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『芸術と権利 スペインと日本の違い』  



世界は今空前のアートブームだとか。

アジアの現代アートは欧米で大人気ですし、 中国のアートオークションも活況を呈しているようだ。 日本の新聞でも、クリエーターさんの某作品がサザビーズで幾らで落札などというニュースは珍しくなくなった。

アート界において嬉しい潮流であることは間違いないが、そこで かねて気になったことがある、 アートと著作権、つまり権利 とのかかわりにスポットを当ててみることにする。
以前、 ダリの権利問題に遭遇した経験がある。 それが係争問題に発展した。 有名な作家であればあるほど こじれるのが常だ。 この件はおそらくまだ、解決してないのではと思っている。  スペインの法律関係に詳しい方のお話を元に、要約すると以下のような関係が見えてくる。

一枚の絵を買ったとする。 この絵には著作権と作品の所有権という権利がある。 買った人は、所有権を得るわけである。 具体的には、この作品を展示・貸与・譲渡して収益を得ることができる権利である。

しかしこの絵をポスターやカレンダーにするような著作権は作者の権利で、日本においては、特別にこの権利の譲渡契約を結ばない限り、作者に帰属する。

一方、スペインでは、作者には道徳権利があり、この権利を譲渡、売買することは絶対にできないようだ。 例えば日本人作家がスペインで個展をし、販売した作品に関して作者には以下のような権利が生じるとのことである。

・作者がその作品がどのように普及すべきかその方法を決める権利 −−−
 これはその作品が作者の意思によって初めて展示されたときに生じる権利で、例えば作者がその作品を以後一切公衆の場で展示しないという判断をした場合、作者の生存中と死後70年間保護される権利。

・作品の作者名の表記を、本名・ペンネーム・サイン・匿名など具体的に指定する権利 −−−
 これは作者が作者名をどのように表記して欲しいか選べる権利。

・作者がその作品の現況について知る権利 −−−
 これは作品がどこにどのようにして保管または展示されているかを知る権利で、作者の生存中は作者が、以後永遠にその遺族が知る権利を有する。

・作品のいかなる変形、変更、部分使用を禁じ、配慮ある対処を求める権利 −−−
 この権利はスペインの裁判で多々争われるが、作品の所有者であっても作者に無断で写真を撮って作品を変形したり、部分的に印刷物やホームページなどに使ってはいけないということ。

・第三者が得た権利を尊重しながら必要と思われる作品の手直しをする権利 −−−
 これは作者がアーティストとして進化した場合、その作品が文化財産として保護されている場合を除いて所有者の許可の元、手直しができる権利。

・作者が知的または道徳的信条を変え、ある作品を市場から抹殺したい場合、所有者に事前に賠償することにより作品を市場から抹殺できる権利 −−−
 別名「後悔の権利」。作者に正当且つ妥当な目的があればこの作品が展示されていることでプロの作家生命に影響を及ぼすという判断で、展示しないようすることができる権利。 
 例えば、その作品を作成した頃は当たり前でも、それが現在の道徳ではいけないことと判断されるような題材になった場合。

・その作品が作者にとって唯一のまたは珍しい作風の作品であり、それが第三者の所有にある場合、作者がそれを見る権利 −−−
 これは作者が希望すれば所有者の都合に合わせて決められた場所や方法で作品を見ることができるという権利。 しかしここで重要なのは作者が所有者にアンソロジーの展覧会を行うためにその作品の貸し出しを依頼したり、その展覧会のカタログにその作品を含めることができること。

道徳権利の損害に対して、スペインの裁判では多額の賠償金の支払いが命じられることがあり、 また、作品の形状が油絵なのか、デジタル作品またはマルチメディア作品なのかによっても該当する権利は異なるそうだ。


長い歴史を持つ、芸術先進国のスペインの権利に対する意識・哲学が垣間見れる比較事例であろうと思う。

かつて、日本の有名な企業のオーナーが、棺おけに自分の好きな絵を一緒に入れてくれと言った話、 また、かつて、知り合いが 絵を買って所有していたら、なんでもできるんでしょう?(つまり、煮ても焼いても的に)とコメントしたことを思い出す。

アフガニスタン、カンボジア、はたまた、イースター島などでも随分と破壊/逸失されたと聞いている。
失われた作品は ハイテク修復技術を駆使しても、2度と戻ってきません。 芸術作品は人類の遺産、 拠って、後世に引き継がれていくことを願っています。

参考写真:村上隆による「NIRVANA」