも。
その可能性を信じて・・・
今、各グループに号令をかけ、決起を促すべきでは!!

ヒルシュは、少し考えさせて欲しいと、自室に。
そして・・・遺体となったヒルシュが発見される。
死因は、鎮痛剤の過量摂取。

・・・自殺では?ヒルシュは、土壇場で逃げたのでは?

この作品では、このヒルシュの自殺説についても、言及しています。
ヒルシュの自殺を信じられないディタが、
様々な人に話を聞こうと、走り回る・・・
その過程で、ヒルシュの姿も、再度見えてくるって構成かな(だと思うのだが)

ネットで説明文ありました(日本語じゃないよ)
ヒルシュの写真もありましたので・・・・気になる方は、どうぞ!

内容は、大体この作品に描かれているのと、同じかと・・・

その他、実在の人物も色々出てきます。
巻末に、その後、もあり、その辺は有り難い。興味あるから。

私的には、ペトル・ギンズについて書かれていたので、オッ!と思いましたわ。
あぁ、チェコからだから・・・と思いました。
巻末にも描かれていて、ホッとしましたよ(なぜ?笑)

彼については
『プラハ日記 アウシュヴィッツに消えたペトル少年の記録』(ハヴァ・プレスブルゲル)
があります・・・


何やら、文句めいたことも書きましたが・・・・良い本だと思います。
それ程、残酷描写はないですし・・・
そういう意味では、門戸が広い本、と言いましょうか?

・・・・いつも門戸の狭い本、ばかり読んでいるので・・・(笑)

もし、この記事読んで気になる方がいましたら・・・
まぁ、読んでも見てくださいよ、とお勧めします。
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感想/レビューatsukoさん          from bookmeter    (女性 高知県) 

本の力と尊さを、人間の強さと愚かしさをかみしめた。つらかったけど、読んでよかった。
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感想/レビューせらちゃん倶楽部HPから (北九州市議会議員 世良俊明さん)

この夏(2016年)の出版界で「本の力」を描く作品がもう一つ。 ナチスによる絶滅収容所という極限の地獄にあっても、本が与えてくれる「希望」や「生きる力」を、事実に基づいて描き出した『アウシュヴィッツの図書係』も、すばらしい作品でした。(アントニオ・G・イトゥルベ著、小原京子訳、集英社)
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感想/レビューあさみちゃんさん ★★★★ from booklog

ホロコーストものは重い、、。あまりに悲惨な場面の数々。目を背けたくなるような場面ばかりなのに、本の中の言葉が宝石のように現れて、いかに彼女の生きる支えになっていたかが分かる。好きなだけ本が読める今の時代にいきていられることを、喜ばずにいられない。そして本の言葉を通じて、ディタと繋がっているような錯覚を覚えた。

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感想/レビューbelleさん             from bookmeter     (女性)

題名通りの話。そしてその図書係は十代の少女。その彼女は辛い状況を生き抜き、母国チェコに戻り、やがてイスラエルの地へ。待っていてくれた友達。共に生きる伴侶。強制収容所の現実の長い描写の後に語られる最後の数ページが宝物のようだ。
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感想/レビューころりんぱさん         from bookmeter     (女性)

実在の人物をモデルにしたフィクションでした。アウシュビッツに秘密の学校があり、たった8冊の本を大事に大事に管理していた図書係の少女が体験した出来事の数々は凄惨です。そんな生き地獄の中で少女はいつもまっすぐに生き残る希望を絶やしません。ひどい毎日の中で命をつなぐのに精一杯…ゴミのように人間が殺されうち棄てられていく強制収容所での数年間、信頼できる大人や、かけがえのない友だちと育まれた関係があったことが、救いです。少女が中心ですが、アウシュビッツを空から眺めつつ、次々と個人にスポットが当たるような物語でした。
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感想/レビューテツさん             from bookmeter     (男性   東京都)

アウシュビッツの囚人たちのための秘密の本。たった8冊しかないそれを管理していた実在の少女をモデルとして描かれた物語。絶望と恐怖の最中でも本は読む人の知恵と意思を育て鍛える。そしてそれは収容所の中で奪い去られていた人間としての尊厳を、今日を生き明日を迎えようとする希望を目覚めさせる。自分自身は筋金入りのノンポリだけれど日々当たり前のように享受している読書という娯楽ですら味わえなくなるのは嫌だよな。戦後イスラエルに辿り着きようやく肩の荷が下りたその後の少女の人生を読み終えて安堵のあまり涙した。良書でした。
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感想/レビュー デビルポコさん        blog つぶやき館 から

[アウシュヴィツの図書係」、・・・「狂気のゲームに勝つのは誰?」

人類史上のワーストに位置しかねないナチスによるユダヤ人絶滅政策、ヒトラーのめいれにせよ、元を辿ればドイツ人に長く潜んでいたユダヤ人への偏見の
精神構造がナチスを介してとんでもない巨大な規模で噴出したわけである。第二次大戦勃発でユダヤ人たちはある楽観的な予測を持った。ナチスが本格的に戦争に忙殺されればユダヤ人迫害どころではなくなるかもしれないと、だがそれは見事に裏切られた、前線での激しさを増す戦闘にお構いなく貨物列車は多数のユダヤ人をドイツ敗戦の日まで絶滅収容所に運び続けた。あたかも、真の戦争の目的はユダヤ人絶滅で戦争はその時間稼ぎに過ぎないかのごとく。

 その狂気のユダヤ人絶滅政策、とりわけ最大規模、絶滅収容所の象徴的存在のアウシュヴィッツ収容所での惨劇は人類史上最大、最悪の汚点ともなった。

 そこに送られて生き抜いた一人の少女、・・・・・宇野和美さんのサイトによれば 『アルベルト・マンゲル「図書館 愛読者の楽園」の中に、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所の31号棟に秘密の図書館があり、そこにあった8冊の本の管理は一人の少女の任されていた』というくだりをスペインの作家・イトゥルベが注目し、その少女を調べていくうちにイスラエルで生きていた彼女と知り合い、インタビューによってこの本を書き上げた』(大意)とある。

 この図書係の少女は「テレジン収容所の小さな画家たち詩人たち」の中で紹介されいるディタ・クラウスである。

 当然ながら普通はアウシュヴィッツものは酸鼻と惨劇に満ちた、まことに悲劇性に満ち満ちているが、この「アウシュヴィッツの図書係」は、その惨劇の記述もあるが、明るい筆致でその点、救われた気持ちにさせられる。まさしく死を目の前にした限界状況、アウシュヴィッツはユダヤ人のための水道栓はたった一つしかなかった。食べ物もない、衛生面は最悪、・・・・・本も当然ない、・・・持っていたら見つかれば即刻死が待っている。だがその中でディタはダブダブの囚人服のポケット、秘密のポケットの中に本を入れて運んだのである。そこで強制収容所内でのユダヤ人運動のリーダーヒルシュに本に対する優れた感受性を認められる。

 図書館とはリーダーのヒルシュの作ったまさに秘密の図書館だった。その本の一冊は「兵士シュヴァイクの冒険」、・・・・イトゥルベという個性豊かなジャーナリストの筆になり、実話にもとづいている。ナチス親衛隊女性隊員の傲慢さ、他方で親衛隊男性隊員とユダヤ人少女との人目を忍んだ恋。とにかくディアタの明るい個性が横溢してして絶望的情強の中でも救われる思いがする。

 何をこの本から学ぶべきか、・・・・・・?ディタは自問するのである。

 「この狂気のゲームに勝つのは結局、誰なのだろうか?」

 狂気のゲームはただナチスノユダヤ人絶滅政策、絶滅収容所に限らないかもしれない。政府閣僚が、女子閣僚が嬉々として日本のネオナチをなのる男と記念撮影して何らはばからない、この日本のファシズム状況も狂気のゲームではないのか。さらにいえば人間は全て限界状況に置かれているのではないのか?

 限界状況に置かれた時に何が必要であったのか、・・・それは価値のある書物、それに対する心の感受性、精神性、・・・・・「アウシュヴィッツの図書館」が教えるものを深く心に刻んで考えていきたいと思う。

 「パレスチナの戻りたい」と念願するディタ、・・・・イスラエルの建国でその夢はかなった。
そこでの新たな紛争はこれまた課せられた多大きな宿題であろう。
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感想/レビュー吾天為(あてに)さん     blog 三線な日々 から

この「アウシュヴィッツの図書係」は、ユダヤ人であるがゆえにアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に送られた少女ディタ・クラウス(1929年生まれ)の実話をもとに書かれた小説である。

著者は、スペインのジャーナリストとしても活躍する作家のアントニオ・ G・ イトゥルベ。

あとがきで、著者が触れているが、このアウシュビッツの「図書館」を知るきっかけとそこで「図書係」をしていたディタとの出会いは、偶然のような必然だった。

小説とはいえ、そこに描かれた強制収容所の日常は、ほぼ事実で構成されているといっていい。

秘密の「図書館」にあった8冊の本とは、H・G・ウェルズ「世界史の概観」、ロシア語の教科書、解析幾何学の本、地図帳、フランスの小説、ロシア語の小説、
フロイトの「精神分析入門」、チェコ語の小説。

戦争のない平和な時代であれば、見向きもしないような本が、アウシュビッツでは、人々の心を癒す貴重なものだったのだ。

本が売れなくなった現代にあって、本の価値とは何かを考えさせてくれる貴重な本だと言えよう。
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感想/レビューふみさん            from bookmeter     (女性)

アウシュビッツの図書係をしていた本当に存在する女性の話です。図書係がどんなものか、以上にアウシュビッツの中でどんな暮らしがあり、どんな人がいたのかがわかりました。子供たちのために学校を運営していたという事実は初めて知りました。生きる本があればどんなところでも子供達に教育を届けることはできる。
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感想/レビューママの宅急便さん       from bookmeter     (女性)

アウシュヴィッツの本は何冊か読んだけど、タイトルに驚いてすぐ手に取った。図書室があったなんてまさか!その数、紙の本が八冊と『生きた本』が六冊。家族収容所の31号棟のみで開かれた秘密の図書室、利用できるのはごく限られた人達だけ。言語はフランス語ロシア語チェコ語。命がけの読書。愛しそうに本を優しく撫でるディタの姿は忘れられないだろう。
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感想/レビューうららんさん          from bookmeter     (女性)     

★★★★★
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感想/レビュー榎戸 誠さん          from Amazon    ★★★★★

『アウシュヴィッツの図書係』(アントニオ・G・イトゥルベ著、小原京子訳、集英社)からは、悲惨なホロコーストの非人間性と、本や読書がもたらす力がヴィヴィッドに伝わってくる。そして、人が勇敢であるとはどういうことかを考えさせてくれる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~中略
本の持つ力、読書がもたらす力が熱く語られる。「(独裁者たちは)誰もが本を徹底して迫害するのだ。本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ」。

「あの小説を思い出してディタは微笑んだ。あれ以来、本によって人生が何倍にも豊かになることを知った」。

ディタの蔵書の中の一冊で、ディタが大きな励ましを得た『兵士シュヴェイクの冒険』を無性に読みたくなってしまった。
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感想/レビューメルルさん               from bookmeter     (女性   東京)

これは実話をもとにしたフィクションだそう。アウシュヴィッツの秘密の学校にたった8冊の所蔵しかない秘密の図書館。その8冊の本を必死に守った図書係の少女が体験した物語。地獄の中で本を読んだり思い出し、現実から逃避行する。本の中ではいろんな世界に行ける。そんな気持ちは読書が好きな私から見ればとても共感できる。本はこうやって誰かのためになっている。彼女の諦めずに強く生きる姿が美しい。こんな世界は辛いが、それでも極限の中で生まれる友情や温かい気持ちが素敵だった。
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感想/レビュー羊さんさん                       from booklog    
★★★★

アウシュビッツ収容所で、赤十字の視察の眼を欺くために許されていた家族棟と学校。そこで、ナチスの眼を欺いて禁止されている本を図書館として隠していた。登録係の部屋に隠し、必要な時に必要な先生に本を届ける図書係。ディタは、自分から進んでその役を引き受けていた。ナチスに見つからないよう本を運ぶだけでなく、覚えているお話を子どもたちに話してあげられる人たちも、大事な「本」であった。「ニルスの不思議な旅」「モンテ・クリスト伯」などなど。
実際にいたアウシュビッツの図書係をモデルに、ディタとその家族や、同じ収容所の仲間たちの終戦・解放、そしてその後を描いている。

わかっていて読み始めたものの、辛く悲しい。人間の尊厳を考えさせられる。 --------------------------------------------------------------------------------
感想/レビューシュシュさん          from bookmeter     (女性   埼玉県)

これが実話であることに驚いている。人はすべてを奪われても、想像する力考える力は奪われないのだと思う。本というものの偉大さを改めて感じた。家族収容所内の子どもの学校の先生たち、リーダーのヒルシュ、図書係のディダ、すごいことをしたんだなあと思う。当人たちは自分にできることをしただけだと思っているかもしれないが…。ヒルシュがまるで物語のヒーローのように際立っていて、実在の青年とは思えないほどだった。間抜けのふりしてディダを助けてくれた老教師モルゲンシュタインが粋だった。子供に関わっている人に読んでほしい。

別のコメント> 実在の人物をよく調べてあり、読み応えがありました。おすすめです。
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感想/レビューtobenaitonbiさん       from booklog    
★★★★★     (女性)

すごくグサと刺さる本。
幸せな少女時代を戦争に奪われ、本を読むのも不可能な場所で、たった8冊の本を守る図書係のディタという女の子の話。
本当に図書係はいたそうです。
1日1日を生きることすら必死な場所で、ナチスの目をかいくぐって本を守るのは、本当に命がけの作業。
それにアウシュヴィッツでの生活は本当に悲惨。
その後の収容所の生活はさらに悲惨。
本を読むことを禁止するのは、人々に考えるきっかけを与えること。だからナチスは禁止した。
今の私たちは好きなだけ本を読めるけど、彼女にとっては生きる希望そのもの。
そして、随所に書かれている現実のアウシュヴィッツでの暮らしは戦争を考えるきっかけにもなった。
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感想/レビューBUNBUNさん         from booklog     ★★★★     (神奈川県)

今年2月にアウシュヴィッツを訪ねましたが、このような図書館があったなんて聞きませんでした。
旅の記憶を重ね合わせて読みました。
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感想/レビューa-featherさん                  from booklog      
★★★★★

実話にフィクションで肉付けをしたという小説

アウシュビッツ収容所にたった8冊の本を隠し持つ図書館があり、ディダはその図書館の図書係として命懸けで本を守る。
本を読む事を禁じたナチスは、ユダヤ人に「考えること」を許さなかった。

赤十字の視察に備えて子どもを楽しませる小さな学校が作られ、その中に秘密の図書館があった。
紙の本だけでなく、本の内容を話すことができる「生きた本」という人々の話にもみんな夢中になった。

あまりに酷い収容所の現実。いつガス室送りになるか分からない毎日の中で、現実を忘れさせてくれる本の存在は小さくなかった。

そんな中でも、子供たちに教育をしようとした人物や、収容所の実態を告発しようとした人物もいた。

読むのが辛かったが、読んで良かった一冊
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感想/レビューほんばこやさん

『アウシュヴィッツの図書係』(アントニオ・G・イトゥルベ著、小原京子訳、集英社)からは、悲惨なホロコーストの非人間性と、本や読書がもたらす力がヴィヴィッドに伝わってくる。そして、人が勇敢であるとはどういうことかを考えさせてくれる。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本の持つ力、読書がもたらす力が熱く語られる。「(独裁者たちは)誰もが本を徹底して迫害するのだ。本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ」。
「あの小説を思い出してディタは微笑んだ。あれ以来、本によって人生が何倍にも豊かになることを知った」。
ディタが預かっている本の中の一冊で、ディタが大きな励ましを得た『兵士シュヴェイクの冒険』を無性に読みたくなってしまった。
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感想/レビュー赤木かん子さん (児童文学評論家)      HPのおすすめ本コーナーから

戦地の図書館 と アウシュヴィッツの図書係
1)戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)
著:モリー・グプティル・マニング
翻訳:松尾 恭子

2)アウシュヴィッツの図書係
著:アントニオ G イトゥルベ
翻訳:小原 京子

今日は二冊。
学校図書館ではなくて、本と
図書館に興味のある大人のための本です。
暗いので、読みたくない人は読まなくてもいいよ。
でも、こういうこともあったのでしょう。
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感想/レビューWakiP(Swing)さん      ツイッターから 感想/レビュー
    
『アウシュヴィッツの図書係』読了。
アウシュヴィッツのユダヤ人強制収容所に実在した、蔵書が8冊だけの図書館。
14歳のユダヤ人少女ディタは、死の影が漂う収容所で自分の服の秘密のポケットに本をしまいユダヤ人達へ運んでいく……
事実を元に実在の人物も多く登場する、素晴らしい本でした。

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感想/レビューひとみさん           from bookmeter     (女性 広島県)

アウシュヴィッツに実在した子供の学校の中にあったたった8冊の本を命がけで管理した図書係の少女や、全力で子供達を守った学校の青年など本当にあったことを物語にした小説。ジャーナリストの作者らしく綿密な取材を伺わせる箇所は興味深く読めるのだけど物語の箇所になるとどうも平凡になる。ノンフィクションタッチのエピローグが一番良かったが、フィクションという形式をとったのはその方がディタ達のことが困難な境遇にいるかもしれない読者の胸に届きやすくなるという判断があったのかもしれない。ディタ達が物語に救われたように。
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感想/レビュータカラ~ムさん             ガタガタ書評ブログから   
★★★★★  (男性  東京湾岸勤)

【書評】アントニオ・G・イトゥルベ「アウシュヴィッツの図書係」(集英社)ー《アウシュヴィッツ》という絶望の中で、《本》という希望を守り続けた図書係の少女

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所という場所と、そこで行われていた残虐非道な行為と囚われたユダヤ人たちの絶望の日々については、改めてここで説明する必要はないと思う。毎日、誰かが命を失う。残された人たちは常に「次は自分」という恐怖と絶望に苛まれ、誰もが生きる希望を失っていく。

アントニオ・G・イトゥルベ「アウシュヴィッツの図書係」は、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に収容されていた実在の少女ディタ・クラウスの収容所における実際の経験をベースにしたフィクションである。
 
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のBⅡb区画三十一号棟は、子ども専用バロックである。エディタ・アドレロヴァ(ディタ)は、その三十一号棟の図書係だ。
ナチスは、収容所での教育行為を許していない。三十一号棟で行われている子どもたちへの教育は、ナチスの監視の目を避けて秘かに行われている。ブロック古参のフレディ・ヒルシュをはじめ、経験と知見を有する大人たちが子どもたちを相手に勉強を教えていた。
ディタが与えられた仕事は、三十一号棟にある8冊の本を管理する図書係としての役割だった。ディタは、8冊の本をナチスの目から隠し、先生たちに貸し出し、必要な修繕を行う。絶望しか存在しないアウシュヴィッツで図書係の仕事だけが彼女の生きがいとなっていく。
三十一号棟の物語と並行して描かれるアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の日常は悲惨だ。満足な食事も与えられず弱った身体でユダヤ人たちは強制労働に従事させられる。毎日のように力尽きて倒れ息絶える囚人があり、弱者としてガス室に送られる老人や女、子どもがある。それでも、ディタや他のユダヤ人たちは懸命に生きようとする。いつか、ここを出て自由になれることを夢見ている。それが、叶わない夢としても。
アウシュヴィッツという絶望の中で、ディタたちが希望を失わずにいられたのは、本を読むこと、物語を語り合い想像の世界に我が身と心を委ねることができたからだ。それでも、数年に及ぶ最悪の収容所生活による身体的ダメージとと、そして共に収容されていた家族や友人、仲間たちの死やナチスのよってもたらされる恐怖という精神的ダメージは彼らを確実に蝕んでいく。
長い収容所生活の間に、ディタは父親を亡くし、彼女を図書係に任命してくれたフレディ・ヒルシュを亡くし、多くの友人、仲間を亡くす。
戦争が終わり、ようやく自由を得たディタだったが、喜びもつかの間、母親が病に倒れる。彼女の命の炎が消えていこうとしている中、母親の看病に明け暮れるディタは、フランシスという青年看護師が小説を読んでいる姿を目に止める。彼女は、彼の読んでいる本の表紙を眺め、近づいて愛おしむように本の表紙に触れる。困惑するフランシスに、ディタは身振りで本を貸してほしいとお願いする。フランシスはにっこりと微笑み、2冊の本を彼女に手渡す。ディタは嬉しそうにその場を離れようとする。

「ねえ、君、その本、英語だよ!」そして、片言のドイツ語で言いなおす。
 ディタは振り返って笑顔を向けるが、立ち止まることはない。英語なのも、自分には読めないのもわかっている。でもかまわない。母さんが眠っている間、空きベッドに座って本の匂いを嗅ぎ、ページをぱらぱらめくって紙の音を楽しむのだ。背表紙をもう一度撫でて、表紙の糊付けの厚みを感じる。そこに書いてある作者の英語の名前もエキゾチックだ。再び本を手に取ると、人生がまた始まるような気がする。誰かが蹴散らしたジグソーパズルのピースが少しずつ元に戻る。

この場面、本が好きな人なら胸を締め付けられるほどに共感できるのではないだろうか。ディタにとって本は希望だ。収容所でのつらい日々にささやかな希望を与えてくれたのも本だった。弱りゆく母の枕元で懸命に祈りを捧げる彼女に力を与えてくれるのも本なのだ。
本とは、私たちに、たくさんの夢や希望を与えてくれるものなのだ。本が、生きる希望を与え、将来の夢を与え、つらいことを忘れさせ、心の底からの笑顔を与えてくれる。
本書は、本の力を改めて教えてくれる作品だ。本書に登場する「兵士シュヴェイク」や「魔の山」、「モンテ=クリスト伯」を読んでみたくなる。本書に感動し共感するとともに、こうして好きな本を読める幸せと、まだまだ読みたい本がたくさんある喜びを実感することができた。まさに、本の力を再認識した作品だった
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感想/レビューぴゅりさん        from bookmeter      (女性   東京都)

私物の持ち込みどころかその日をどう生き延びるかという状態のアウシュビッツで、密かに回付され学習に使われていた数冊の本。見つからぬよう、希望者に届くよう、14歳のディタは図書係に任命され、その任務を誇りに日々を生き抜く。タフな物語ですが人の強さと弱さも描かれていて、読み応えあり。
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感想/レビューさぜんさん              from bookmeter (女性 東京都)

アウシュビッツに秘密の図書館があった。命がけで8冊の本を守った少女と収容所での出来事を事実を基に構成されフィクションで肉付けされた物語。収容所の悲劇は語り継がれているがここにいた人達の詳細までは伝わりきらない。絶望の中でも子供達に光を与た本の存在。人間が生きるのに必要なのはパンと水だけではないのだ。「本の力」「読書の素晴らしさ」を再認識する。絶滅収容所で多くの命が奪われる様は想像を絶するが人類が知るべき負の歴史。胸に重く圧し掛かるが 読むべき一冊。
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感想/レビューY2K☮さん         from bookmeter (東京都)

本の所持が禁じられたアウシュヴィッツで図書係を務めた少女の戦いの記録。実話に基づく記録文学であり、地獄の風景が惨過ぎてブラッドベリ「華氏451度」さえ色褪せる。「魔の山」や「モンテ・クリスト伯」が外への希望を繋ぎ、生きる力を呼び覚ます。極限状況においては誰でも水やパンが最優先。それでも本が無ければ犠牲者は更に増えていた。ナチスに屈せぬ前提だから子供達に字を教え、物語を読み聞かす。これも戦い。ディタ・クラウスと彼女を導いたフレディ・ヒルシュの名は生涯忘れない。「夜と霧」と共に永久に読み継がれるべき魂の一冊。 --------------------------------------------------------------------------------
感想/レビュー田中峰和さん   from bookmeter (男性 京都府)

図書係を拝命した14歳のディタにとって、8冊の本は命と等価のもの。乱雑に扱われれば、丁寧に修復し守り切る。アウシュヴィッツの学校を組織した青年ヒルシュはディタの憧れだったが、最初に夢を砕いたのは彼がゲイだったこと。次にショックを与えたのは、鎮静剤の大量摂取による死。責任を逃れての自殺など噂は彼の弱さに関わるものばかり。実話としてディタが生き残ることはわかっていても、ヒルシュの死因追及もありミステリーとしても読みごたえがある。双生児に変質的な処置をしたメンゲレが刑死ではなく、遊泳中の事故死というのが残念。--------------------------------------------------------------------------------
感想/レビューanne5shirleyさん   from booklog      (女性)   ★★★★★  

なんて重苦しく悲しい物語だろう❗しかし、こんなにも本の中の世界にのめり込んだのも久しぶりだった。私は主人公ディタと共にアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所に送られ、そこで何日も食事の出ない飢餓状態に置かれ、コレラやチフスの蔓延する地獄のような環境のなかで、明日への希望もない日々を送り、過酷な労働を強いられたのだ。
14歳の少女ディタは、収容所のブロックリーダーの青年フレディ ヒルシュから図書係に任命される。しかしその図書とはたった❗8冊の本❗すなわち地図帳、「幾何学の基礎」、H・G・ウェルズの「世界史概観」、「ロシア語文法」、フランス語で書かれた「モンテクリスト伯」、フロイトの「精神分析入門」、表紙のないロシア語の本、チェコ語で書かれた「兵士シュベイクの冒険」
たったこれだけの本でさえ、収容所の人たちにとっては、本を読むことが唯一の娯楽であり、つかの間現実を忘れられるひとときだったのだ。
この物語は事実に基づいており、ディタも実際にいたし、フレディヒルシュの自殺にも触れられている。
ディタが生き延びたことは読者にとっては、唯一の救いだ。

アウシュビッツ関連の本は一度は読んでおかないとと思っていたが、この本に出会えてよかったと思う。
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感想/レビューkaze229さん      from booklog      
 ★★★★★

「記憶は弱者にあり」
を改めて思い起こしました。

筆者がジャーナリストであったことが
大きく影響しているのでしょう
実際にアウシュビッツに行って、偶然に(必然に!)出遭うことになった一冊の本
ーこの小説のモデルになったホロコーストを生き延びることになっ一人の無名の作家がホロコーストの体験を基に書いた小説
から、すべてが始まっている。

もう、この出会いから すでに 物語が始まった。
といってもいいでしょう。

そのホロコースト博物館の売店では、事実を知らしめるための一冊の小説に過ぎなかったのでしょうが。こうして、素晴らしきジャーナリストの手に渡り、しかも一編の物語として編まれたときにまた新たな 歴史の証言者として生まれ変わった。

 実際の事実をもとに、優れた映画が生み出されることがままある。
その時に感じる深い衝撃と深い感動を覚えました。
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感想/レビューAmazon カスタマーさん No.2     from amazon    ★★★★★

     「アウシュビッツの図書係」の感想
ハァ~冷房がヒンヤリ!ズラーリと並べられた本が貯蔵されている図書館に出向き、何を読もうかなぁ~などと。何と!ここはシニア世代のオアシス化しとる!
時折、フワワ~とあくびをしながらも自由に、気ままに、いつでも知識を得られる安近短!

んん~「アウシュビッツの図書係」読みました。
本当に本当に恐ろしいことですね!!死体を燃料に昼夜焼却炉が稼働する湿気とカビの臭いがするバラック。恐怖の臭いがする命の破壊工場アウシュビッツ。
そんなアウシュビッツの中にある31号棟!これが「アウシュビッツの図書係」の舞台となるのです。
この本の冒頭にこう書かれています。「人の歴史において、貴族の特権や神の戒律や軍隊規則をふりかざす独裁者、暴君、抑制者たちにはアーリア人であれ黒人や東洋人、アラブ人やスラブ人、あるいはどんな肌の色のどんなイデオロギーの者であれ、みな共通点がある。誰もが本を徹底して迫害するのだ」

主人公となる14歳の少女ディタ。小さい頃、平和の毎日は、金曜日に一晩一晩コトコト煮込んだこってりしたチキンスープの香り。
それがいつしか、湿気とカビの臭いがするバラック、恐怖の臭いへと!
あのアウシュビッツ31号棟の図書係となり、禁じられた8冊の本を命を懸け管理するんですね。
そうそう彼女は、自分を解き放ち、想像力をかきたて、タイムトリップさえできる本の持つ力に、小さな時より魅了されていた女の子でした。その思いでアウシュビッツにいる子供達にもその思いを。と自ら図書係応募!!

人間が人間としての尊厳を失い、目の前から光が消えてゆく日々の中に繰り広げられる「本」というキーワードから息詰まる少女ディタの行動!高鳴る鼓動と息づかいに引き込まれて行きました!実話に基づいた本でしたので、なおさら入り込んで行きます。映画化してほしいですね。いやいや、あっという間に厚い本も読み終えてしまいました。

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感想/レビューdeerglove                from bookmeter     (男性)

自分とほぼ同世代のスペイン人が、アウシュビッツから生還した実在の人から話を聞いたという事実が驚き。本作はその事実に基づくフィクションということで、必ずしも劇的な展開があるわけではありませんが、細かいところのリアリティや、主人公以外の登場人物の存在感が素晴らしく、400ページ強の長さを感じさせません。とりわけ主人公のディタが『魔の山』のストーリーに自分を重ねたり、『兵士シュヴェイクの冒険』から生きるためのしたたかさを学んでいくところは環境が過酷なだけに強く胸を打ちます。
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感想/レビューしのぶさん      from bookmeter

書名に惹かれ、しかし過酷な話であるに違いないので二の足を踏んだのですが、それでもスルーすることはどうしても出来ずに読みました。この容赦ない物語が、実話をもとにしているなんてことが許されていいものか。人間はどこまでも残酷にもなれるし、卑劣にもなれる。だからこそ、人間をそんな風にしてしまう状況を生み出してはならない。今回そのこと以上に刺さったのが、収容所の現状を知らされても、信じることを拒否して移送しつづけた人々の存在。自分の過ちを否定するために、さらに罪を重ねていく。それこそが人間の弱さ、愚かさの極致。
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感想/レビューfwhd8325              from bookmeter   (男性)

歴史は、動かすことのできないものだが「もう少しでこの戦争が終わるから」と思いながら読み進める。過酷であるという表現では収まらない物語は、虚しさを勅感じさせる。解放されたときのシーンが描かれているが、現実は、まさしくこの光景だったのだと思うと、起きてしまった歴史とは言え、どうにもやるせない気持ちで一杯です。
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感想/レビューナオトさん       from bookmeter    (東京都)

実話を元にしたフィクションらしい。こんな現実がかつてあって、その地獄から生還した人がいる。毎日が死と隣り合わせの時間が永遠に続くかに思える。精神的な苦痛ははかりしれない。子どもには、思い出が大事だ。愛された記憶が大事だ。そして、本が、人間の尊厳を忘れないために、心を豊にするために本当に必要なのだと思う。この作品が事実を元にした小説であることに、ディタが、辛い時心の拠り所にしていた言葉だというのが、よく伝わってくる。フィクションで初めて明らかになる真実もあると思う。作家の想像力と創造力のなせる技だと思う。
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感想/レビューLanceさん      from bookmeter   (男性) 

私たちが知り得る史実の裏にはたくさんの事実が埋もれている。そしてその事実達は味気ない史実を鮮やかに色づけしてくれる。
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感想/レビューのぶさん        from bookmeter   (男性   愛知県)

優れた文芸作品だった。主人公ディタはアウシュヴィッツ収容所でわずか8冊の本を管理する少女。収容所での生活が図書係の話を交えて進行する。収容所の話は「ソフィーの選択」や「ライフ・イズ・ビューティフル」を思い浮かべたが、本作は第三者から見た視点で展開されるので、感傷的にならず幾分乾いた印象を受けた。実話がベースにあるようで、生きた人物が物のように扱われる悲惨さと、どんな状況に置かれても人は常に幸せを求めていることが感じられた。読後の感想は非常に重いものだった。
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感想/レビューblog 晴耕雨読 --- 時は過ぎゆく、されど、忘れ得ぬ... から     (男性)

この歴史を忘れない…  「アウシュヴィッツの図書係」
新聞でこの本を知り、その内容に興味を持ち読み始めていった… テーマ自体はたいへん重いものであったが、「一人の少女、しかも図書係」という目を通して、アウシュヴィッツでの歴史上の凄惨で残忍なことを伝えている。この手法は、これまでのこの種のテーマの切り口とはひと味違っていて良かった。しかも、実話である本書は、その説得力がある。静かな感動が読後にやってくる…  そう言う本と言えそうだ。
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感想/レビュー鯖さん         from bookmeter   (女性)

アウシュビッツでたった8冊の本からなる秘密の図書館で、図書係を務めるディタの物語。彼女は本によって救われたけれども、本があっても救われなかった人々もたくさんいるし、そんな生やさしいものではないのだけれど、それでも彼女に本があってよかったとしみじみ思う。ライフイズビューティフルで「1000点取ったら戦車で家に帰れる」と信じていた少年のジョズェを思い出した。希望があっても生き延びられない人のほうが多かっただろうけれど、希望がなければ生きていくことさえできなかったのだろうなと。
ラスト、アウシュビッツから解放され、列車の切符を求めて長蛇の列に並ぶディタが人々の不満を聞きながら、絶望しきって列に並ぶ収容所での人々よりもずっとイライラしていると微笑み、普通の生活に戻ったのだと実感するシーンがとても印象的だった。
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感想/レビューtsuki2bさん      from bookmeter   (男性 北海道)

アウシュヴィッツ強制収容所に作られた秘密の図書館の、図書係を務めた少女の物語。人間の尊厳を奪われた中で、何を糧に生きていくのか。明日をも知れぬ極限の状態で、彼女の強さが心に残る。図書係としての前半の話より、収容所を移されてからの困難、自由を得た際の放心、母の死が語れる後半の方が引きつけられたけれど。ところどころに収容所の人のエピソードが混じり、散漫と感じるところもある。実話を元にしていて、著者もジャーナリストなので、ドキュメンタリーでも良かったのでは。
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感想/レビュー佐伯@タウイ さん  ツイッターから 感想/レビュー

本編全体に漂う薄暗い気味の悪さや滔々と語られる本の魅力に夢中になって一息に読んだ。無神論で右でも左でもない人間としては思想の違いで対立とかよくわからない部分もあったし読了後の気持ち悪さもあるけどこの本を読んで少しだけでも知ることが出来てよかった。
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感想/レビューひじり☆ さん             from bookmeter    (女性  東京都)

新聞で紹介されてすぐ借りて読んだ。すごく読みやすく夢中で読んだ。フィクションだが、事実に基づき丁寧に作られたもので、下手なドキュメンタリーよりもグッと胸に迫る真実の重味が感じられた。たった8冊の図書館、想像を絶する収容所での学校…その意味を考える事が教育現場にいる私にとって、とても重要なんだと痛切に感じた。主人公の本によってどこにでも旅立てるというのはすごく共感できる。あの環境ならなおさら…
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感想/レビューKamomekoubouさん   ツイッターから 感想/レビュー

『アウシュヴィッツの図書係』は文中の視点が『ムシェ 小さな英雄の物語』と同じようによく変わるけど、ムシェの時に感じた時々唐突で引っかかる印象と比べて、流れがとてもスムーズ。同じ時代の戦争と、実話を基にしている点が共通している2冊。
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感想/レビューbokko_ringさん     ツイッターから 感想/レビュー  

アウシュヴィッツの図書係、読了。   胸が苦しい でもたくさんことを学ぶ。
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感想/レビューしおしお さん     from bookmeter   (女性  福岡県)

実話に基づいたフィクション。アウシュヴィッツにあった秘密の学校、そしてそこで8冊の本を守る図書係に指名された少女、ディタ。人が人として扱われず、死と常に隣り合わせという想像を絶するほどの過酷な収容所の中で、彼女たちは1日1日を生きる。いつとも知れない解放の日を目指して。本は空腹を満たすことも病を治すこともできないけれど、人としての尊厳を忘れさせないでくれる。その瞬間は苦しみから心だけでも逃れることができる。読んでいる間アウシュヴィッツの言葉にできない悲惨さが心に重くのしかかり、やりきれなさがつきまとった。
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感想/レビューゆりあす62さん    from bookmeter    (女性)

図書館本。
★★★★☆ テッダ14才、あのアウシュヴッツの中で何とか残った本八冊を守る図書係。毎日人が汽車で運ばれてきては「選別」というなのもとに分けられ消されていく。いつ自分が「選別」されるか判らない恐怖の中、彼女の心を救うのは幸せだった頃の思い出と、心を色んな場所に運んでくれる本たち。何の情報もなく読んだので、テッダが最後どうなるかも知らずに読んだのがかえって良かった。最後は本文の日付を見ながら、テッダに「もう少しでドイツが負ける、戦争が終わるよ」と思いながら、一気に読んだ。
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感想/レビューウチさん        ツイッターから 感想/レビュー     ( 男性 神奈川県)

『アウシュヴィッツの図書係』やっと読了。 長かったし重かった。 史実とフィクションの掛け合いが上手く、 もっともっと知らなくちゃと関心が湧いてきた、良作です。
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感想/レビューゆかーんさん         from bookmeter  (女性 東京都)

まるでドキュメンタリーを見ているような、詳細な文章でした。これは著者が、実際する主人公のディダ・クライスさんに取材を行い、それをもとに描いたフィクションです。小説でありながらも、登場する人の多くが、実在しているという事実に驚かされました。収容所の中で絶望的な生活の中、所持を禁止された8冊の本を管理する「図書係」に任命されたディタさん。彼女は本を守ることで、つらい生活にの中に生きる希望を見出してゆきます。本を守り、人を信じ、想像しうるあらゆる困難を乗り越えた、彼女の芯の強さに、読み終えた瞬間打ち震えました。

「事実は小説より奇なり」という言葉がありますが、小説とは思えない劣悪な生活状況に、読み進めることが辛くなるばかりでした。それでも、読み進められたのは、彼女が「本」という希望を胸に、正々堂々と生き抜いた記録がここに記されているからだと思います!
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感想/レビューおはなしの森さん   ツイッターから 感想/レビュー

アントニオ・G・イトゥルベ『アウシュヴィッツの図書係』小原京子 訳2016集英社 チェコスロバキア解体の日、9歳の少女、ディタの子ども時代は終わった。 14歳ディタはアウシュヴィッツにいた。 好奇心旺盛で、行動的、ユーモアを忘れず勇敢な少女。 違う舞台上で輝くディタを見たかった。
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感想/レビューpohcho                    blog  日日是好日~

アウシュビッツ収容所の中に子供達が暮らす棟があり、厳しい監視下にありながら、そこには秘密の図書館がありました。世界史の本や幾何学の本、ロシア語の教科書など、たった八冊だけの小さな図書館。一日の終わりに、本は図書係の少女の手に託されます。彼女の仕事は本を毎晩違う場所に隠すことでした。
実話を基にした小説。
重い話で前半はなかなか読みすすめられなかったのですが、途中からはリーダーの死や囚人やSSの脱走など劇的なエピソードがどんどん挿入され、一気に読めました。
絶望的な日々の中で、古ぼけた八冊の本がどれほど皆の心の支えとなったのか。
平時なら見向きもしないような本にどれだけ心癒され、励まされたのか。
棟が閉鎖されることになった日に、本に最後のお別れを告げる場面。
戦争が終わったのに、母が病に倒れ、理解できない外国語の本に触れて心を落ち着かせる場面。何度も泣きました。
心に迫る物語。本が好きな方に。おすすめです。
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感想/レビューgumi-gumiさん          from booklog   (女性)   ★★★★★

史上最悪の絶滅収容施設内にあった、蔵書8冊の小さな図書館。本を所持していることが見つかれば殺されるアウシュビッツで、図書係を務めた少女の物語。
実在の人物・出来事をもとにした小説。

タイトルとあらすじを見た瞬間、これは読まねば、と思った。
アウシュビッツの描写は当にこの世の地獄で、読むのがとても辛かった。
しかし、人間の残忍さがむき出しにされたアウシュビッツにも、ユーモアがあり、誇りがあり、希望があった。その中心にあったものが本だった。
本と想像力を愛する者として、読んで良かったと思う。
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感想/レビューフムさん        from bookmeter

アウシュヴィッツ強制収容所、1944年。人間の尊厳をこれほど残酷に踏みにじった同じ場所で、人として生きることへの誇りと希望を持ち続けた人達がいたことに深く感動した。子ども達に教育を施す、無邪気な子ども時代を守ろうとする大人たち。そして、そこにたった8冊の本がある。本は鉄条網も恐怖もなかった元の暮らしの象徴なのだ。死と隣り合わせの日々の支えとなる力が本にはあったと思うと本の存在がいとおしいだけでなく、なんだか厳かな気持ちになった。読んで良かった。本が好きな人にお薦めの本。
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感想/レビュー茶々吉さん      blog  茶々吉24時  

この夏、第二次世界大戦中の
ユダヤ人迫害について描かれた自伝的小説
エリ・ヴィーゼルの『夜』を読んだとき、
合わせて読まなくてはと思っていた
『アウシュビッツの図書係』を
ようやく読むことができました。
 
『夜』の主人公が少年だったのと反対に、
『アウシュビッツの図書係』の主人公は少女です。

1944年のアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所には

ナチス将校たちが知らない「学校」があった…。

 

ビルケナウ収容所には、

ユダヤ人迫害の事実を隠蔽するため、

特別な区域「家族収容所」が作られていた。

国際機関が査察に来た場合、見せるためのものだ。

通常、労働力にならない子どもは

早々にガス室送りなので、

収容所に多くの子どもがいるのは極めて珍しいことだった。

 

しかし、その特別区でさえ、

入所の際、所持品が没収されるため、

普通の生活なら当然あるべきものがほとんどない。

 

特に禁じられているのは書籍だが、

ここでのリーダー アルフレート・ヒルシュは、

苦心の末、8冊の本を入手していた。

『世界地図』や『モンテ・クリスト伯』、

パスツールを描いた『微生物の狩人』など

まちまちな分野の本。

それらをテキストに、

それぞれ知識のある大人が、授業をしていた。

また、本がなくても、自分が覚えている物語を

語って聞かせる「生きる本」ともいえる人もいた。

それがビルケナウ強制収容所の中の「学校」だった。

 

自分たちの故郷で幸せに暮らしていた頃、

好んで本を読んでいなかった子どもたちも、

ビルケナウに来てからは本が大好きになった。

また、勉強なんて嫌いだった子どもたちも、

ここビルケナウでは一生懸命に学んでいた。

本や勉強は、たとえひとときでも

現実の厳しさを忘れさせてくれるから。

世界の地理や生物の授業、語られる物語を聞いているうちは、

想像力を飛ばして、どこにでも行けるから。

 

チェコ出身のユダヤ人少女エディタ、

通称ディタは本が大好きだった。

だからこの「学校」で、

1日の終わりに大切な本を回収し、

床下に隠す任務の図書係を買って出た。

二度と入手できないであろう大切な本たちは、

すでにボロボロな状態。

それをなんとか修繕するのもディタの仕事だ。

しかし、気まぐれに行われるSSたちの検閲があり、

本を持っているところを見つかれば、

間違いなく処刑されるであろう、

命がけの仕事でもあった。

まだ14歳のディタにとって容易ではない仕事だったが、

彼女は決して役目を投げ出そうとはしない。

なぜなら「図書館は今や薬箱」だから。

そして

「もう二度と笑えないと思ったときに、

 ディタに笑いを取り戻させてくれたシロップを、

 ちょっぴり子どもたちの口に入れて」あげたかったから。

(かっこ部分は本文 P280より引用)
 

この小説は、1929年プラハ生まれのユダヤ人女性

ディタ・クラウスの実話をもとにして書かれています。

ディタとともに収容所で過ごした人物については、

仮名に変えているものもあります。

一方、ルドルフ・ヘス、アドルフ・アイヒマン、

ハンス・シュヴァルツフーバー、ヨーゼフ・メンゲレなど、

アウシュビッツに勤務していたナチスのSSたちは実名で、

その行いも非常に具体的に書かれています。

読んでいて息が詰まりそうになる箇所も多々あり。

しかし、ディタが物語の世界に羽を広げてくれるおかげで、

読者もなんとか救われて、次のページに進めるのです。

 

平和な現代日本においても、

読書は、現実から離れしばし夢を

(悪い夢の場合もあるけれど)

見るひとときをくれます。

ましてや、文字通り地獄のような生活の中では、

どれほどの力をくれたことでしょう。

 

ディタは過酷な収容所内でなんとか生き延び、

やはりアウシュビッツから生還した青年と結婚し、

80過ぎるまで生き、子や孫にも恵まれました。

だからこそ、後世の人間が、

かつてあったこの世の地獄を知ることができるのです。

また、そこから学ぶことができるのです。

 
もちろんディタの向こう側には、

生きたくても生きることができなかった、

多くの魂があることも忘れてはならないのだと、

『アウシュビッツの図書係』は教えてくれるのでした。

ちなみに、先に読んだ『夜』と『アウシュビッツの図書係』は

同じ境遇を描きながらも、

読者に与える重苦しさ、暗さが全然違います。

『アウシュビッツの図書係』は、

時々クスッと笑ってしまう箇所があるんです。

多分それは、主人公ディタの性格によるものだと思います。

もしどちらか一冊を…とおっしゃるなら、

『アウシュビッツの図書係』を読まれる方が、

精神的に苦しくないと思います。

おせっかいですが、ひとこと添えさせていただきました。
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感想/レビューようこさん        from bookmeter   (女性)

実際にあった話をもとにしたフィクション。生き地獄のようなアウシュビッツで、数冊の本の図書係の少女が読書によって生きがいを見いだす。実在する歴史的人物も登場し、その描かれ方も興味深い。アウシュビッツの話はいずれも悲惨で恐ろしい。




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感想/レビューちゃこさん        from bookmeter   (女性)

読み始めは重くて途中でやめようかと思ったけど、読まずにはいられなくて結局一気読み。ああいう時代が実際あったこと、忘れてはいけないなと思った。そしてそんな時代でも生きる希望を失わず一生懸命毎日を生きた人たちを尊敬する。今はたくさんの本で世の中はあふれているけど、本のもつ威力・素晴らしさを改めて考えさせられた。
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感想/レビューたたよんさん              from booklog     ★★★★★

図書館の予約待ち本。
本を読むことは生きること。人間性を否定され、死が日常化された世界の中でユダヤ人少女ディタが経験したこと。
字を追い、本を読むことがあたりまえにできることがいかに人として生きるために必要なのか、痛感する。
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感想/レビュー晴徨雨読さん    blog   (男性 京都府)

衝撃的な本は衝撃的な出合いをする。新聞の書評欄にこの本を見つけたときすぐに読んでみたいという気になったのだが、この本を買っても読了する自信は無かった。ユダヤ人強制収容所の悲惨な実態が終始書かれているというのである。わたしはこういった罪も無い人々が悲惨な境遇に合うのは大の苦手で、ましてや小さな女の子が体験するその描写にたえられるか自信が無かった。

 「アウシュヴィッツの図書係」アントニオ・G・イトゥルベ
集英社クリエイテブ 2016年7月初版 綾部市図書館借本

 タイトルルにあるようにディタという14才の少女は地獄のアウシュヴィッツの中で禁止されている本を毎日隠し場所から自分の服の内側に作った秘密のポケットに隠して、読みたい人のところへ配るという重大な仕事をこなしていたのである。つまり収容所の中に秘密の図書館があったわけだが、蔵書はたった8冊である。もちろん見つかればそこで生命が絶たれるという大変な任務である。
 この図書係はディタ・アドレロヴァというユダヤ人の実在の人物で、収容所での事実をもとに書かれた小説である。
アウシュビッツの中の悲惨な出来事というのはこの本の大部分を占めているのだが、書評ではそのことで読むことに二の足を踏む方がいるかもしれないと言っている。わたしも自信が無かったから図書館へ行ったのだ。綾部市の図書館で「この本を買って下さい」と館長に頼んだ、タイトルからしても図書館に置いておくのが最善だと思ったからだ。「それならありますよ、素晴らしい本なので購入したのですが誰も借り手が無くて先に読ませて頂きました。とても感動しました、読んでくれる方がいらして嬉しいです」とのこと、驚いたことだ。この7月に発行されたばかりで、さして有名になった本でも無いのに購入されていたのは館長の先見性だろうか。わたしは綾部市図書館がこの本を買っておられたことがとても嬉しい。
 館長は感動したと言われたが、わたしには感動というより考えさせられる本であった。
 アウシュヴィッツならずとも軍事政権下では出版物は厳しく取り締まられた。日本でも多くの本が発禁となったし、例え発行されても黒塗りで意味をなさない文章の本となっていた。「ペンは銃よりも強し」といわれるとおり、戦争の愚かさを説き反戦の思想を伝搬させるからだろうが、それだけではないようだ。彼らにとっては平和な生活がしたい、普通の生活がしたいという希望を持たせることが最も嫌われることなのだろう。本書では次のように述べている。
 人類の歴史において、貴族の特権や神の戒律や軍隊規則をふりかざす独裁者、暴君、抑圧者たちには、アーリア人であれ、黒人や東洋人、アラブ人やスラブ人、あるいはどんな肌の色の、どんなイデオロギーの者であれ、みな共通点がある。誰もが本を徹底して迫害するのだ。本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ。
 なるほど民衆大衆に物事を考えられては困るわけだ。 
 やせっぽちで小枝のような足の少女が地獄のアウシュヴィッツ収容所を生き抜けたのはどうしてだろう。もちろんプロパガンダとして設置された家族収容所に入れられたことなど多くの奇跡的な選択もあるが、彼女の知恵と勇気と希望が最大の理由だと思う。連日ガス室に送られる人々を見、伝染病が蔓延する極悪の衛生状態と恐ろしくひどい栄養状態の中で人間性を保ちながら生きていくことには希望が要る、希望があればこそ知恵も勇気も湧こうというものだ。死んだ方がましだと諦めてしまったら忽ち死んでしまうだろう。ガス室に送られることだけが死ではないのだ。
 ディタはその多くを収容される前に読んだ本と収容所での秘密の図書から得た。もちろんそれらの本に収容所で生き抜くノウハウが書いてあるわけではない。過去の本を思いだしたり、秘密の図書を読んだり、生きた図書と称して先生(大人の収容者)から聞く口述の本を聞くことによって、囚われの身から自由に本の世界に飛び込めるのだ。これが本の最も素晴らしいことであって、その当たり前のことが本書を読みながら認識できた。


本書には挿絵も画像も何も無い。表紙に古ぼけた本を読んでいる少女の胸から下の写真が載っている、そして背表紙には8冊の茶色く焼けた古ぼけた本が載っている。それだけなのである。もちろんこれ等は本のために撮られた画像なのだが、裏表紙に本書の帯が張り付けてあり、本書のモデルとなったディタ・クラウスさんの少女時代の写真が載っている。ユダヤの星のワッペンが見えているので収容所時代のものなのだろうが、そんなものがあるはずもないので、解放されたときのものかもしれない。本書の中でも言ってるのだが、アンネフランクによく似た可愛いお嬢さんである。

 わたしが言いたいのは、本というものは元々活字ばかりでそのことをわたしたちが忘れてしまっているということだ。メディアそのものが画像、影像主体になってきて、活字ばかりの本が敬遠されている。影像画像は真実を映し出す(必ずしもそうではないが、、)が、それ以上の物語に入り込むことはできない。ところが活字ばかりの本だと、浮遊物体のようにストーリーの中に潜り込み、そこに書かれてあること以外のものを見、行動することができるのだ。これこそが読書の醍醐味であって、ディタは過酷な収容所に囚われの身であっても、世界中はおろか宇宙まで、過去にも未来にも行くことが出来たのである。
 ディタの言動に注意していると実にユーモアにあふれている。時には大人びたブラックユーモアもあり、下品な言葉遣いでお母さんたちにたしなめられる場面も多い。「ちぇっ」「ちくしょう」「くそっ」なんてまるで少女らしくない言葉がなぜか可愛いのである。
「そう、あの糞〈司祭・親衛隊曹長〉が来たのよ」 
「そんな下品な言い方しちゃだめ」
「だって本当ヘドが出る。事実なんだから仕方ないでしょう」
 アウシュヴィッツでは笑いがパンよりも不足していたので、ほんのちょっとしたユーモアでも大歓迎された。
  狭い場所に動物のように詰め込まれ、烙印を押されると、人は自分が人間であることを忘れてしまう。が、笑ったり、泣いたりすると、自分たちはまだ人間であると思いだす。
 この小説を読む前後に偶然の体験をした。この前に読んだ本は斎藤茂太先生の「なぜ笑うといいか」という本なのだが、その中にドイツ軍からロンドンが空爆を受けて防空壕に避難しているときやロンメルの戦車部隊に連戦連敗しているイギリス軍の作戦会議などでチャーチルがやたらとジョークをとばすのである。日本軍やドイツ軍では考えられないことなのだが、そういう宰相がいたからこそ連合軍は勝利したのだろう書かれている。そして読み終えてページを閉じた途端にふとテレビを点けると、TDA381便の航空機事故の様子が流れていた。もう3,40年前の事なのだろうが記憶に残っている事故である。飛び立ったYS11機の片方の車輪が出なくなり、羽田空港に戻って緊急着陸し、全員無事に収束するのだが、その道中のことである。車輪を出すために急降下と急上昇をする際に機長が乗客に向けてアナウンスした内容が今も伝説として残っているそうだ。「これから皆さまにジェットコースターの体験サービスを提供します。しかも無料で、、、」というような内容だったのだが、これで恐怖と不安に満ちていた乗客が落ち着きを取り戻したというのだ。ウィットにとんだ西洋人ならともかく、よく日本人がそのジョークを受け入れて落ち着くことが出来たなあと感心した。怒り出す者は一人もいなかったそうである。
 人間、窮地に陥ったとき、どうしようも無い問題にぶつかったとき一番必要なのはユーモアや笑いであって、ディタの知恵と勇気と希望の源泉はこのユーモアだったのだと確信する。そしてそれらを得たのは彼女が読んできた多くの本であっただろうし、収容所には8冊の本しかなかったが彼女は何百冊にも値する価値を得ていたのではないだろうか。
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感想/レビューEcobooksさん

タイトルからもわかるように、負の遺産アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所が舞台。
 
映画「ライフ・イズ・ビューティフル」は観ましたが「アンネの日記」は読んでいない私、映像ならばコレは無理だと少しでも思えば観るのをやめてしまうか、その時だけ目をそらせばいいのですが、本はそうはいかない。
活字は一言一句追わないと最後までたどり着けません。(他の事ならともかく、本だけは途中で止めるのは信条に反するので)
今年に入ってからドイツや、ヒトラー関連の本や映画にご縁があったので、これは今、読まなければいけないかと思い腹をくくって取り組みました。
 
ドイツに隣接するポーランドにあったアウシュヴィッツ強制収容所。31号棟には子供たちを楽しく遊ばせれば収容されている親たちが仕事がしやすくなるとの理由で作られた学校がありました。
紙もなければ鉛筆もない。この先、生きているかすらわからない状況で、たった8冊の本を守り続ける14歳の少女ディタ。毎日本は貸し出され、回収され、ディタによって安全な場所に隠されるのでした。
薄いスープだけの食事、過酷な労働、不衛生な環境。いつ「死の天使」と呼ばれたメンゲレに白い手袋で生死を振り分けられるかもわからない毎日。そんな生活が2年近く続きます。
 
死と隣合わせの極限の状態で人にとって、その尊厳を守るために必要なものは何かを問う作品。
実在のモデルとなったディタ・クラウスさんはイスラエルで現在も活動しています。
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感想/レビュー消える轍さん         blog

これが実話をベースにしているとは、信じがたい。
あの悪名高いアウシュヴィッツ収容所で、子ども達の学校があり、図書係がいたということ。
学校とは言っても、ささやかなものだし、図書係が扱う本もたったの8冊だけ。
その8冊の本を、ナチスに見つからないよう、貸し出したり回収して隠すのが、図書係ディタの役目。

アウシュヴィッツ、そして、その後にディタ達が送られたベルゲン=ベルゼン。
食事もほとんどなく、重労働させられ、非衛生的な環境で暮らす人たち。
とても耐えられない環境。
ディタの父母は亡くなるが、ディタはその後、同じ収容所にいた男性と結婚し、子どもや孫に恵まれる。
そして、この作者がアウシュヴィッツの図書係を調査した時点で、まだ元気に生きている。
そのことが、慰めになる。
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感想/レビューまーうーさん                    from booklog    
★★★

「伝える」意味ではとっても意義のある作品やとは思う。
現代日本人には馴染まないかもね。
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感想/レビューさめのくちさん ( taraponya )      blog    (男性 大阪府)   ★★★

タイトルを聞いて、そう言えば強制収容所に図書館なんかあったっけ? という疑問が湧き、あるはずがない、そもそも収容者に本など読ませるはずがないことを本書は教えてくれます。収容者が本を読み、そして考え、想像力の羽を広げ、ついには行動に移す……などということは、収容所を運営する者にとっては面倒が増えるだけです。しかし、アウシュヴィッツにはあったそうです。ユダヤ人がどうにかして手に入れたぼろぼろの8冊の本が。フランス語やロシア語の本、ばらばらになりかけの通俗小説の他、「生きた本」、即ち物語の話し手もいて、子どもたちに教育を行っていました。本書はその図書館で、本の管理を任された女の子の物語です。

フィクションではありますが、主人公ディタ・クラウスには実在のモデルがいます。彼女への取材を基に書かれた小説なので、とにかくディテールが細かい。読んでいるうちに収容所の生活に絶望的な気分になります。

が、彼女が「物語」に触れることで生気を取り戻すと、読んでいる我々も「物語」の力を思い出します。本を読めば知見も得られ、今をより良くするために何かを考えます。あるいは、勇気や強さが得られるかもしれない。だから誰かが誰かを支配しようとする時は、考える力を奪うために本を禁止し、受動的に得られる娯楽で白痴化を図るのです。テレビかよ、いや今はスマホか。

本が力を与えてくれるのは本書の前半だけで、中盤以降は過酷な現実との戦いが待っています。その点が「思ってたんと違ーう!」ですが、アウシュヴィッツ系では有名なあの人やこの人が登場して、最後まで興味が失われることはありません。もしかすると短編〜中編くらいでテーマを絞ったほうが、描きたいことの輪郭がもっとはっきりしたのかもしれませんが、ホロコーストについては語っても語り尽くせないので、紙幅が費やされてしまうのは仕方がないのかもしれません。
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感想/レビューえるふ通信さん       blog

アウシュヴィッツの強制収容所には囚人たちによって学校が作られていた。1944年のこと、この本はそこに送られていたユダヤ人少女ディタ・クラウスの実際にあったことをもとにして書かれた小説だ。著者はスペインの作家、実際は「本」にまつわるエピソードを探していたところ、学校がありそこには秘密の図書館があって、その図書係の少女のことを知ったことからこの物語ができた。ディタは1929年プラハ生まれ、1939年ドイツ軍のチェコ進軍でプラハを追われテレジーのゲットで1年過し、1943年12月貨車に乗せられアウシュヴィッツ第二強制収容所に送られた。(くわしくはP44〜45あとがきに)すべてが死と背中合わせのそこに青少年のリーダー、フレディ・ヒルシュは密かに学校をつくり、8冊だけの図書館があった。先生の授業に本を貸出し終わったら回収して秘密の場所に隠すという行為、それがディタに託された事だった。ナチに見つからないように服の内側にポケットをつくり持ち運ぶ、もちろんナチに見つかったら直ちに死へ、しかもディタだけでなくまわりの者の命がないことはいうまでもない。8冊の本だけではない、そこにもっていなくとも先生が自分の読書の記憶をたよりに子どもたちに語る場面がある。ホロコーストの状況はすざましい、吐き気がするほど、時にはとても読み進めることが難しいようなことがあった。じつをいうと最近立て続けに友人の死の報に立ち会うことがあり、気持ちは沈むばかりだった。何度読むのをやめようかと思った。けれどこの極限のなかに子どもたちは本を読んでもらい、おもしろいところは笑いさえしたという。ちなみにこの8冊の本は[バラバラになりそうな古い地図帳」「幾何学の基礎」「世界史概観(ウェルズ作)」「ロシア語文法」「傷みの激しいフランス語の小説」「精神分析入門 フロイト著」「表紙のないロシア語の小説」「チェコの小説=兵士シュヴェイクの冒険 かろうじて本の状態」到底私にはきっと読む事ができない本だろう。本というもの、一体これは何だろう。明日は、いや、いまにもナチの気分でまわりのものも一緒に何千人とガス室に送られてしまうなかで本を読む。先生が読むのを楽しむ子どもたち。
 ディタがアウシュヴィッツ収容所に来る前1年いたというテレジン収容所の子どもたちのことを書いている本が出版されている。

その頃テレジン収容所には15000人のユダヤ人の子どもがいてその子どもたちのたったひとつの楽しみは絵を描く事、4000枚の絵を残してほとんどはアウシュヴィッツに送られてガス室で殺され、生き残ったのは100人だけという。
 絵も本も音楽もこの子どもたちの命は救えなかった。おなかがいっぱいになるわけでもなく、命がたすかったわけでもない、でも、子どもたちがわずかな命を輝かせてくれたのも事実だ。そして、子どもたちは絶望した大人たちの、やはりほんとに細い光りだったのだ。本が命を救うなどという空疎な言葉は言うまい。ただ少しだけでも本と出会えることがあるようにと願うだけだ。本は自由の象徴だと思うから。
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感想/レビュー鞄の中の弁当箱∥さん   blog

・・・・・・・・・・・略・・・・・・・
最初はノンフィクションかな?と、思ったんですが、実話に基づいた物語(フィクション)、ということで……

ナチスやユダヤ収容所については、まだ2知らないことが多く、無知って恥ずかしい…となりながら。

暗く重くなりがちなユダヤ収容所の物語ですが、そこには希望と勇気が溢れ、力強い。

"本の力"って、偉大。

そして どんな時も力強い主人公ディタのおかげで、"面白く"という表現は適切ではないかもしれないけど、最後まで面白く読めました。

最後にモデルとなった方々の"その後"が載っているのも良かったです。
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感想/レビューhichakkoさん          from booklog    ★★★

正直に言ってしまうと、読むのがつらかった…。
思えばアウシュヴィッツがユダヤ収容所だということは知っていたけれど、その中で行われたことはほとんど何も分かっていなかったんだな、とこの本を読んで痛感しました。酷い。何かもかもが酷過ぎる。
これが本当に実際に行われていたっていうのが信じられないというか、信じたくないくらい酷い現状がそこで生きることを余儀なくされた人々の視線で語られています。
でもこの本も実際に体験した人が書いたわけじゃないから、事実のほんの一部なんだと思うと…実際に体験した人の絶望は計り知れない。

そんな中でディタは希望を失わずに、図書係として危険と隣り合わせになりながらも働いています。
ディタから見たフレディ・ヒルシュが信念を持ったとても素敵な青年で。彼ならなんとかしてくれるっていう信頼もあり、ディタが惹かれるのも納得なのですが……ああなるとは……。ディタと一緒にショックでした。
結局自殺なのか他殺なのか分からないんだろうけど、自殺なのかなぁ…と思ったり。
個人的にはどちらも選べなかったんだと思いました。どちらを選んでも犠牲が出る。でもそのどちらの犠牲も出したくなかったのに、どちらかを絶対選ばないといけない状況が、彼をそうさせたんだろうと。
ディタと一緒にほんとに悲しかったです。結局、彼は死んだ理由は誰にも分からないままなんですが。

物語はディタ以外の視線でも語られ、二つの恋も中々見どころがあったのですが……どうにもできない現実が辛かった。
本文中にも言われてましたが、これだけたくさんのユダヤ人が殺されたというのに、彼らが祈り信じた神はどうして助けてくれなかったのか! と思わずにはいられませんでした。
ヒルシュさんが死んだ後はどんどん状況は悪くなっていくばっかりで、読んでてずっと辛かったです。
でも最後はオータと再会して、「こうしてついに二人は、フレディ・ヒルシュの夢をかなえることになったのだった」っていう一文でようやく救われた気分になりました。うん、ヒルシュさんの願い通り最後まであきらめずにディタが生きてて良かった。

著者のあとがきを読んで、実はこの物語が実話に基づいたフィクションだったことに驚きました。
ディタもオータもヒルシュさんも実在してたのか。
でもこの物語で一番言いたかったのは、「人間が生き残るために必要なのは、文化ではなくパンと水だ。(中略)しかしただそれだけでは、人間性は失われる」――つまりディタが命がけで運んだ本という文化が、人間には必要ということだったのかなぁと思いました。
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感想/レビューbuleさん        from booklog  
★★★★★

タイトルに惹かれて思わず手に取った。
アウシュビッツに図書係の少女が、実在したなんて
今までに知らなかった。

ガス室に送られいつ命を落とすか分からないような
状況に置かれていても人は、物語があるだけで
残酷な現実を忘れることが出来る。

フィクションとノンフィクションが巧みに
入り混じっているからこそ、人物の厚みが増している。
アンネの名前が出てくると、実際に起きたことなんだなと
ハッとさせられた。

人は水と食べ物があれば生きてはいけるけれど
文学などより人生を楽しませるものがないと
ただ生きているだけなのだろう。
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感想/レビュー草莓豆花       from bookmeter   (女性)

ホロコースト、チェコのゲットーからのユダヤ人のこと。チェコ人とは、ドイツ人に対してそこはかとなく優越感を持っているそうで、+ユダヤ人としての二重の意味での民族意識にも注目しつつ。戦争が終わってもプラハの春で、またもチェコの受難は続く。あと、ゲイに対する拒絶感とか、どうなんだろう。物語では、拒否反応からいつの間にか模範とすべき英雄になってしまったけど。
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感想/レビューat-sushiさん           from bookmeter  (男性 熊本県)

明日の命も知れない絶滅収容所内で、子供たちのための学校を営むブロック長から図書係に任命された少女・ディタ。昨日まで共に過ごした何千人もの同胞が、翌朝灰となって降り積もる恐怖と絶望しか無い世界で、何ものにも脅かされない精神の自由の象徴=僅か8冊の本を命懸けで守り抜いた少女の実話を基にした作品。普通の人を聖者にも悪魔にも変える時代の狂気に戦慄を覚えながら、作中の日付が早く終戦日に近づくことを祈りながら読み進めた。とてつもなく重い内容だが、後世まで読み継がれて欲しい。
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感想/レビューとむさん       from bookmeter (男性)

絶望的な状況の中で、「本」の中の世界に僅かな光、希望を見出だし、それを守るために「恐れ」や「死」と向き合い、戦った。どのような状況の中にあっても、希望はそれを自らが見捨てない限り、そこにあるのだと信じたくなる物語だと思う。
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感想/レビューまささん       from bookmeter (女性)

狂気の時代。自分なら、こんな風に生きられなかったと思います。敬服します。
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感想/レビューFreiheitさん     from honto     ★★★★★

収容所の中で、たった8冊の図書館が監視をくぐって作られ、貸し出すことで絶望の中で希望をつないだ。ナチスの考えることをやめさせることへの抵抗である。読書の意味を考えさせられる。読みやすく、しかも力作であると思う。
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感想/レビューやましょーさん     from bookmeter   (男性)

ホロコーストの話。どう足掻いても綺麗事で書けないテーマだから、悲惨なことが悲惨なままに書いてある。本だけがあっても生きられないけれど、本によって生み出される想像力が小さな希望になることもある。実話を基にしているというのが驚き。こんな生き地獄があった時代からまだ100年も経っていないこと、一人の少女がこんなに強く生きられるのかということが。
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感想/レビュー綿さん        from bookmeter   (女性 東京都)

一冊の本は私たちを遠くへ連れて行ってくれる靴で、その旅行先自体を内包している。ディタの勇敢さや機転にニヤリとすると同時に、彼女が身を置くその環境のおぞましさに、描写のところどころに『夜と霧』を思い返しながら、顔をしかめつつ読み進めた。他の本と同様、魅力的な読書体験を運んでくれる一冊ではあるけれど、確かな史実に基づいた内容であることを忘れてはいけない。本を焼く人たちはいずれ人を焼く。すでに過去に起こっている事実だということ。

「じゃあ、フロイトさんとウェルズさんをベンチの両端に離しておくことにします」「いや、そのままでいい。お互いに何かを学ぶかもしれないからね」のユーモアがとても好き。

綺麗事ではなく、逆境に、白く塗りつぶすほどでなくとも、わずかに差し込む光を与えるような、物語の効用をいつも信じていたい。
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感想/レビュースマイルメーカーさん  from bookmeter

白樺の谷(=ビルケナウ)とは詩的な名前だが、実際は「お話もなあ、絵になるようこともなあ、詩も小説なあ(井上ひさし『父と暮らせば』)」な絶滅収容所であった。どんな権力も人の想像力まで奪うことはできないと云うけれど、畢竟その想像力さえも蝕まれていく。そこに、たまたま存在した幾つかの本。見知らぬ人が、各々の情熱でもって記したそれらが、未来の人たちに開かれていく。「書物がいかに人の生きる糧となるか」を謳い上げた物語-と要約できるほど、真っ直ぐでも感動的なだけの話でもない。だが、それを信じたい切実なものが、ここに

①はある。この世界に入っていくのにはかなり覚悟が必要で、前半はなかなか読み進められなかったが、後半は加速度的に物語が展開し、スリルと苛酷さ(と、遺憾ながら読みやすさも)が迫真的に展開する。偶発的な悪意や、息の長い善意や、場違いな勇気が頻出し、思わず「運命」というものを信じそうになるけれど、生を我が手にしたのは、やはり主人公ディタの屈しない心だったのだ。モデルになった当人がインタビューで言っている。「主人公のディタは私より勇気がある」

②本書自体もまた、未来の見知らぬ読者に開かれていく、そういう類の本になる気がする。絵本『エリカ』で、絶滅収容所へ送られる母が、一縷の未来に賭けて、窓から赤ん坊を投げ出した光景のように。●『呪われた医師たち』や『ブラジルから来た少年』で、怖い人のイメージがとても刷り込まれていたメンゲレ医師。本書でも超人間として描かれ、大変印象深い。困ったことに(悪役として)魅力的で、忘れ難い印象を刻印する。

③アンネ・フランクが突然出てくるのには驚いた。が、もっと驚いたのは、本書ではほとんど触れられていない「アウシュヴィッツの女性オーケストラ」のファニア・フェヌロン(本書より更に過酷な『ファニア歌いなさい』の著者)が、ほぼディタと同じ軌跡でもってベルゲン・ベルゼンで解放の時までを過ごしていることだった。
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感想/レビューナイスネイチャさん   from bookmeter   (男性 東京都)

図書館本。アウシュビッツ収容所でたった8冊の本を隠し持ち凄惨な状況の中、図書係に任命された少女ディタ。本に小さな希望を見つけ生きていく。パンと水で生きることは可能だが人は文化というものも必要な動物である事を再認識致しました。また本ではなく語り継ぐ人、聞き入れる人が大事なことも。
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感想/レビューHiroさん            from bookmeter (男性)

丁寧に書かれた、実話に基づく小説。目を背けたくなるような収容所の描写も丹念な筆致のせいで読み進められるうえに、ウェルズやマンやデュマなどの名作が主人公の慰めと励ましとなった様子を見せられると、こちらも何か元気になって来る。それにしても主人公は子供ながら実に逞しく賢い世古に長けた少女であることか。脱走劇の成否を伝える語りのサスペンスや逆境にも気高い人と冷徹な殺人者と化す人との対比の描写のリアルさ、取材と研究に裏付けられた、何とも見事な筆力に魅せられる一冊である。ホロコーストと読書に関心のある方必読。
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感想/レビューひらちゃん    from bookmeter (女性)

アウシュビッツの家族収容所。国際赤十字の監視団を撒く為に作られた三十一号棟にはユダヤ人の子供の学校があった。そして秘密の図書館。たった八冊の本を守る少女。図書係のディタは実在の人物。目を覆いたくなる程酷い現実と向き合ったディタ。少女の戦争はある日を境にじわじわと始まり多感な少女時代を飢えや絶望へと変えていく。しかし彼女は生き抜いてしっかりと前を見て歩く。逸らさずに最後まで読んで良かった。是非読んでほしい一冊。
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感想/レビューManaさん     from bookmeter (女性 東京都)

実話を下敷きにしたフィクション小説。アウシュヴィッツで、こっそり本を隠し持って作った図書室の本を隠す係だった少女ディタ。図書室という側面に惹かれて読み始めたけど、描かれる強制収容所の実態に途中読むのが苦しかった。最初どこまで実話を基にしてるかも分からなかったので、もっと優しい物語かと思ってたけど、あまりにも多くの人があまりにも簡単に死んでしまう。
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感想/レビューおおにしさん       from bookmeter (男性 滋賀県)

収容所の図書係ディタが命懸けで守った8冊の本は次の通り。『地図帳』『幾何学の基礎』『世界史概観』(H.G.ウェルズ)『ロシア語文法』 『モンテ・クリスト伯』『精神分析入門』(フロイト)『題名不明のロシア小説』『兵士シュヴェイクの冒険』(チェコのユーモア小説)。死と隣り合わせの極限状況の中、8冊の本が多くの人たちの心の支えとなった。特にディタたちを救ったのは『兵士シュヴェイクの冒険』だった。ユーモアは絶望に対する処方箋。この本は平和な時代に暇つぶしで読書している私に、読書の大切さを痛感させる一冊だ。
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感想/レビュー愛知みずほ大学瑞穂高等学校 瀬木学園図書館

アウシュヴィッツ強制収容所に、囚人たちによって作ら れた学校が存在した。ここには8冊だけの秘密の“図書 館”がある。図書係に指名されたのは14歳の少女。本 の所持が禁じられているなか、少女は命の危険も顧み ず、服の下に本を隠し持つ。少女は生きる意欲、読書 する意欲を失わない。その懸命な姿に涙が流れます。
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感想/レビューマミーさん      from blog  こたつ猫の森

本書はフィクションの形をとっていますが、実在の人物をモデルに書かれた、限りなくノンフィクションに近い小説です。
 
アウシュビッツに学校、図書館とは意外な感じがしますが、
国際監視団の目をごまかすために、子どもの一部を生かしておき、家族と一緒に収容しておく必要がナチスの側にあったのでしょう。
アウシュビッツ31号棟もそのひとつ。
(ちなみにユダヤ人虐殺の「噂」の真偽を検証するため、赤十字は実際に国際査察団を派遣しています。ただし派遣先はアウシュビッツでなくテレジン収容所。その模様は後述「テレジンの小さな画家たち」に詳しいです。)
 
しかし、そこはアウシュビッツ。
常に大量の死と隣り合わせ、なにをするにも命の危険がつきまといます。
また、子どもたちに教育を施すことも許されてはいませんでした。 
それでも、ユダヤ人たちは、ナチスに知られないよう、ひっそりと学校を開きます。
見つかれば無事ではいられないでしょう。
中でも、厳しく禁止されていたのは「本」の所持。
 
誰かがささやく。「〈司祭〉だ!」
すると、悲痛なざわめきが広がる。いつも聖職者のように軍服の袖に両手を入れて歩くシュタイン親衛隊曹長はそう呼ばれている。ただし、彼が信じているのは残酷という名の神だけだ。
教師が二人、追い詰められた表情で顔を上げる。彼らはその手に、アウシュビッツで固く禁じられているものを持っていて、見つかれば処刑されてもおかしくない。
それは銃でも、剣でも、刃物でも、鈍器でもない。第三帝国の冷酷な看守たちがそこまで恐れているもの、それはただの本だ。表紙がなくなってバラバラになり、ところどころページが欠けている読み古された本。
人類の歴史において、貴族の特権や神の戒律や軍隊規則をふりかざす独裁者、暴君、抑圧者たちには、アーリア人であれ、黒人や東洋人、アラブ人やスラブ人、あるいはどんな肌の色の、どんなイデオロギーの者であれ、みな共通点がある。誰もが本を徹底して迫害するのだ。
本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ。

 
本という本ははすべて没収され、
運よくナチスの目から逃れた本も、暖をとるため焼かれたり、トイレの紙として消耗されてしまい、31号棟の学校に残された本はたったの8冊。
そのたった8冊も、ナチスに存在を知られれば、所有者ごと無事ではいられません。
最後の貴重な本を守るための図書係に選ばれたのはエディタ、わずか14歳の少女なのでした。
 
「死の天使」の異名を取るメンゲレ大尉に目をつけられながら、驚くべき忍耐力と我慢強さとで、頑固に、かたくなに本を守り抜いていくエディタ。読者として彼女の毎日を追体験するのは、時に息が詰まるほど恐ろしく、苦しいものでした。
けれどエディタにはわかっていたに違いありません。
地獄のような環境にあるとき、人には本が必要であることに。
 
父さんは正しかった。あの本は、どんな靴よりも遠くまでディタを連れていってくれた。
その本、トーマス・マンの「魔の山」の表紙を開いた瞬間を思い出すと、アウシュビッツの粗末なベッドの中でも、ディタには笑みが浮かぶ。
本を開けることは汽車に乗ってバケーションに出かけるようなもの。

 
この一文を読んで、私は心の底からエディタに共感せずにはいられませんでした。
「本を開けることは汽車に乗ってバケーションに出かけるようなもの」
本が好きな人なら、誰だってこの言葉に深くうなずくことでしょう。
 
でも、だからこそ、真剣に考えこんでしまいました。
この環境にあって、自分だったらこんなにも本を守ることができるだろうか、
そしてまた、
この環境で、私は本なしで、生きられるだろうかと。
 
物語の中盤、8冊の本のうち、フランス語で書かれていたためエディタには読めなかった本が「モンテ・クリスト伯」という本であることを教えられた彼女は思います。
 
こんなに多くの無実の人々を苦しめている彼らに同じ痛みを与えられたらどんなにいいか。でも、物語の初めに出てくる明るく人を信じやすいエドモン・ダンテスの方が、後半の計算高く憎しみに満ちた男よりも好きだと思ってしまう自分に、ちょっと落ち込む。本当に自分は復讐なんてできるのだろうか。斧の一撃がみずみずしい木を乾いた薪に変えてしまうように、運命に痛めつけられると、望むと望まないとにかかわらず人は変わってしまうのだろうか。
中略
「私たちが憎しみを抱けば、彼らの思うつぼです。」
ディタはうなずく。

 
これほどの過酷な運命の中にあって、彼女の感性の、なんとまっすぐで健やかなことでしょう。彼女の心にいくら恐怖と憎しみを植えつけたとしても、ナチスはついに彼女の精神を貧しくさせることはできなかったのです。
そのことに、本が、物語が貢献したに違いないと私が思うのは、強ち間違いでもないと思います。
 
本書の魅力はエディタの活躍だけにあるのではありません。
 
多くのユダヤ人や実在のSS親衛隊員が登場し、ある者は裏切り者となり、ある者は恋をし、ある者は脱獄の道を選ぶ…様々な人間模様が入り乱れ、また最後まで、複数の謎が交錯します。
読者は第二次世界大戦の終結と収容所の解放という史実を知っていますが、作品の中に提示された「どうなるのだろう」「なぜだろう」という問いが最後まで生きているので、ラストまできちんと「おもしろい小説」になっています。
ホロコーストに関する小説はもうたくさん、と思う方にもオススメの1冊です。
 
また、最後に「驚き」もありました。
 
小学6年生の教科書に採用され、また数年前の課題図書でもあった「テレジンの小さな画家たち」。

 
この本の中に、生き残ったエディタの現在の姿と、彼女がテレジン収容所で描いた絵が掲載されているというのです。
私も数年前にこの本を読んでいましたので(子どもが小学生だったころ、この本で読書感想文を書きました。手伝わされました。むむう。)、慌ててボランティア先の学校図書館で確認してみました。
 
149ページ。
現在のエディタの写真と彼女がテレジン収容所で描いた絵が掲載されていました。
 
私の唇からは、思わず声が漏れました。
「ああ、ディタ。」
あとの言葉は涙にしかなりませんでした。
 
凶悪な運命から8冊の本を守り抜いた小さな図書係さん。
齢を重ねても、そのまなざしの強さは、彼女が頑固で勇敢な少女であったことを彷彿とさせました。
 
私がボランティアをしている図書室は取り立てて特徴のあるものではありません。
でも、子どもたちがいつもたくさんの本を読んでいます。それを誰かに見とがめられることはなく、逆に子どもたちは「賢いねー」と褒めてもらえます。
それが当たり前だと思っていたけれど、149ページの写真の女性は本のために、文字通りその命をかけなければならなかったのです。
 
古くてボロボロの、破れてページもバラバラになった本のために。
 
私は子どもたちが本を投げるたびに、粗雑な扱いをするたびに、いちいち注意をせずにはいられません。
そのたびに子どもたちは「きょとん」とした顔で私を見上げます。
仕方がないと思います。
「ありがたみ」とは、失って初めて立ち現れる感覚ですから、まだ幼い彼らにそれを実感しろと言っても無理な話です。
だから、破れたり、背表紙が剥がれたりしている本を見る度に、何度でも補修すればいいこと、読まれずに本棚に飾ってあるだけの本よりは幸せなはず、と自分に言い聞かせて、できることなら、こんな風に潤沢に子どもたちに本を与えられる時代がずっと続きますようにと祈るのです。
そしていつの日か、彼ら自身が「アウシュビッツの図書係」のような本に出会って、自由に本を読めることがどれほど幸せなことかを知り、本を大切にしようと「自ら」考えてくれるようになることを願うのです。
 
「本はとても危険だ。ものを考えることを促すからだ。」
 
こんなことを、二度と誰かに言わせてはなりません。

   追記> この「図書係」の本もとてもいい内容ですし、ハラハラドキドキするので途中で眠くなりません!
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感想/レビューBookwormさん     blog

アウシュビッツ強制収容所内の学校と、そこで図書係として8冊の本を命がけで守った14歳の少女の実話に基づく物語。

強制収容所内に学校。それも、図書係!そして、14歳の少女が命がけで守った8冊の本!!という、なんともワクワクするような単語に惹かれて読み始めました。

・・・が、舞台はアウシュビッツ。
日々、大勢の人々がガス室に送られる様子や、過酷な労働と劣悪な環境の描写の数々に、圧倒され、そして、漂う重苦しさに、だんだんと気分が沈んでいきました。実は、何度か読むのを止めようかとさえ思いました。正直、読み進めるのが辛かった。でも、もうちょっと読めば、もしかしたら・・・と、何度も心を奮い立たせて、なんとか読みきる事が出来ました。

もちろん、少女や教師たちの勇気溢れる行動にはハラハラドキドキさせられたし、生きるか死ぬかの瀬戸際においても「本」を守ろうとする姿に、改めて「本」の存在意義や大切さを感じて胸が熱くなったりもしたんですよ。そして、あんな過酷な状況の中にあっても、人は恋をしたり、年相応の”娘”であったりするのだなぁと、ちょっぴり心が踊ったりもしたのも事実だし、少女の「「本を開けることは汽車に乗ってバケーションに出かけるようなもの」という思いにも共感したりもしました。

でも、それよりも、ずっとずーーーっと、”アウシュビッツ強制収容所”という場所の持つ、悲惨さ、理不尽さなどが全体を覆いつくし、重苦しく、それを、どうやっても拭い去ることはできないままでした。なんとか、気持ちを切り替えられれば良かったんでしょうけど、私には難しかったのです。

だからと言って、読まなければ良かったとは思いません。読めて良かった、と素直に思います。
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感想/レビューよむよむ工房の のの子さん   from blog

「えらいもん、読んだ!」

アウシュヴィッツで実際にあったドキュメンタリータッチの小説。
作者はスペインの文化ジャーナリスト。
この主人公がイスラエルに移住していて、作者と出会っている!

ナチスは1933年ドイツ各地で1億冊以上の書籍を燃やした。
チェコ系のユダヤ人の少女エディタと両親もまた、
アウシュヴィッツ・ビルケナウに連行される。
絶滅収容所の31号棟。そのバラックができてから閉鎖されるまでの間、
ユダヤ人の子ども500人が、顧問に任命された囚人たちとそこで過ごした。
死の恐怖の中、先生たちは子供に教育をし、コーラスやゲームなどをしておくる。
そこには、たった8冊の本しかない図書館があった。
その図書係だった13歳の少女エディタが、命がけで守る本。
明日の命の保証が無い中、飢えと病気、暴力と恐怖に苛まれる中、
本とは、いったいどんな役割を果たしたのか……
 
おそらく若い世代の読者は、胸糞悪くなりページを閉じるだろう。
なんで私はこの時代の物を読み続けるんだろう。
決して楽しくはないし、安らかな気分とは程遠い。
でも読む。そこには程度こそ違え、どこか共通する精神を感じられるから。
あの時代がどんな狂気だったか、
なぜ、普通の人たちが狂気を当然として賛同していったのか。
自分の中で反芻している。
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感想/レビュー冬薔薇さん     from bookmeter   (女性  神奈川県)

スペインのジャーナリストが実話をもとにしたフィクションとして書いたもの。アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所へ入れられたディタはチェコ出身のユダヤ人14才、想像力豊かで賢く勇気がある。ヒルシュの作った、子供たちに生きる糧を与える学校で秘密の図書館の係りを任された。冒頭SSの検査の時ディタが本を隠し持っている場面は緊張もの。毎日の死体焼き場の煙と異臭、泥沼の道とシラミだらけのバラック、飢えと寒さと監視と恐怖の収容所生活が続く。「一瞬でも幸せならそれで十分」と死に直面しつつも仲間と助け合う。

ウィリアム・フォークナー「文学は、真夜中、荒野の真っただ中で擦るマッチと同じだ。マッチ一本ではとうてい明るくならないが、一本のマッチは、周りにどれだけの闇があるのかを私たちに気づかせてくれる。」  
本好きには必読の書
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感想/レビューspatzさん      from bookmeter   (女性 北海道)

長かったので時間がかかった、やっと読み終えた。アウシュビッツの中に図書館??死の危険をおかしながらも、収容所に持ち込まれた8冊の本。図書係、として、本を運んだりする仕事をした、ひとりの少女の物語。実話ベース。アウシュビッツの光景は目を覆いたくなるもの。。だが、そこに、本があたえた希望の光。スペイン人ジャーナリストによる。でてくる書籍は『兵士シュヴァイクの冒険』『精神分析入門(フロイト)』『ロシア語文法』『世界史概観(HGウェルズ』」『幾何学の基礎』、地図帳、『モンテ・クリスト伯』
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感想/レビューYayoiMさん     from bookmeter

素晴らしく面白く、夢中で読んでしまいました。これまでにアウシュビッツのものは何冊も読んできましたが、すごくしっかりした少女(15歳のディタ、今は80歳を超えてイスラエルで御健在のよう)の実話で、登場人物も出来事も実話のまま。でも、アウシュビッツにBⅡbという国際視察団用の「家族専用棟」があったとは知らなかった。それでアウシュビッツに子供がいたんだなあ。ハンガリー映画「サウルの息子」を見てから読んだ方が、より一層、理解が深まり良いと思います。
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感想/レビューむぎさん       twitter (高校生)

本を読んだところで実際の景色・音・臭いは想像を絶するものだっただろうけれど、それでも何も知らないでいるよりは遥かにマシだと思いました。
物語を希望に携えて懸命に生きた女の子の話。読めてよかったです。
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感想/レビューモモさん       from bookmeter (女性)

人の名前がアルファベットだったので凄く時間がかかってしまった。アウシュビッツの様子が克明に描かれていた。実話に基づいた話と言うことだが戦争とはいえこんなことがあったんだなってあらためて思った。人間が人間であるためにあの地獄の中の一筋の光が本だったのかな。
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感想/レビューGarnieさん           from blog  (横浜)

実話をもとに描かれた、8冊の本をまもった強制収容所の図書係の少女。私はこの本でアルフレート・”フレディ”・ヒルシュという実在の人物についても知りました。感想にはネタバレが含まれますのでこれから読む人はご注意を。

実在の人物と虚構が織りなす物語
主人公のディタ(エディタ)は14歳のとき、アウシュヴィッツ・ビルケナウ絶滅収容所の31号棟の秘密の図書館の図書係になった。図書館といっても、存在したのはボロボロになった8冊の本。それを監視の目の届かない場所に隠しながら子供達の教育を担う先生役の大人に貸し出すのが彼女の役割。
アウシュヴィッツという名前、ホロコースト、ユダヤ人迫害、そういう歴史的背景を知ってはいても、この作品のような形でそこでの暮らしを描いたものは読んだことがありませんでした。悪臭、虐待、殺戮、飢え、病など、悲惨な状況があったことは書かれているけれど、その中でもユーモアや思いやり、友情、家族愛を忘れずに「生きていた」人たちがいる。そして、たとえナチスが国際監視団の目をごまかすために生存させていたのだとしても、収容所に到着してもすぐに殺されずに生きていた子供達がいたこと。ディタが図書係として管理していた本のほかに、自分の読んだことのある本を語り聞かせる「生きた本」と呼ばれた人たち。
ディタ自身も、人目を盗んで本を読み、本が連れ出してくれる別の世界に浸る。私は小学校から近眼になり始めて本や漫画を読むのを禁じられたことがあるんだけど(といっても多分休憩しながら読めとかその程度だったはずが、私にはかなり大ごとだった)、祖父母の家に行った時に伯父の持っていた「ブラックジャック」が全部読みたくて、押入れに隠れて読んでいて叱られたことがある…ふつーなら気付く人の足音とか気配に気づかないでバレたのよね。次元が違うけど、子供の頃に本に夢中になるって今とはまたちょっと違う感覚だったな、ということをふと思い出しました。

フレディ・ヒルシュ

小説の中で最も印象的な登場人物がこのフレディ・ヒルシュ。彼は実在の人物で、収容所にいながらもアスリートらしい体型とできる限りの清潔さ、子供たちの教育への献身的な姿勢を維持していたことが描かれています。しかし、子供達を含む家族収容所の何千人もの人々がガス室で殺されようとしたとき、反乱の陣頭指揮を執るよう依頼され、子供達の犠牲を悩んだ末に鎮静剤を大量服用して自殺した、というのが周りの人々の見解。自分で矢面に立つのはできないけれど誰かがリーダーになってくれれば自分も何かする、という、ある意味無責任な他力本願について、生と死がかかっていた状況だけに責められないとは思うけれど、自殺したからといって「逃げた」と責めるのは絶対におかしい。
しかし、物語の中でディタは、「そもそもフレディのような人が逃げる、自殺すること自体おかしい」という疑問を持ちます。この件はディタの疑問とともに物語の最後まで引きずられ、あとがきに提示されたある1説をもって引き取られます。逃げたのではなく、彼の死にはなんらかの、誰かの意図によって引き起こされたものだと。
私はフレディ・ヒルシュについて実在の人物だとは知らなかったのですが、物語を読み終わるまで、先入観を持ちたくないので調べないでおきました。読み終わってから見つけたAlfred (Fredy) Hirschに関するページの最後にも、彼の死には疑問が残されている、と書かれています。
このページに載せたAlfred Hirschで画像検索すると、上の写真だけでなく体操選手らしい体型の全身を写した写真もヒットします。収容所の中である一定の自由を得ていた彼がナチスに通じているのでは、と作品中のディタは疑うのだけど、彼の抱えていた秘密は別のもの。ユダヤ系ドイツ人であり、同性愛者でもあったフレディ・ヒルシュの苦悩は、当時のディタには理解に苦しむものとして描かれています。

ディタ・クラウス

物語の中でメンゲレに「画家」と答えたディタのモデル、エディタ・ポラホヴァーは収容所で知り合ったオータ・クラウスと結婚(作中ではオータ・ケラー)。イスラエルに移住しています。ディタ・クラウスの絵がこちらに掲載されていました。

エディタ・ポラホヴァー画(現ディタ・クラウス、1929年3月12日生まれ、生還しイスラエル在住) 鉄格子の窓から見えたテレジンの教会の塔を描いたもの。ディタはテレジンからアウシュヴィッツ、さらにベルゲン・ベルゼン収容所に送られたが生還した。両親・祖父母・親戚はすべて死亡
訳者あとがきによると、ディタ・クラウスについては野村路子氏の著作も紹介されています。
本の力、絵を描くことの力。絶滅収容所の中の物語だから悲しく辛い事実も描かれているけれど、それよりも人間性に焦点を当てて、かつ「お涙頂戴」的な描写はないのは、著者がジャーナリストというバックグラウンドを持つ人だから、かなぁ。イトゥルベ氏の次の作品ももし翻訳されたら読んでみたいです。
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感想/レビューしいたけさん          from bookmeter  (女性  東京都)

本は旅だ、冒険だ。科学だ、知恵だ。過去だ、未来だ。心がときめく本に向き合えたとき、アウシュヴィッツの子どもたちは、まだ自分が人間であったことを思い出す。本は命をかけても守るべき価値がある。主人公ディタの何列か先のベットでは、アムステルダムの隠れ家で日記を書いていたアンネが、ひとりぼっちで死んでいく。本が違えばあの少女が主人公だった。立てなくなるほど棒で叩かれたあの子も主人公。肉親が死んでも涙さえ出なかったあの子も主人公。やり切れない。悔しい。むごたらしい悲劇の主人公など、一人とて作るべきではなかった。
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感想/レビューradio24kmさん    from booklog    (男性)

アウシュヴィッツの悲劇のようなことは、注意していないと国や人種に関わらず、今でも起きる危険性はあると思うけど、そういった悲劇的な状況の中でも、表現が救いとして存在するのは、希望も感じさせる一冊だった。
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感想/レビュー三滝さん       from  三滝さんのつれづれ図書館日記  (北海道)

アウシュヴィッツの中で、監視の目をかいくぐりつつ、8冊の本を守っていた少女・ディタのお話です。

絶望的な現実が施設を暗く覆いつくす中、ディタの輝ける意志だけが、まるで蛍の光のように淡く点滅しながら周りの風景を浮かび上がらせます。

私は、幸せは半径3mの世界を守ることだと思っているので
古びた本を、懸命に守るヴィタの姿に思わず共感。

同じ戦争ものでも「夜と霧」は読むとつらいと感じる人も多いと思うけれど、この作品はヴィタという希望が物語を照らしてくれるので、救いのある内容になってます。
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感想/レビューぱおさん       from bookmeter    (女性)

私の経験と想像をはるかに越える寒さ、悪臭、暴力、支配、そして絶望・・・それでも、アウシュビッツには希望を持ち続けた少女がいたという事実。
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感想/レビュー最終便さん        Twitter

読了。そこには秘密の図書館がある。 図書係の少女を軸にユダヤ人の人々の生き様を、実在の人物への取材から描く。本が希望であったことを改めて思い知る。重く貴重な一冊。
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感想/レビューくふくふさん      from bookmeter

図書館の新刊検索で目に留まり、早速借りた。いつかは触れたいアウシュビッツの真実。二度も欧州駐在経験がありながら訪問できず。ナチス映画や書籍で多少は知識があったが、実在人物の証言となると、自分の無知に愕然。本の後半は特に悲惨な状況で読み進むのがしんどかった。劣悪な環境にもめげず、ほんの数冊を命にかえても守り抜き、本とともに空想を織り交ぜながら逞ましく生き抜く少女。その中に、子どもの頃に好きだったアニメ「ニルスの不思議な旅」があり懐かしくなった。少女は既に高齢となりながも、日本女性と交流も続けているそう。
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感想/レビューみりんちゃん           from bookmeter

長かった・・・。アウシュビッツ関係の本を読んだのは実は初めてのことで(アンネの日記はタイトルを知っているだけ)、想像絶する地獄のような現実に愕然としました。そんな環境の中、図書係のディタは希望の光のように私には思えました。ディタにとっての英雄はヒルシュですが、私にとっての英雄はディタ、あなたです。
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感想/レビュー扉のこちら側          from bookmeter   (女性)

2016年987冊め。タイトルは「アウシュヴィッツの」となっているが、ブジェジンガ村のビルケナウ収容所での話である。世界的にも前者の方が知名度が高いからだろう。事実に基づく小説。絶望下でも人間の尊厳を保った、その鍵としての本と図書係の存在という物語の主題には惹かれるものがある。ただスペイン語小説の日本語訳ということだからか著者の文体がそうなのか、いまいち入り込めない感。ディタ本人の回顧録だったら感じが違ったのかもしれない。ただこの本が出版された価値は非常に高いことはもちろん認める。
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感想/レビューゆかさん      from bookmeter   (女性)

あとがきより「本では病気は治らないし、死刑執行人たちを打ち負かす武器として使うこともできない。空腹を満たすことも、喉の渇きを癒すこともできない。人間が生き残るために必要なのは、文化ではなくパンと水だ。しかしただそれだけでは、人間性は失われる」これは図書館を運営するために命を危機にさらす図書係ディタの物語。国際視察団のための家族専用棟というのがあることをはじめて知りました。またせっかく抜け出してユダヤ人評議会本部でデータを提出し報告したのに、皆は単なる収容所だと信じ、そこで虐殺されているとは誰も信じなかった。
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感想/レビュー大寺萌音さん       from Amazon     ★★★★

本は極限状況のなかで、どのような意味を持つのか

実話に基づくフィクションということだが、アウシュヴィッツを舞台にしたユダヤ人たちの苦難と勇気、医師メンゲレたちドイツ人たちの行いなどは、リアルなものだろう。

本書最大の魅力は、主人公の14歳のチェコ人の少女ディタだろう。アウシュヴィッツにある8冊だけの秘密の“図書館"の図書係として、様々なものに目を配り、危険を冒しながらも、深く本の魅力を感じ、そのことを周囲に伝えようとする。どうしても傷んでしまう本の修復にも余念がない。本書自体は深刻な作品だが、独特のユーモアを醸し出す『兵士シュヴェイクの冒険』に関するシーンがとてもいい。わずかなパンと具のほとんどないスープが続き、飢餓という状況下にあっても、これらの書物や記憶された物語は、“囚人”たちの生きる励みになっている。プリモ・レーヴィが書いたダンテの『神曲』に関するくだりも思い出す。
そういった意味では、サルトルがかつて、飢えている子どもたちの前で文学は有効か、と問いかけたことに対するその一つの回答にもなっている。

ディタのヒーローであったヒルシュは亡くなるものの、ディタ自身が、親友のマルギットとともに生き延び、戦後になって人生を切り拓いていくことには安堵感を覚える(ほかの方が書いておられるが、ディタが移住した先でのパレスチナ問題を考えると単純に喜べないのも事実だが…)。
“本”が持つ力を改めて考えさせられる一冊である。
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感想/レビューhoramiriダンス研究所さん      from blog

先日、水木しげるさんが、戦前戦後に記した手記をもとに書かれた「戦争と読書」ってのを読んで、「戦時下では人は生き死にを考えまくるんだなぁ。」って思ったの。
そこで出会ったこの本。
生き死にを考える為に文字を求めるってのとぜーんぜん違う形で文字を求めていた!
子供たちが。
本厳禁、見つかったらガス室という状況の中で、命をかけて本を管理した女の子の話し。
幾何とか地図帳なんですよ。
そして、本厳禁だから大人たちが”生きている本”になってお話しを子供たちにしてあげてたんだって。
くーっ!
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感想/レビューkotaroyokoyamaさん         from booklog (男性)  ★★★
  
歴史というのは勝者に都合良く作られ、被害者はその被害を誇張して伝えるというのが当たり前のことではあるのでナチスによるホロコーストの実態は分からない。それでもユダヤ人の迫害があったことは事実だろう。
戦争の被害者はもちろんユダヤ人だけではない。日本人もたくさん被害を受けただろう。アメリカ軍によるものだけでなく、日本政府から被害を受けた人も少なくないはずである。
この本を読んだ感想としてはそぐわないかもしれないが、憎むべきはナチスドイツだけではなく戦争そのものだということは忘れずにいたいと思う。
この小説の感想としては、起承転結がなく延々と悲劇が繰り返されており、読んでいて長いなと感じた。

翻訳は素晴らしかった。  これが初翻訳とのことだがこれからたくさん翻訳をして欲しい。
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感想/レビューSU-ZUさん          from bookmeter

ユダヤ人収容所で希望を失わずに生き続けた、図書係ディダとなかまたちの物語。実話を基に描かれた小説。焚書をしたナチにとって、収容所にあってはならないもの=本。しかしユダヤの人々は、学校をつくり、図書館をつくった。筆舌に尽くしがたい過酷な状況下でも、明日のために懸命に生きる人々の姿から目が離せない。本は希望を失わないための命綱だから、ディダたちは本を必死で守り、寸暇を惜しんで読み、子どもたちに聞かせる。主人公が少女なので、中学生くらいから読めると思う。

平和な頃と収容所時代を行ったりきたりする展開や、主人公だけでなく魅力的なキャラの群像劇のような構成が、読ませる。その分深い感動はないけれど、このテーマで読みやすいと言うのは素晴らしいと思う。
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感想/レビューfutomiさん          from bookmeter   (女性   徳島県)

アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所。本を持つことも許されなかったその地で、子どもたちを集め授業や季節の行事を行っていた。隠し持った8冊の本を管理補修する役割を担った少女の物語。収容所へは赤十字が視察に来る。脱走者が内情を告白もした。それでも世界は、それほど恐ろしいことが戦線でなく、ポーランド国内で行われていることを想像できなかった。 糸で本を綴じ、ノリで補強し、ページのしわを手で撫でて伸ばすシーンが2度ほど登場する。
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感想/レビューぽけっとももんがさん   from bookmeter    (女性)

凄惨な強制収容所の中の家族収容所にあった秘密の学校の蔵書は、8冊の紙の本と「生きた本」が6冊。本は飢えも寒さも病も解決してくれないけれども、人を人らしく留めるために命懸けで守るに値する、とエディタは考えていたのだ。結局支配者が征服した地で焚書を行い、教育を制限するのは、理にかなっているということだ。でもそんな中でも必ずエディタはいる。
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感想/レビューhiroshiさん         from amazon        (男性 鎌倉市)  ★★★★★

絶望にさす希望の光、8冊の本

「ディタはそれらの本を見つめ、優しく撫でた。縁がこすれ、ひっかき傷があり、読み古されてくたびれて、赤っぽい湿気によるシミがあり、ページに欠けているものもあるが、何物にも代えがたい宝物だった。困難を乗り越えたお年寄りたちのように大切にしなければ、何世紀にもわたる人類の知恵が失われてしまう。本はとても貴重なものなのだ」

ディダはボロボロの本を丁寧に修復しながら図書係に打ち込んだ。父は痩せ細って死んでいった。妹は行方不明になった。病気がちの母は危うくガス室送りになるところだった。しかし、ディダは以前読んだ「魔の山」のみずみずしい文章を思い出しは自分を励まし、教師から聴かされた「モンテ・クリスト伯」の話に精神の不屈さを学ぶ。そして、彼女の愛読書は「兵士シュヴァイクの冒険」だった。ユーモアによる権力への抵抗と諧謔。明日をも知れぬ悲惨な日々のなかで本を読んでいる時だけは辛さを忘れ、希望を消さずにおれた。彼女は本によって自らを高め、強さを身につけていく。聡明で強い意志を持った姿には毅然とした美しさがあった。わずか14歳の少女だというのに。

冬が近づいた朝。空から白いものが舞い落ちてきた。雪かと思えば灰であった。「あの人たちが帰って来たよ」と母がディダに語りかけた。前日に家族収容所の半数がガス室送りになっていたのだった。同郷の親しかった人たちが灰になって空を舞っていた。その母は解放を前にして息をひきとり、ディダはすべての家族を失い独り取り残されたのだった。

この小説に登場する人々はみな実在の人物である。ホロコーストを計画し指揮したアイヒマン、生体実験を繰り返したメンゲレ、収容所長のシュヴァルツフーバー、残忍な女看守エリザベート。子どもの学校の指導者ヒルシュ、脱走してアウシュヴィッツの実態を告発したローゼンバーグ、レジスタンスのリーダーであるシュムレウスキ、ディタの友人マルギットとレネー。図書係のディタの物語を縦糸に幾多の加害者と被害者のエピソードが横糸となって1944年から45年に至るビルケナウ収容所の内部が描かれている。そのリアルさは昨年に公開された映画「サウルの息子 」に匹敵するのではないか。

ホロコーストのあまりの悲惨さに読み進めるのが辛かった。しかし、同時に胸を打つのは死を前にして収容所の子どもたちの教育に取り組む教師たちの姿であり、自らの命の危険もかえりみず本を守る少女の行動である。それだけに「自由」と「命」の大切さが胸に迫るのである。本が象徴する「知識と知性」の重要性も同様にかけがえがないのである。

アウシュヴィッツから生還したディタ・クラウスは、同じ体験をした青年と結婚し、イスラエルで幸せに暮らしている。

本書は数多いホロコーストを扱った記録や評論、小説の中でも屈指のレベルにあると思う。

著者アントニオ・イトゥルベ氏、 訳者である小原京子さんの労に感謝したい。

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感想/レビュー霜月さん          from bookmeter    (女性  岡山県)

彼女達に対し涙することは失礼なことのように感じる。どのような状況でも考える事を諦めていないか。他人に思いやりを持てるか。命を賭けても守りたいものを持っているか。そして行動できるか。アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所の中で学校があったという事実、そして更に秘密の図書館があり、図書係に任命された少女がいたこと。想像を絶するその環境に呆然とするばかり。そしてエディタに導かれるように私達は戦争が起こす悲劇や人間性をも奪われる醜さを知る。そしてまた逆に人間が持つ可能性や希望、本が与えてくれる生きる力をも。 ------------------------------------------------------------------------------
感想/レビューうっちゃんさん       from bookmeter    (女性  栃木県)

アウシュヴィッツに秘密の図書館、学校があったことは、初耳。フレディ・ヒルシュをめぐる逸話も初耳だった。実話をもとにした小説らしいが、小説なのかドキュメンタリーなのか。どちらかにきっぱりと決めてもらえるともっと楽しめたかも。
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感想/レビューgoronyanさん                from booklog         (女性)  ★★★★

アウシュビッツの内情について詳しく書いた本を読んだのはこの本がほぼ初めてで,残酷な描写に読み進めるのが辛くなりましたが,先が気になり,一気読みしました。

抑圧され,自由が奪われた状況の中で,書物がいかに希望を与えてくれるかを,これほど教えてくれる小説はないと思います。
実話に基づいたお話ですが,今まであまり知られていないのが不思議なぐらいです。

過去にこのようなおぞましく,悲しい出来事があったこと,そのような絶望的な中でも,希望を失わず,必死に生き抜いた人たちがいたことを忘れないためにも,幅広い年代の人に読んでいただきたい本だと思います。
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感想/レビュー花梨子さん         from booklog          (女性 関西) ★★★★

タイトルと表紙が気になって図書館に予約。
読んで知りましたが、これは実話を元に書かれた小説でした。実際にアウシュビッツに学校が存在してたそうです。非公式に図書室も。内容はタイトルから想像できるように悲惨な環境です。毎日のように死が隣にあって肉の焼ける臭いに満ちていて、それでも子供たちに学ばせよう、学校へ行ける日常を与えようと、大人や少年少女たちが戦う物語。何気ない毎日を過ごせる国と時代であることに感謝。
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感想/レビューヒマリさん         from bookmeter      (男性 北海道)

アウシュビッツでの不幸や悲惨の物語ではなくて、勇気と希望を持って戦った青年と彼に憧れ、本に無限の希望と未来を信じ、まもり続けた少女の物語。辛いけど暗い話じゃありません。作者が描きたかったのは二人への賛美と本の持つ力だったんだと思います。
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感想/レビューmokoさん         from bookmeter   (女性)

アウシュヴィッツに命を懸けて本を守った少女がいた…という実話をもとにした小説。一応フィクションなんですが史実とリンクさせているのでノンフィクションとの境がわからない。途中、アンネ・フランクが出てくる所くらいしか唯一フィクションだと感じないくらい。死への恐怖や極度の緊張さえも麻痺してしまう泥沼地獄のような日常の中で、勇気とユーモアを持ち続けたエディタ。アウシュヴィッツの暗く冷たい空と少女の軽やかな空想の対比。戦争は人を変える。人生を奪う。しかし想像力と希望を奪うことは出来ない…本が持つ力を感じる。
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感想/レビューコジさん           from bookmeter      (男性)

★★★★★第二次世界大戦後期、強制収容所で子供達の教育という手段でナチスと戦ったユダヤの人々。その中に持ち込みを禁止された本を管理する役目を担った少女ディタがいた。主要な登場人物達は実在し、ここに書かれた想像絶する出来事も事実に基づいている。あまりにも酷い状況に置かれ心が荒廃し希望を失う中、ディタの実直で懸命に生きる姿は読者に一筋の光明と希望を与えてくれる。今日、我々は数多ある本を自由に手に取り読むことができる。それが如何に尊い事で、それが永遠に続くように務めなければ行けないと再認識させてくれる。
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感想/レビューkn2loz4さん       from Instagram (PictaStar)

電車の中でボロボロ涙が出てきて困った。 読み終えて思うことは、自分があまりにも無知だということ。何も知らない、何も。 でもこの本は、ただ悲しい話じゃない。むしろ希望と勇気の話です。だからぜひいろんな人に読んでほしい。

スペインの作家さんです。翻訳がすごく良いと評判でした。ほんとにその通りでした。 素敵な言葉がたくさんあったけど、 あとがきに書いてあったこの言葉があれば十分かな。

あと気になった言葉は、コメント欄などに追加するかも。 * アウシュビッツ=ビルケナウに秘密の学校を開き、こっそりと図書館を運営するために命を危険にさらす人間がいたということを聞いても、感銘を覚えない人もいるだろう。勇気ある行動ではあるが、絶滅収容所でもっと差し迫った問題があるときに、それは無駄なことだと考える人もいるだろう。本では病気は治らないし死刑執行人たちを打ち負かす武器として使うこともできない。空腹を満たすことも、喉の渇きを癒すこともできない。それは確かに事実だ。人間が生き残るために必要なのは、文化ではなくパンと水だ。しかしただそれだけでは、人間性は失われる。もしも美しいものを見ても感動しないなら、もしも目を閉じて想像力を働かせないなら、もしも疑問や好奇心を持たず、自分がいかに無知であるかに思いが及ばないなら、男にしろ女にしろ、それは人間ではなく、単なる動物にすぎない。
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感想/レビューluna_pleresさん     from Instagram (PictaStar)

紙の本はなkならない。  絶対、絶対にだ。

・・・・・・・絶望しかないこの収容所において この8冊の本だけが 彼女とそれを囲む大人たちの 小さな光だった 大人たちは自分の覚えている本の話をする 子供たちは目を輝かせてその話を聞く 本を愛する少女の生きる強さ 周りにいるユダヤ人の人々の生き様 本はいつの時代も 私たちの希望であり宝物だった この少女は実在の人物 現在はイスラエルで暮らしています 実際に生き抜いた少女へのインタビューと綿密な取材 ノンフィクションとフィクションの狭間 本を愛する人々に読んでもらいたい 当たり前のように今本を読める私たちが どれだけ幸せなのか感じてもらいたい オススメです

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感想/レビュー松尾さんの HomePage から     最近読んだ本を紹介   ★★★★★

アウシュヴィッツはホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺)の象徴的な「絶滅収容所」のある所です。日本人には遠い国で起きたことのように思う人が多いかもしれませんが、そんなことはない。人間の狂気が起こした大犯罪の舞台の一つと思います。私は、今年この地を訪れました。とても重たい経験でしたが、ガイドをしてくださった中谷さんが「ここに来て、ここの空気を吸って、多くの国の人たちがここで出会うことが大切だと思います」と言われました。確かに、イスラエルから来た生徒たちとドイツから来た生徒たちがそれぞれの想いで同じ場所にいたのを見て、まずはこれからはじめることだと思いました。先日、広島にオバマ大統領が訪れた時も同じことという感慨を持ちました。
 本書の主人公はエディタ(愛称ディタ)というユダヤ人少女です。アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所の31号棟に子供たちのための学校や幼稚園があり、そこで図書係をやっていた人です。図書係といっても、ナチスは本を収容者たちが持つことなど許していません。まさに命がけの仕事でした。洋服の裏に秘密のポケットをつけ、そこに隠すのです。その図書館の蔵書数はすり切れてすぐに壊れてしまいそうな本が8冊でしたが、その本をこっそりと修理して貸し出したり、夜は秘密の場所に隠すのが仕事でした。その困難な仕事をわずか10歳そこそこの少女がつとめていたのです。
 収容されているユダヤ人やポーランド人、それに対してSS(ナチス親衛隊)の看守や医師たちがディタを中心に描かれています。待遇の悲惨さは、先日目にした場所で行われていたことなので、リアルさで息苦しくなるようです。その人々の中で、フレディ・ヒルシュというドイツ系ユダヤ人で、ナチスと交渉して学校などを作ることを認めさせた人物が印象的です。彼が陸上チームの選手たちに話していたことです。

~~~~「最強のアスリートは最初にゴールを切る選手ではない。倒れるたびに立ち上がる選手だ。腹が痛くても走り続ける選手。ゴールが果てしなく遠くても、あきらめない。ビリになっても、彼こそが勝者だ。一着になりたくても、かなわないことだってある。しかし君は最強の選手にはなれる。それは君次第だ。君の意思、君の努力次第だ。僕は君たちに催促の選手になれとは言わないが、最強の選手を目指してほしい」~~~

 物語の最後の方で、このフレディはレジスタンスの収容者から反乱のリーダーになってくれと頼まれます。武装したSSに対し、反乱が成功するとは考えられません。フレディは一人で考えさせてほしいと言って部屋に戻り、鎮静剤を大量に飲んで死んでしまいます。人々は自殺したのはフレディの弱さだと話しますが、ディタは最後まで英雄のフレディが自殺したとはどうしても信じられません。いろいろな人に聞きますが、結局謎のままで物語は終わってしまいますので、ちょっと消化不良でした。 

でも、安心してください。あとがきに著者はそのことついて書いています。
 本書は実話をもとにして、フィクションをまぶした作品です。多くの人に読んでほしい作品だと思いました。
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感想/レビューyukiさん

アウシュビッツの図書係 / アントニオ・G・イトゥルベ 読了
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本は秘密の屋根裏に続く扉だ。
扉を開けて中に入れば、そこは別世界。
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自由に本を読むことが出来る平和な毎日に感謝。また読みたい本が増えてしまった(嬉)
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感想/レビューかつみさん        from bookmeter   (女性)

実話が元の半フィクション。アンネと違いアウシュビッツでの生活を生き残った少女の話。スゲ分厚い読み応えあるほん。
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感想/レビューゆなさん          from bookmeter   (女性)

これは是非みんなに読んで欲しい本です。 今日から家族全員に回します。
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感想/レビューちびえみさん       from bookmeter

最初人物を把握するまで少し時間がかかったが、どんどんのめりこんでいった。実話をもとに描かれた小説なのでアウシュヴィッツがどれほどに残酷で過酷なところだったのかということが解ります。その中でも少しだけ特別な場所だった家族収容所で禁止されていた本を守る図書係をつとめていた一人の少女とその周囲の物語。彼女の聡明さ、生命力を支えたのは本の力であり想像する力。そして希望。
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感想/レビューShokoさん         from bookmeter   (女性  島根県)

1939年3月15日、プラハを震撼させた朝。ディタが子供時代に別れを告げなければならなかった日だ。アウシュビッツの子供専用の棟31号棟には所蔵数8冊の図書館があった。その図書係がディタ。「一瞬一瞬を生き延びること」が最大にして最上の目標であるアウシュビッツ・ビルケナウにおいて、本より大切なものは、もちろん食べ物や清潔な衣類など、あったでしょう。でも人間であることを思い出させてくれ、辛い収容所での生活を、ほんのひと時でも忘れさせてくれる本の力はやはり偉大だと思いました。
およそ人間の所業とは思えない事実に圧倒され、呼吸が苦しくなるほどディタの怒りと悲しみが胸に迫りました。この物語は事実に基づいて組み立てられたフィクションですが、物語だからこそ描ける真実があることを感じました。
ディタが読んでいた本も読んでみたくなりました。「兵士シュベイクの冒険」、「モンテクリスト伯」
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感想/レビューHiroko Oginoさん    from bookmeter    (女性  埼玉県)

ビルケナウ収容所にある時期まであった家族エリア。そこに8冊の本が大切に隠されていた。読むことができないロシア語の本も大切にする。先生達が語る「生きた本」ディタが思い返す本たち。過酷な環境で生きるために必要な本の力。昨年訪れた現地、場違いなほどかわいらしい絵が描かれたバラックを思い出しつつ読んだ。しかし、ヒルシュの希望でありディタの未来にもなるイスラエルが、また新たな悲劇を生み、その解決が未だ見えないことを思うと、物語世界とは無関係に、ほろ苦い後味になってしまった。
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感想/レビューにるさん          from booklog      ★★★★

図書館で借りた本。
実話をもとにしたフィクション。ほとんどがアウシュビッツに移送されてからの話ではあったものの、最初に戦争が始まった時の回想や、徐々に自由を奪われていく様子なんかもあり、こういう話は覚悟をして読まないと、やられてしまう。タイトルを見て、何も思わなかったけど、実はアウシュビッツの中に本があった事が異常なのだということをこの本で初めて知った。
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感想/レビューじょんたんさん     from bookmeter    (女性  栃木県)

実話をもとにしたフィクション。ほとんどがアウシュビッツに移送されてからの話ではあったものの、最初に戦争が始まった時の回想や、徐々に自由を奪われていく様子なんかもあり、こういう話は覚悟をして読まないと、やられてしまう。タイトルを見て、何も思わなかったけど、実はアウシュビッツの中に本があった事が異常なのだということをこの本で初めて知った。

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感想/レビューseraphimさん      from bookmeter    (女性  東京都)

実話を元にした物語。アウシュビッツ第二収容所が舞台。本を持つことを禁止されている中、8冊の本を命がけで守った少女のお話。あまりにも過酷で、常に死と隣り合わせで生きていかねばならない人々の姿に、読むのが辛かった。そんな状況の中、本に希望を見いだす、主人公のディタ。彼女の強さに胸が熱くなった。本の素晴らしさを感じることができた。読んでよかったと思える本だった。戦争の影に怯えずに、皆が安心して暮らしていける世の中を、心から望む。
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感想/レビューYanさん                    from booklog

いつも評価の星を付けるけれどこれはちょっと付けるのに躊躇してしまう。
所々に年月日が書かれていてその都度「早く45年になってくれ」と思いながら読んでいた。
読んでる私から見たら戦争は45年で終わる。という事を初めから知ってるからこういう読み方になってるのだけど、当時の人からしたら終わりなんてみえない、いつ終わるか判らない状況の中あの想像を絶する環境に身を置かされていた。「1秒でも長く生きる」その事がどれだけ難しい事か。
その中で主人公の少女は8冊の本を守り抜いた。
たかが本、されど本。
生きる希望・精神的な支柱になっていた本。
ディタのヒーローであるフレディ・ヒルシュ。
あんな別れが待ってるなんて。
ディタとマルギットの友情。
解放された時2人が交わした「またね」の言葉が本当の意味で使えた事がとても嬉しかった。
戦争は根こそぎ奪って行くものでしかないね。
得るものなんて何もない。
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感想/レビューガーガーさん       from bookmeter   (女性)    

『戦争なのよ、エディタ。戦争なの』戦争のせいで、満足に子ども時代を過ごせず、毎日死と隣り合わせの生活。そんな中でバレたら即ガス室行きなのに禁止されている本を守る図書係として働いているエディタは凄い。心が強い。最後に幸せな生活ができたようでよかった。学校に行ったり、お腹いっぱいご飯を食べたり、温かい布団で寝れるのはとても幸せな事なんだ。
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感想/レビューhasikkoamiさん    from blog      図書館の隣の映画館

可愛らしい表紙からは想像も出来ないほどの壮絶な物語。
本の持つ意味と力について深く考えさせられ、
絶望の果てに射す希望の光が実話だと言うことに救われる。
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感想/レビューいずみさん      from bokmeter   (女性)

事実に基づき書かれた小説です。ナチスの隠れ蓑的な家族収容所で、少女エディタは本当に命懸けで8冊の本を守り続けます。本書にもあるように、『本で病気は治らないし、空腹を満たすこと』もできないのですが、それでも、人間に生きていく希望を与えてくれると、信じているから。自由に外出でき、好きな本を読める生活がふつうに送れる世の中であって欲しいと、願います。

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感想/レビュー評者荒井寿恵学校図書館司書さん

秘密の図書館が語る迫害の記憶
1944年1月、アウシュヴィッツ=ビルケナウに設けられた家族収容所三十一号棟には、500人の子どもたちの学校とその秘密の図書館があった。
「図書館をやっていくには勇敢な人が必要だ」。責任者のフレディ・ヒルシュにこう励まされて、テレジンから移送されて来たばかりの14歳のディタは、図書係になった。蔵書はナチスの焚書を生き延びた8冊のみ。ディタの仕事は、授業をする教師に本を貸し出し、回収し、命懸けで隠すこと。教師にはシオニストや共産主義者もいた。「死の工場」になぜ「子どもたちのオアシス」が作られたのか。ディタはヒルシュの行動の謎を追い始める。
ヒロインのモデルは、かつて児童書『テレジンの小さな画家たち』(野村路子)で紹介された少女の一人、チェコ出身で現在はイスラエルに住むディタ・クラウス。迫害の記憶を伝える本も映像も数多あるが、本書の特長は、被害と加害の双方の体験を登場人物が直接語ることだ。逢い引きする親衛隊の若者、体を売る母親らにも事情と考えがあった。「悪の権化」のメンゲレやアイヒマン、女看守らが「凡庸な悪」(ハンナ・アーレント)に見えてくる。
ディタが読み聞かせる『兵士シュヴェイクの冒険』は、軍隊の陳腐さを笑い、愚者の抵抗を教えてくれる。
EU高校生会議の提案で始まったという「ドイツ・ポーランド共通歴史教科書」の試みや、被害と加害を問い直す世界史の流れにも沿った作品ではないだろうか。自分も今の世界の虜の一人、抵抗と協力の間をどう生きるかと考えさせられる。現代史を学ぶ中高生に読んでほしい。

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感想/レビューかしこんさん     ブログ もうひとつのグレープフルーツデイドリームから   (神戸市)

1994年、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所には、いつ来るかわからない国際

監視団の視察をごまかすためにつくられた子供たちのための学校が存在した。 そこには

青少年のリーダーであるフレディ・ヒルシュが尽力してつくり上げた蔵書8冊だけの秘密の

“図書館"がある(のちに、「物語を語れる者」が「生きた本」として登録されることになる)。

 フレディに図書係を任命されたのは、14歳のチェコ人少女ディタ。

 その仕事は、本の所持など禁じられているなか、ナチスに見つからないよう日々隠し持ち

授業の間に先生や子供たちに回し、一日の終わりには無事に“図書館”に戻すという危険な

もの。 だが、ディタはその任務も、本を手近に扱えることも誇らしく、うれしかった。

 これはそんなディタとその家族・仲間たちの(アウシュヴィッツにいるという<非日常>に

おける)日々の記録と、日常化したナチスによる強制収容所の運用が淡々と同時進行で

描かれている。 そんな、事実に基づく物語。


ディタにとって本の存在は
        まさに、「絶望に差し込む希望の光」。 現実を忘れて旅に出られるもの。

 途中から、描かれるところの少女たちの姿が、ブラッドベリが描くところの少年のように

思えてきた(少年のように描かれているのではなく、その本質に詩的に迫っているという

意味において)。 少年にとって少女たちは永遠の謎で、何を考えているかわからない。

けれど少女たちは考えている、少年以上に少年とは違う次元で。 少年と少女は、夢見る

世界の方向が違う、現実との折り合わせ方もまた違う。

 そう感じたら、全体の文章もどこかブラッドベリぽく勝手に思えてきて・・・もしも彼が

アウシュヴィッツを描いたならば(多分ありえないけど)、こうなった部分があるんじゃないか、

という気さえした。

 これは原文のせいなのか、翻訳者の技量ゆえなのかわからないけれど、なんとなく・・・

こちら側にフィットする何かがあったのだ。 とてつもない残酷なことをさらりと告げる一文の

軽さのようなもの。 現実なのにどこか現実ではないような。

 それをあたしは“詩的”と感じたのかもしれない。

 たとえば、地の文で、

> 1944年3月8日の夜、BⅡb家族収容所にいた3792人の収容者がガス室に送られ、
>アウシュヴィッツ=ビルケナウの第3焼却炉で焼かれた。

 と、この一文でその章をしめくくるように。

 これは「事実を基にした物語」であるが故に、<著者あとがき>もまた本文に含まれる。

 そこで語られる“現実の後日談”こそが読者をさらに打ちのめし(当時アウシュヴィッツの

存在に懐疑的だったユダヤ人に対して真実を告発したハンガリー系ユダヤ人との軋轢が

今尚残っているとか、結局同族内においても争いは消えない)、また(ディタのモデルに

なった女性がいまも生き続けていて、本に対する愛情を失わないでいることなどにも)

勇気づけられる。

 最近日本でまた<アウシュヴィッツ物>関連の映画が公開されるのが続く。

 一時期、「いつまで“ユダヤ人は弱い被害者”像を描き続けるのか」という論争があった

ことが忘れられたかのように(勿論、近年の映画はかつてのものよりタッチが違っている

ことは確かだが-『手紙は憶えている』なんてラストシーンの意外性のためにアウシュ

ヴィッツとユダヤ人という設定を利用しているといっても過言ではないかも)。

 でもこの本の立ち位置は少し違う。

 筆者がスペイン人だということもあるけれど、これは最後まであきらめなかった少女の

物語であり、“本”や“物語”がいかに過酷な現実から救ってくれるものであるかという証明

であり、アウシュヴィッツにおけるアンネ・フランク以外のアイコンの誕生でもある。

 これは歴史、大きな歴史年表に埋もれてしまいそうな、けれど忘れてはいけない歴史の

ひとコマなのだ。

 読んでよかった。 現在のイスラエルがしていることはどうなんだとかそういうことはまた

別にして、そんな気がした。
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感想/レビューK-dreamさん                    from bookmeter     (男性   香川県)

感動しつつ本を閉じた.タイトルから想像できることだが,凄まじい内容です.収容所内に特殊な区域があり,子ども達の学校があったということ,その中で秘密の図書館があり,司書の役をしていた子どもがいたということです.酷い現実ばかりですが,そのなかで僅かな本の世界かどのようなものであったかということが主題のひとつです.それがみごとに描き出されており,たいへん感動的でした.
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感想/レビューあずきさん                    from bookmeter     (女性)

アウシュビッツと図書館が結びつかず、随分前に図書館で予約してありました。たった8冊の本を命がけで守る少女ディタの事実に基づいた小説です。本はホロコーストの悲劇に一瞬の光を射す。希望となるものが歌であるなら小さな声で口ずさむ事ができるし、思い出なら心の中に置く事もできる。それが本であったというのが何とも言えず感慨深い。終盤にディタがベルゲン=ベルゼンに送られ時にはドキッとした。アンネフランクの最後の場所。この二人がもう少し早くに出会っていれば、とも思う。こんなに強く生きた少女が実在したというのも感動。
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感想/レビューびわさん                 from bookmeter    (女性  奈良県)

ユダヤ人だというだけで、自由も権利も尊厳も健康も何もかも奪われてしまう現実。そんな中で図書館があったということに、まずは驚かされる。そこで図書係として過ごした少女ディタ。彼女には辛いことが次々起こるけど、図書係としての経験があったからこそ、恐ろしい試練も乗り越える事が出来たんじゃないかな。物語に力があるというのは本当だ。
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感想/レビューなさん                  from bookmeter

★★★★☆     この世の地獄に所蔵数8冊の図書館があった。司書は14歳の少女ディタ。「戦争なのよ」の一言で持っていた大切な物すべてを取り上げられ踏みにじられ、あとは地獄の日々。それでも一瞬の生を積み重ねていかなければならない。本を眺めることでつらい現実を束の間でも忘れ、一瞬でも活力を取り戻す。このサイトに集う方なら共感する部分も多いかもしれない。
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感想/レビュー晴さん      Twitter   (東京都)

「アウシュヴィッツの図書係」って本があまりにも過酷で困難で読んでて涙が出るんだけど、主人公のエディタの勇敢さや聡明さに救われて勇気をもらえる本でもある。アンネフランクと並んでエディタももっと注目されるべき少女だと思う。
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感想/レビューmichiさん    from bookmeter (女性)

★★★★☆   アウシュビッツについては関心を持って色々勉強してきたが、あの絶滅収容所に家族収容所があり、しかも図書館まであったとは驚いた。たった8冊の秘密の図書館。本は独裁者にとって危険な物だから徹底して迫害される。本好きな人なら8冊の本がどんなに大切で愛おしいものか分かるだろう。本ではお腹は膨れない。けれど本で何かを考え、何かを知り、空想の翼を広げられる。そのことがあの地獄のような場所でどんなに価値を持っていたか。この本を読めて良かった。
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感想/レビュー風鈴さん     from bookmeter (女性)

アウシュビッツ強制収容所と言うとアンネをすぐ思い出すが、図書係に惹かれて読んだ。人間性を否定された極限の環境のなかでたった8冊の本を守り抜く。常に死と隣り合わせの中知恵と勇気で家族、友を守ろうとする少女ディタ!ナチスとの闘いを生き抜いた英雄である!
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感想/レビューshifu0523さん    from booklog       ★★★★

当事者の証言を元に書かれた小説なだけに、ノンフィクションといってもいい迫力がある。想像も付かない悲惨と絶望が語られるが、淡々とした記述のおかげでどうにか読み進めることができた。感情がほとばしるのは最後。「人生」を取り戻したときようやく過去に色が付くのではないだろうか。極限状態のなかで、「本」の果たす役割の大きさを思う。人はパンのみにて生きるにあらず。この後にはもちろん神への信仰の大切さが続くのだが、それとともに心を活かすものが必要だ。だからこそ、人間性を奪うために、支配者は文化を破壊するのだろう。
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感想/レビューmoaさん     from Line blog   (京都府)

アウシュヴィッツの図書係という本を読みました

事実にもとづいたフィクションなのだけど
読んでいると心がぎゅっと苦しくなる

主人公が生きる世界に
寄り添わせてもらうかのように
あるいは
あまりにすさまじい世界に
引きずり込まれるように
抜け出せなくなるかのように
息つく間もなく一気に読みました

人間どころか生き物としての尊厳すらなく
ただ恐怖と絶望の日々の中で
彼らがどのように
希望を持とうとしたのか
死に絶え、また、生き延びたのか

涙なくして読めない、なんて言葉は
もう本当に安っぽく聞こえてしまうけど
心がぎゅっとなって涙がこぼれてくる
理屈や、感情さえも超えたところで
苦しくなって涙があふれてくる

こんな事実があったのだということを
信じられないくらいの人が亡くなったことを
それでも生き続けた人がいたことを
信念を捨てなかった人がいたことを

都合のいいことしか覚えていられない人間は
それでも、決して忘れてはいけない
なかったことにしてはいけない
そう、思わせてくれる本です。
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感想/レビュー武田健事務所HPから

作者はスペイン人ですが、翻訳も素晴らしく、一気読みしました。
アウシュビッツで行われたことは情報としては知ってはいるものの
改めて、ストーリーとして読んでいくとそれはそれは、しんどいものです。
それでもジェノサイドにはどうしても興味を持ってしまうのです。
どうして、普通の人々がこんなにも残虐行為ができるのか。
そして、この最低最悪の環境と状況の中、
どうやって正気を維持し、希望が持てたのか。
もし自分がそこにいたらどうなるのか。
その答えの一つが「本」にあるのかも知れません。
そして、読み終えた後にはカタルシスのような感覚が生まれます。
これは映像化して欲しい作品です。
「憎しみと愛は自分で選ぶことは出来ない」
この言葉がぐっときました。
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感想/レビュー有栖川結子さん      blog 愛書家の楽園 から

 実話に基づいた作品というだけあって、
読んでいても感動の連続。絶望にさす
希望の光。それはわずか8冊の本。
 主人公のエディタ・アドレロヴァ(
ディタ)は、チェコ出身のユダヤ人少女。
彼女の行動を読んでいくうちに、とても
責任感が強く、芯の通った女の子である
ことが伝わってくる。

 常に死と隣り合わせの日々にあって、
本など何の役に立つというのか。そんな
風に思う人もいるかもしれない。だが、
私はディタの気持ちが少し解るような
気がした。

 辛く過酷な立場に置かれている人間
にとって、本はささやかな現実逃避、
いまの辛さをほんの一瞬忘れ、夢の別
世界へ身を置くことができる。私もいま
までを振り返ってみると、とても辛い
時に本たちが心の支えとなることが何度
もあった。そして、ずっと本棚に並んで
いる愛読書には、そんな悲しみや苦しみ、
涙などたくさんの想いが詰まっている。

 本書の中では、フロイトの『精神分析
入門』を思わせる内容も登場、少女の
ディタが初めて触れたフロイト・精神
医学という分野への好奇心などがいき
いきと表現されている。思えば、私も
かなり若い頃、医師の診察を待つ間に
何気なく病院の本棚にあった『精神分
析入門』をみつけてページをめくったら、
たちまち世界が変わったような心地が
したものだった。また、A.J.クローニン
の『城碧』に対するディタの思いも、
読んでいて清々しい気持ちがする。

 時折、紙の本を優しく撫でながら、
いつまでもこの感触を感じていたいと
祈るような気持ちになる。電子書籍では
決して得られない貴重なものが、紙の本
にはたくさん秘められているのだ。

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感想/レビュー晴さん                 twitterから

「アウシュヴィッツの図書係」って本があまりにも過酷で困難で読んでて涙が出るんだけど、主人公のエディタの勇敢さや聡明さに救われて勇気をもらえる本でもある。アンネフランクと並んでエディタももっと注目されるべき少女だと思う
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感想/レビューrinpeiさん            from bookmeter   (男性)

この物語に登場する人々は、みな凄まじい歴史のエネルギーに翻弄された人ばかり。別の時代に生まれていたら、別の出自だったら、それを思うと・・・。
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感想/レビューcocolapin-shizukuさん   twitter    (埼玉県)

ボリュームのある本だった。ホロコーストを読書から描き収容所内の群像劇でもある。スペイン語あり、英訳無し。素晴らしい本に和訳してありがとうと思う。
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感想/レビューえい きときと さん     from bookmeter

数日間かけてゆっくりと読みました。その間中、私もずっと暗い闇の中にいた感があります。モデルになった方々には、いつ終わるかわからない絶望の中での唯一の救いが本だったようで、「紙の本が○冊と生きた本が○冊ある」という表現が、現実との違いを痛感させられます。またノンフィクションではないものの、「フィクションは時として他の方法では語れない真実が隠されている」という言葉に、この本自体でも厳しい表現があったものの、現実ではもっと厳しかったであろうと、色々と想像されて胸が痛くなり、平和の有り難味を感じた本でした。

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感想/レビュー菱沼さん           from bookmeter    (女性  茨城県)

ディタの性格についていけない部分もあったけれど、読んでいる途中で気づいた。私は本がなければ生きていけない。物語が読めなくなったら生きていけない。わずか8冊の本を、命をかけて守った少女が、過酷なアウシュビッツに実在したことは、それだけで「本は希望」であることを物語っているのではないか。どうして人間は同じ人間に対してこんなひどいことができたのか。ここから何も学ばずに、また戦争に向かう世界を作るほど人間は愚かなのだろうか。そうは思いたくない。希望を持ち続けたい。
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感想/レビューkyさん                  from bookmeter

少女ディタの強さに心打たれる。そしてそのユーモアにも。若き指導者ヒルシュの死の真相は謎のまま残る。第三者の視点と、登場人物の内心とがあり、どういう最後になるのか予想が難しく、ハラハラし通しだった。すなはち、語り手=ディタならば生き抜いたことが事前に読み手に分かるが、第三者の視点ならば主人公の死もありうるかと。極限状態での本の役割、読書の意味、人間と本、など。ナチスドイツの様々な罪悪を白日に曝す。最後の方でアンネフランクも登場。およそ事実に基づく。当方をお気に入り登録の全ての皆様に強くお勧め。------------------------------------------------------------------------------
感想/レビューchakiさん                 from bookmeter    (女性 東京)

おすすめされて読んだ1冊。アウシュヴィッツって言葉だけで何も言えなくなりそうだけど、その中で懸命に本を守り、いつくしむディタ。数冊のボロボロになった本を直す丁寧な所作に切なくなる。「戦争なのよ」と繰り返される言葉の重さと、想像を絶するそして恐ろしい描写、でも子供たちの無邪気さそして、想像することで生きる事に希望を持つ。考えがまとまらないけど、これからもたくさん本を読もうと思った。
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感想/レビューAkiさん                  from blog    ふくろう日記・別室    (女性 埼玉県)   ★★★★★

これは、ディタ・クラウス(1929年・プラハ生まれのユダヤ人)の実話をもとに書かれた小説です。
アウシュビッツ・ビルケナウ強制(絶滅)収容所の31号棟には、ユダヤ人の子供500人が収容されていました。1944年、若者アルフレート・ヒルシュはそこに学校を建てた。子供たちを20位のグループに分けて、それぞれに教師を付けた。もちろんユダヤ人の。教師たちは小声で語る。狭い収容所で、それぞれの教師の講義が邪魔をしないために。黒板も机もない。わずかな椅子があるだけでした。
そしてさらに秘密の図書館を作った。たった8冊の本だが、その図書係になったのが、「ディタ」という少女だった。彼女の仕事はたった8冊の本を教師と子供に貸し出し、傷んだ本の修理をして、毎晩違う場所に隠すことだった。もちろん彼女も秘かにそれらの本を何度も読んだ。

収容所の移動がある度に、人々は選別される。体力のある者とない者にわけられていく。そしてない者が殺される。ある者は移送される。この繰り返しで人々は淘汰されてゆく。病気で死んだ者は、大きな穴に投げ込まれるだけだ。移動先の環境、食糧事情、労働条件はどんどん悪化するだけだ。

別棟にいる父が死に、移動先で母が死に、独りぼっちのディタは、なんとか過酷な日々を生き抜き、ナチスの魔手から解放される時を迎えた。

440ページにもなる長編小説であった。中間部では辛くて読めないという思いもあったが、終章に向かってわずかな光が見えはじめたあたりから、一気に読み終えました。こんなことは二度とあってはならないと思うのは勿論のことだが、過酷極まりない状況のなかでも、ディタは懸命に生きた。その後の人生も……。そこに消えることのない「光」を見た。
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感想/レビューあまがけさん         from blog      (女性  学校図書館ボランティア)

「アウシュヴィッツの図書係」を読んだ♪

タイトルから引く方も少なくないだろうが、後に続く「図書係」
というが気になる方も。
私もその一人、8冊の本が収容所の中でしっかり管理され
ていたという事実。
図書係は主人公の少女。
ナチスに分からないように本を貸し出し、修理もした。
家族収容所という子どもと家族が一緒にすごせる施設で。
 
そこでは文字が教えられ、合唱の発表会があり、先生役もい
て、ナチスの許可の元、ユダヤ人達はその活動を自主的運営
していた。
 
ナチスには赤十字など国際的な団体から施設の目的を隠すこ
とではあったが、わずかな文化的な刺激は子どもたちも、大人
達にも大きな影響を与えた。
 
中には生きる本とよばれる人たちがいた。
子どもたちに向かって、お話をした人たちだ。
ユダヤ人達の母語はいろいろだった。
ドイツ、チェコ、ハンガリー、オランダ等。
言語は通訳され、お話しは広がっていった。
 
食べ物も乏しく、衛生環境は劣悪、一定期間を過ぎれば特待
遇の環境から出て行かなければならなかった。
 
ある日、リーダー役の若者が汽車に乗せられる少女の前から
消えた。
多くの仲間や子ども、友人もその中にいた。
異を唱えることはもちろん、拒むこともできない。
どうせみんな死ぬのなら、反乱という言葉が駆け巡る。
なぜか、リーダー役の若者は自殺した?
ありえない・・・と少女は考える。
 
半年後、アウシュビッツはイギリス軍によって解放される。
少女は80才を過ぎて今も元気だ。
自分の体験を本にして、テレジン収容所記念館に置いている。

紹介した本は、本文だけで430ページ近く。
ひどく残酷な場面はことさら描写を少なくしている印象。
どんどん展開していくので、少年少女にも読んでほしいという
意図を感じる。
 
8冊がどんな本だったのか、どうぞ読んでみて下さい。
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感想/レビューYuquari Miyamotoさん     from bookreco

次々読了。
何冊同時読みしているかなかば呆れてしまいます。
図書館で予約していましたが前後に予約がいっぱい入っているのでかなり集中して読みました。

ナチスにより9歳から17歳までゲットーで多感な時期を過ごさねばならなかったディタという痩せっぽちに女の子。実在する女の子の話です。

図書係、と言う響きと裏腹に看守に見つかれば命を落としかねない仕事を買ってでたディタ。図書館と言っても地図帳、幾何学の基礎、H.Gウェルズの世界史観、ロシア語文法、フロイトの精神分析入門、表紙のないロシア語小説、そして子供が読む本でないとされた兵士シュバイクの冒険。そして『生きる本』としてアメリカ先住民の伝説、ユダヤ人の歴史、マグダ先生の語るニルスの冒険は何度も聞くのに子供たちは笑い声を立て聞きます。端折れば抗議すらします。後半にはマルケッタ先生語るモンテクリスト伯も加わります。

子供時代らしい時代を過ごせない子供たちは笑うことで力を得るようです。もう飽きちゃったというこ憎らしい子供らしさは描かれない。本当に一瞬でも苛酷な現実から逃れているのかもしれない。

この子供たちのための学校を運営するのがフレディ・ヒルシュ。彼はディタの生涯に大きな力を与えます。彼には仲間に打ち明けられない秘密がありました。ネタバレになるので書きませんがディタも事実に驚きます。しかしフレディへの尊敬は揺るぎません。

人生に、笑いは何と大きな力を与えるのでしょう。子供向けでないとされた兵士シュバイクの冒険にディタのみならず誰もが現実をユーモアで笑い飛ばします。ホンの一瞬だけですが飢えや不衛生な環境、身近な人の死に打ちのめされても生きた彼女たち。

イスラエルで幸せに暮している現在のディタ。良かったと思うと同時にイスラエルを建国したがため新たな悲劇も生んだことも現代人は知るところなのですが。

新たな排他的には思想がこの様な悲劇を生まなければならよいのですが人間にはときに理性では止められなくなってしまった間違った選択にやはり服従してしまうのでしょうか。間違っていることを間違っていると主張できない弱さが自分にはありますね、残念ながら。でもやはりどこかで言わなきゃいけないと言う気持ちを忘れないでいたい。

クリスマスと言う言い方に問題あるかもしれませんが平和な日であって欲しいです。

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感想/レビューにゃーご松崎さん       from bookmeter   (女性  神奈川県)

どこまでが史実でどこからがフィクションか。あるいはフィクションこそ史実より真実を伝える技であるか。最近隠れ家のアンネは通報ではなく偶然によって連行された記事を読んだ。事実をどこまでも知ろうとする意志と書き手によって了解される世界と読み手によって多分にバイアス含む受動の複雑な感懐をかこつ。よって、主人公ディタをある意味ディタになしえたヒルシュの複雑な人物像と藪入りの死因、彼の意志のゆくえの描き方がリアル感をもつ。『夜と霧』、映画「ビューティフルライフ」、『縞模様のパジャマの少年』などを思い出す。
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感想/レビューくろろさん                  twitter   (新潟県)

「アウシュヴィッツの図書係」って本が面白い。戦時中のユダヤ人の少女が主人公の話だけど、本の話かと思ったら普通に戦争の話だし、えぐい表現大丈夫だったら読んで損は無い感じ。
おすすめ。
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感想/レビューこーたんさん                twitter

「アウシュヴィッツの図書係」を読了。

素晴らしいの一言。

この本に出逢えたことに感謝。

この本が自分の部屋の本棚に並ぶ。嬉しい。一生、大切にします。
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感想/レビュー月に6ペンスさん       from bookmeter (男性 大阪府)

アウシュビッツ収容所やナチスの事は学校で習ったり、テレビで見たりしたことはあるが、それに関わる作品を読ん -----------------------------------------------------------------------------だのは初めて。生きるか死ぬか、食うか飢えるかの状況で学校や図書館を運営することに何の意味が有るのか。そういった疑問を投げかける人もいるなかで、どんな環境でも最後まで希望を捨てず、生きる事を諦めない人々に感動した。常に笑顔で居ることが絶望的な環境に対するささやかな抵抗だ、というのがとても気に入った。
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感想/レビュー杏子さん

やっと読めたことに感謝を!アウシュヴィッツでたった8冊の本を守るために命をかけた一人の少女の生涯が胸を打つ。そしてこの物語が実話を元にして描かれていて、ここに書かれたことの多くは本当に近いということ。あらためて戦争の恐ろしさがこれでもかというくらい心にぐいぐいと食い込んできた。この物語がどこまで史実なのか?はもはやどうでもいい。戦争の爪痕を本というあらたな断面で描き出した本書は長く読み継がれるべき。真に勇気ある女性ディタの物語は読書の素晴らしさ、文学の重要性について知らしめていて、その点でも素晴らしい!
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感想/レビューçiğdemさん            twitter

『アウシュヴィッツの図書係』読了。強制収容所の内部が描かれているので衝撃的な描写が多いけど、これは大勢に読まれるべき本だと思う。戦争の悲惨さ、その中でも希望を失わないことの大切さなど、多くのことを教わった気がする。このカバーも好き。
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感想/レビューçiğdemさん            twitter

『アウシュヴィッツの図書係』読了。強制収容所の内部が描かれているので衝撃的な描写が多いけど、これは大勢に読まれるべき本だと思う。戦争の悲惨さ、その中でも希望を失わないことの大切さなど、多くのことを教わった気がする。このカバーも好き。
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感想/レビューçiğdemさん            twitter

『アウシュヴィッツの図書係』読了。強制収容所の内部が描かれているので衝撃的な描写が多いけど、これは大勢に読まれるべき本だと思う。戦争の悲惨さ、その中でも希望を失わないことの大切さなど、多くのことを教わった気がする。このカバーも好き。
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感想/レビューçiğdemさん            twitter

『アウシュヴィッツの図書係』読了。強制収容所の内部が描かれているので衝撃的な描写が多いけど、これは大勢に読まれるべき本だと思う。戦争の悲惨さ、その中でも希望を失わないことの大切さなど、多くのことを教わった気がする。このカバーも好き。
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感想/レビューマッキ―さん      twitter(和歌山県)

過酷な環境下で、図書係を任された1人の少女。その少女の経験を通して語られる真実。改めて、本、活字の持つ力強さ、夢、希望というものを思い知らされた。権力者に迎合するマスコミには、その意味を再認識して欲しい。
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感想/レビューかしこんさん      from honto     ★★★★★

1994年、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所には、いつ来るかわからない国際監視団の視察をごまかすためにつくられた子供たちの為の学校が存在した。 そこには青少年のリーダーであるフレディ・ヒルシュが尽力してつくり上げた蔵書8冊だけの秘密の図書館がある(のちに、「物語を語れる者」が「生きた本」として登録される)。
フレディに図書係を任命されたのは、14歳のチェコ人少女ディタ。
その仕事は、本の所持など禁じられている中、ナチスに見つからないよう日々隠し持ち授業の間に先生や子供たちに回し、一日の終わりには無事に“図書館”に戻すという危険なもの。 だが、ディタはその任務も、本を手近に扱えることも誇らしく、うれしかった。
これはそんなディタとその家族・仲間たちの(アウシュヴィッツにいるという<非日常>における)日々の記録と、日常化したナチスによる強制収容所の運用が淡々と同時進行で描かれている。 そんな、事実に基づく物語。

途中から、描かれるところの少女たちの姿が、ブラッドベリが描くところの少年のように思えてきた(少年のように描かれているのではなく、その本質に詩的に迫っているという意味において)。 少年にとって少女たちは永遠の謎で、何を考えているかわからない。 けれど少女たちは考えている、少年以上に少年とは違う次元で。 少年と少女は、夢見る世界の方向が違う、現実との折り合わせ方もまた違う。
そう感じたら、全体の文章もどこかブラッドベリぽく勝手に思えてきて・・・もしも彼がアウシュヴィッツを描いたならば(多分ありえないけど)、こうなった部分があるんじゃないか、という気さえした。
これは原文のせいなのか、翻訳者の技量故なのかわからないけれど、なんとなく・・・こちら側にフィットする何かがあったのだ。 とてつもない残酷なことをさらりと告げる一文の軽さのようなもの。 現実なのにどこか現実ではないような。
それを私は<詩的>と感じたのかもしれない。
たとえば、地の文で、

1944年3月8日の夜、B2b家族収容所にいた3792人の収容者がガス室に送られ、アウシュヴィッツ=ビルケナウの第3焼却炉で焼かれた。

と、この一文でその章をしめくくるように。
これは「事実を基にした物語」であるが故に、<著者あとがき>もまた本文に含まれる。
そこで語られる“現実の後日談”こそが読者をさらに打ちのめし(当時アウシュヴィッツの存在に懐疑的だったユダヤ人に対して真実を告発したハンガリー系ユダヤ人との軋轢が今尚残っているとか、結局同族内においても争いは消えない)、また(ディタのモデルになった女性がいまも生き続けていて、本に対する愛情を失わないでいることなどにも)勇気づけられる。

最近日本でまた<アウシュヴィッツ物>関連の映画が公開されるのが続く。
一時期、「いつまで“ユダヤ人は弱い被害者”像を描き続けるのか」という論争があったことが忘れられたかのように(勿論、近年の映画はかつてのものよりタッチが違っていることは確かだが)。
でもこの本の立ち位置は少し違う。
筆者がスペイン人だということもあるけれど、これは最後まであきらめなかった少女の物語であり、“本”や“物語”がいかに過酷な現実から救ってくれるものであるかという証明であり、アウシュヴィッツにおけるアンネ・フランク以外のアイコンの誕生でもある。
これは歴史、大きな歴史年表に埋もれてしまいそうな、けれど忘れてはいけない歴史のひとコマなのだ。
読んでよかった。 現在のイスラエルがしていることはどうなんだとかそういうことはまた別にして、そんな気がした。

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感想/レビューよつばさん      from bookmeter

アウシュヴィッツに、赤十字の目をごまかすために作られた家族収容所と学校。過酷な労働と飢え、死と隣り合わせのアウシュヴィッツの中で、その場所では束の間の生の輝きがあった。本を読み歌を歌い、イタズラをしたり恋をしたり。本を持っていることが見つかったら殺されると知りながら、図書係の仕事を全うした少女。家族収容所や学校が閉鎖された後、さらなる状況の悪化でどんどん衰弱する体、感情の消滅。極限状態の中、想像することだけが生き延びる術だった。『夜と霧』とともに、いつかは子どもたちに読んでもらいたい。
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感想/レビューみぽさん       from bookmeter (女性)

2016#83 読後に、主人公のモデルとなった方がご存命と知って驚き。ユダヤ人収容所に関しては、当然かもしれないが、経験した一人一人に違った物語がある。そして、それを知れば知る程、いろんな側面から実態が少しずつ浮かび上がってくる。たった数冊のボロボロの本を大切に管理し、それが多くの人々の精神的支えになった。多読することだけが読書ではない。限られた情報の中でも、人は多いに想像力を働かせることができる。今を生きる私は、単純に、盲目的に、読書が良いものだって信じ過ぎた気がする。本との向き合い方を再考しよう。

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感想/レビューかわせさん      from bookmeter (女性 山梨県)

最初は遅々として読み進まなかったが、60pをこえたあたりから面白くなって大分ペースが上がった。事実をもとにしたフィクション。アウシュビッツの過酷さはひしひしと伝わってくるが、表現自体にグロテスクなものはそれほどない。ミステリのような部分もあり、冒険のようなスリルもあり、それが主人公の人生を追っていると思うと驚く。
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感想/レビューChさん        from bookmeter

新年1冊目。テーマは重いが、本そのものがここにあって良かったと思える。分厚いけど読みやすいので一気に読めた。実話を基にしていて、登場人物についてあとがきで触れられているので、本当にこういうことが起きていたんだと実感できる。年末『ヒトラーの忘れもの』という映画を観たところなので、立て続けにWW2実話もの(しかも異様に重い)になってしまったが、読んで良かった。
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感想/レビュー文明 さん      from Amazon

自身の人生との関りで触れるべき一書 ~~~ 「人類の教科書」の一冊と思う。

「フィクション」という一語が気になる方がおられるかもしれないが、膨大な関連資料を背景に、それでもなおかつ描けない部分を徹した真摯さによって補った一書であることを忘れてはならないと思う。何よりも、「図書係」ディタ・クラウス氏が実在の人物であり、原著者イトゥルベ氏がこの一書の扉ページに存命(2012年で80歳)である「ディタ・クラウスへ」と記していることを忘れてはならないであろう。そして、ディタ・クラウス氏と共に強制収容所をサバイヴされた故人となられたオータ・クラウス氏の著述との関連で著者が記した一句「フィクションには時として、ほかの方法では語れない真実が隠されている」(433頁)を看過してはならないであろう。

今日まで、私はナチスの強制収容所について、DVDや映画で「夜と霧」・「コルチャック先生」・「シンドラーのリスト」を観てきた。展示ではフリードル先生を知った。書籍ではV.フランクル氏の『夜と霧』・『それでも人生にイエスと言う』・『フランクル回想録』等を読んできた。野村路子氏による著述も衝撃である。

だが、『アウシュヴィッツの図書係』は、それでも知りえなかったナチスの強制収容所の断面をまざまざと見せてくれる。

恐ろしい、実に恐ろしい一書である。そして、人間の尊厳が描かれた一書である。図書館のわずか8冊の書籍については38-39頁に描写されているが、著者が敢えて記した「もしも美しいものを見ても感動しないなら、もしも目を閉じて想像力を働かせないなら、もしも疑問や好奇心を持たず、自分がいかに無知であるかに思いが及ばないなら、男にしろ女にしろ、それは人間でなく、単なる動物にすぎない」(426-427頁)という一節は、アウシュヴィッツのディタ・クラウスの思いを抉り出したものと思う。

「感銘」とは言いたくない。それは、あまりにも軽すぎる。「感動」も違う。的を得ていない。自分の人生とのかかわりで、この一書が、今後、自分自身の生き方がどのように変わるのか。おそらく、これは、この一書に触れる人々の課題となるのではないだろうか。

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感想/レビューあいあいさん       twitter

新年早々ガツンとやられた本。これはすごい本。史実に基づいて作られた物語。本を知るものは最後の希望を作る。そしてこのモデルの方がほんの少し前まで生きてた事を知る。ティダはもっと知られるべき人です。
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感想/レビューイエカ ザマクさん    日本翻訳大賞 推薦作品リストからの抜粋

【推薦文】
アルベルト・マングェル氏の『図書館―愛書家の楽園―』からこの物語が生まれ、あますところなく翻訳された1冊が読めることに心から感謝しています。
その感謝が、この物語であったからこそのものでもあると、強く思っています。

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感想/レビュー牛込逍遙さん      日本翻訳大賞 推薦作品リストからの抜粋

【推薦文】
主人公のディタは、チェコ出身のユダヤ人少女。収容所の子供たちのための学校で、密かに本を隠し持ち、危険を犯しても、必要な人に届けるという図書係をしている。強制収容所の過酷な生活の中で、少女が洞察する人間の本質、理不尽な戦争。極限においてもまっすぐに、使命感をもって図書係を全うする姿は凛々しい。作者はスペインのジャーナリスト、アントニオ・G・イトゥルベ。実話をもとに書かれた小説だ。様々な地方から収容されたユダヤ人たちの出自、言語は多様、ごくわずかな蔵書の言語もヨーロッパのいろいろな言語だが、それぞれが聞こえてきるようだ。エピソードとして記されるディタの波瀾の人生も、今の世界につながっている。少女の視点を通して描かれるこの物語は、子供にも大人にも読まれる価値があると思います。
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感想/レビュー八百さん                   from booklog      (男性) ★★★★★

一冊の本の持つ力…始まりはスペインのジャーナリストがアウシュビッツ博物館の売店で手にした名もなき作家の本。
そしてそこにある史実をもとに描き上げられた感動の物語を大使館が日本に持ち込みそれに注目した出版社が熟練の訳者の協力を経て生まれたのがこの一冊、どこが欠けても私たちの国の書架に並ぶことはなかっただろうことを思うとこの本のテーマの持つ執念を感じざるを得ない。
私たちは知っておかねばならない、そこで何が行われていたのかを、そしてそんな絶滅収容所にあっても汽車に乗ってバケーションに出掛けられる偉大な本という存在があることを。 ------------------------------------------------------------------------------
感想/レビュー京都府立高教組学校職員部司書委員会 (RK)

 第二次世界大戦のドイツにおいて、ナチスがユダヤ人虐殺のために複数の収容所を作っていたことは私たちもよく知るところです。ですが、その収容所の中に図書館があったことは知っていますか?特に有名な「アウシュヴィッツ・ビルケナウ絶滅収容所」。その中に、たった8冊の蔵書しかない図書館があったのです。図書係を任されたのは14歳の少女・ディタ。彼女の仕事は、毎日違う場所に本を隠すことでした。
 正直、暗くて重い本は苦手で、読み進めるうちに何度も挫折しそうになりました。アウシュヴィッツの悲惨な状況はやはり辛く、早く戦争が終わらないか、記された日付にハラハラします。けれど、この中には読む価値のある大切な言葉がたくさん書かれています。希望がない中で本を読むということ、明日が来なくても勉強すること。本の持つ力を再認識させてくれます。
 スマホさえあれば…という世の中にやる気を奪われつつある今だからこそ、私たちの仕事に勇気を与えてくれる一冊でした。
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感想/レビュー関東学院中学校高等学校|校長室より

ポーランドのオシフィエンチム、

ドイツ名アウシュヴィッツ収容所。

八冊の本と六冊の生きた本。

紙と活字と地図と数式、

そして声が、

子どもたちを、

現実と隣り合わせの世界を

往復させる。

実話を基にした作品、

臨場感ある小説です。

『アンネの日記』と併せてね 
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